山下達郎の楽曲は、なぜドラマとの相性がいいのか 『グランメゾン東京』から考える“主題歌の醍醐味”

 毎週毎週聴くたびに、その楽曲が喚起するイメージが変わっていく──アニメ映画『未来のミライ』のために書き下ろした両A面シングル『ミライのテーマ/うたのきしゃ』以来約1年ぶり、通算52作目となる山下達郎のニューシングル曲「RECIPE(レシピ)」は、まさしくそんな一曲であるように思う。伸びやかで透明感のある歌声とメロディの良さを前面に押し出した、どこかほっこりとした温かさを持った“大人のラブソング”に仕上げられたこの曲は、現在放送中のドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)のために書き下ろされた一曲だ。

山下達郎『RECIPE (レシピ)』

 木村拓哉主演のドラマの最後に山下達郎の曲が流れるのは、2003年のドラマ『GOOD LUCK!!』(TBS系)のエンディングテーマに起用された「RIDE ON TIME」以来、実に16年ぶり。今回、山下達郎に主題歌のオファーを出した『グランメゾン東京』のプロデューサー・ 伊與田英徳は、できあがった曲について「私の想像力を掻き立ててくれて、味覚を刺激しながら、温かい気持ちにもなります。タイトル「RECIPE(レシピ)」にも表されているように、人は人生の中で“選択肢”に出会ったとき、色々な“調理法”を選んでいく。料理の世界を描く本ドラマの世界観に最高にマッチして、皆様にも早く聞いていただきたい気持ちでいっぱいです」とコメントしている。

『グランメゾン東京』12/15(日) #9 店に仕組まれた罠…運命の選択が迫る!!【TBS】

 木村拓哉演じる型破りなフランス料理のシェフ尾花夏樹が、世界最高の三つ星レストランを目指して仲間たちと奮闘する様を描いた『グランメゾン東京』は、「手長エビのエチュベ」「ナスのプレッセ」など各話のサブタイトルが示しているように、毎回毎回、端正なフランス料理が登場するなど、視聴者の食への興味を存分に刺激するドラマでもある。そんなドラマの内容に合わせて、表題はもちろん〈やすらぎのスープに/今日の日を溶かして〉〈さみしさを炙って/とまどいを煮込めば/僕と君の想い やがて/ひとつに薫り出す〉といったフレーズなど、さまざまな感情を料理や食べ物になぞらえた歌詞が特徴的な「RECIPE(レシピ)」。自らの再起をかけた尾花と仲間たちの奮闘やそのライバルとの戦いなど、毎回毎回さまざまな騒動が巻き起こるこのドラマの最後にカットインしてくるこの曲は、俗に言う“一服の清涼剤”ではないけれど、視聴者の気持ちをスッと軽やかにしてくれるような抜群の効果を持っている。かつて「RIDE ON TIME」という爽快な曲が、“航空会社”というある種の緊張感を持った『GOOD LUCK!!』の物語の最後を解きほぐしたように、「RECIPE(レシピ)」という曲は、“料理人”というプロフェッショナルを描いた本作が醸し出す緊張感を、そっと解きほぐしてくれるような役割を担っているのだ。

山下達郎「RECIPE (レシピ )」 Edit Version

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる