yonawo、okkaaa、Mom……“Z世代”新星アーティストの共通点を近作から探る

Mom「ハッピーニュースペーパー」

 okkaaaと同様に、自身でアートワークやMV制作を手がけるアーティスト、Momにも注目したい。Momもokkaaa同様、11月6日に「マスク」、11月27日に「ハッピーニュースペーパー」と立て続けに新曲をリリースした。 

 「マスク」はエネルギッシュでもの悲しげだが温かく、曲のタイトルの通り、曲調からも二面性を感じ取ることができる。ダブステップ、ソウル、ヒップホップなど、様々な要素を感じさせるそのサウンドは、まさにMomが提唱する「クラフト・ヒップホップ」そのものだ。本人のTwitterによれば、MVでは“空虚さとエナジー”を表しているという。King Gnu・井口理がTwitterや自身のラジオ番組でシェアするなど、話題の兆しが見えるMom飛躍のきっかけになる一曲だ。 

 続く「ハッピーニュースペーパー」は「マスク」の心の内側のえぐるような不気味さから一転、ポップなサウンドの曲。サビの歌詞でも〈おめでとう人類 よくやったぞ人類〉と一見まるで人間への賛美歌のように思えるが、内実は、ポストトゥルース時代の社会への皮肉的な内容である。ポップなサウンドに乗せて社会への皮肉を歌うことによりさらに皮肉さを増す「ハッピーニュースペーパー」も、「マスク」と連綿と続くダークな曲といえよう。

Mom / マスク
Mom / ハッピーニュースペーパー

 「マスク」、「ハッピーニュースペーパー」は曲の内容だけでなく、アートワークもMomの描いたイラストで統一されており、繋がりを持った2作品となっている。Momも「ハッピーニュースペーパー」についてTwitterで「享楽的な歌ではないし、前回の『マスク』と軸足は全く同じ。手触りが違うだけ。これからどんどん点が線になってゆくはず。このアートフォーム、まだまだ続く。skrt skrt」とこの2作品の繋がりが他の作品とともにさらに紡がれていくことを示唆しており、次作が統一されたテーマ性を持った作品になることも期待できるだろう。

 彼ら“Z世代”は、動画投稿サイトや音楽ストリーミングサービスの登場によって個人で自身の作品を発信することが容易になった。音楽やその他アートワークの制作などもDIYが可能な世代だ。また、音楽ストリーミングサービスが普及したことで時代も地域も超えた音楽によりアクセスしやすくなった。それにより幅広い音楽を取り込み、自身の音楽に昇華することが可能になった世代でもある。 

 そして、彼らが音楽制作を始めた2010年代はビートミュージックの台頭や、ヴェイパーウェイブが生まれ、退廃していった音楽的歴史を持つ。ヴェイパーウェイブから派生したローファイヒップホップはネットを中心に盛り上がりをみせた。彼らは、いずれもローファイヒップホップ等、ビートミュージックやヒップホップ、R&Bの血脈を継ぐ要素を感じさせる。2010年代最後の年に注目される彼らのようなZ世代のアーティストが、2020年代という新たなディケイドの音楽シーンを形成していくのかもしれない。

(文=及川百合香)

※記事掲載時、一部表記に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。

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