日向坂46が見せた東京ドームへと繋がるプロセス 新たな物語が幕を開けた『ひなくり2019』を振り返る

日向坂46『ひなくり2019』を振り返る

 そしてこの会場全体を引き締めるのが最後方に設えられ、ライブ中盤の主役となる神殿のステージである。この舞台ではまず「こんなに好きになっちゃっていいの?」が披露される。最新シングル表題曲として日向坂46を一歩先のフェーズへ進めた同作品の仕上がりは、それまでの展開とやや位相を変えたライブ中盤の雰囲気とも好相性を見せる。さらに、衣装に組み込まれたLEDライトが星屑のように光る「川は流れる」、そして東村芽依、金村美玖、河田陽菜、丹生明里がスノードームの内側でパフォーマンスする「Cage」といった楽曲が続く。これらのブロックは、本来陽性のコンセプトを体現することに長けた日向坂46のセットリストの中にも静謐な瞬間を作り出し、公演全体の奥行きにとってきわめて重要なパートとなった。

 会場最後方の神殿でそうした時間を作り上げたからこそ、メインステージに戻っての「ドレミソラシド」「キツネ」「NO WAR in the future」といった、このグループのパワーを示す最終盤パートも際立つ。そして「JOYFUL LOVE」で再度トロッコを用い、広い客席エリアを本編ラストまで使い切って物語を締めくくった。

 そしてまた、アンコールにはまた別の物語が描かれる。18日公演のアンコールで、現在の活動メンバー全員による「誰よりも高く跳べ!」、さらに「期待していない自分」がパフォーマンスされたのちに発表されたのは、2020年春の全国アリーナツアー開催、そして12月の『ひなくり2020』が東京ドームで行なわれることだった。先行する坂道2グループもすでに到達した東京ドーム公演が、早くも次年のクライマックスとして提示されたことで、このアンコールの時間はけやき坂46名義の時代から現在、そしてさらなる高みを手にする未来の日向坂46像までを見通す時間になった。そのあゆみを慈しむように、ライブは「約束の卵」ですべての曲目を終える。

 2019年のクリスマスから2020年のクリスマスまでをつなぐ日向坂46の道程は、東京ドームという大目標を成立させるためのプロセスになる。グループの歴史としても大きな節目となるポイントがすでに設定されただけに、1年後にこのグループがどのような成熟を体現しているのか、いっそう楽しみになる。

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■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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