北野創が選ぶ、2019年アニソン/声優音楽年間ベスト10 紅白出場LiSAやAqoursメンバーソロ活動、ヒプマイなどの話題作も

『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』

 従来の「アニソン/声優ソングらしさ」から脱却することでブレイクスルーした、近年の最たる成功例が、男性声優によるキャラクターラップソングプロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』。現実のヒップホップカルチャーに対するリスペクトの念を忘れることなく、プロの声優たちがキャラクターソングとしてのラップを追求し、一流のエンターテイメントとして昇華した本コンテンツは、今までの声優ソングにありそうでなかったもの(もちろん声優によるラップソングは昔から存在していましたが、それらはあくまで歌唱表現のひとつとしてラップを選択したもの、もしくはパロディといったケースがほとんど)。『ヒプマイ』には芯が通っているからこそ、Zeebra(麻天狼「The Champion」)やCreepy Nuts(どついたれ本舗「あゝオオサカdreamin'night」)といった、実際に日本のヒップホップシーンで活躍するアーティストが本気で楽曲提供に取り組むのでしょう。『ヒプマイ』に関しては、ドラマトラックを含むトータルで聴いてこその面白さもあるのですが、ここでは入門にも最適なアルバム作品『Enter the Hypnosis Microphone』を挙げました。

『キャロル&チューズデイ』

 同じく作品全体で評価したいのが、TVアニメ『キャロル&チューズデイ』を彩った楽曲たち。無類の音楽好きとしても知られる渡辺信一郎(『カウボーイビバップ』、『サムライチャンプルー』ほか)総監督が、初めて音楽そのものを題材に選んで一から作り上げた本作。ベニー・シングス、フライング・ロータス、スティーヴ・アオキ、リド、デンゼル・カリー、Cornelius、Nulbarich、cero、D.A.N.など、国内外の錚々たるアーティストが楽曲を手がけ、すべて英語詞による世界基準のポップソングを劇中歌として揃えました。これはもちろん日本のアニメ人気が高まっている海外市場を見据えた戦略的な意図もあると思いますが、アニメ音楽の新たな可能性を探るという意味においても、非常に有意義かつチャレンジングな試み。この12月にYouTubeで配信開始した虚淵玄原案のオリジナルアニメ『OBSOLETE』でも、Skrillexとニック・ルース(Noisia)がOPテーマ「obsolete」を制作するなどしており、海外展開を視野に入れた音楽制作は、今後のアニメ音楽において重要なファクターになっていくのかもしれません。

RealSound_Best2019@Hajime Kitano

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

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