大原櫻子、中川晃教、ソニン……『FNS歌謡祭』出演、ミュージカルで活躍するアーティストの歌唱力
中川晃教はといえば、今や押しも押されぬミュージカル界のトップスター。シンガーソングライターとしてデビュー後、翌年には『モーツァルト!』で「第57回文化庁芸術祭」演劇部門新人賞などを総なめ。2017年には『ジャージー・ボーイズ』で「第24回読売演劇大賞」最優秀男優賞を受賞し、人気、実力とも頂点を極めるまでに。伸びやかで透明感のあるハイトーンボイスを持ち味とし、舞台上で放つ存在感には定評がある。ミュージカルで培った表現力は、自身の単独ライブでも遺憾なく発揮。歌の上手さはもちろんだが、発声の美しさ、声量の多さでは、並みのシンガーではもはや太刀打ちできないだろう。ストイックに歌に向き合い続けてきたからこそ身につけることができた歌唱スタイルと言える。
舞台女優、特にミュージカルで花開いた女優といえば、ソニンも忘れてはならない。30代前後の世代にはアイドルとしてのかわいらしいイメージが強いかもしれないが、2000年代後半から本格的に舞台へ進出。芸能活動を休止して1年間ニューヨークに留学後は、『RENT』『トロイラスとクレシダ』『ダンス・オブ・ヴァンパイア』と立て続けに話題作に出演。「第41回 菊田一夫演劇賞」演劇賞を受賞するなど、華々しい活躍を見せている。美しい高音を武器にする女優陣が多いなか、彼女の魅力といえばアルト寄りで迫力のある歌声。破滅的な悲劇のヒロインを演じさせたら右に出る者はいないだろう。苦労を重ね掴んだ道で、正々堂々と勝負するソニンには、今後さらなる飛躍が待っているに違いない。
『FNS歌謡祭』ではもはや恒例になったミュージカル企画。その意図は、劇場に行くのはハードルが高いと感じている人にこそミュージカルの素晴らしさを伝えたいというのが一番だろう。それゆえ製作スタッフはもちろん役者たちにとっても、いつも以上に気合の入ったステージになるはずだ。地上波ではなかなか見ることのできない、豪華なパフォーマンスに期待したい。
■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。