小沢健二「彗星」を次世代のリスナーはどう聴いた? 未来の少年少女たちが受け取ったエール

 また、この曲で重要なのがBメロだ。「嘘が覆う2000年代」を抜けた2番のサビで“今”を歌うと、〈真っ暗闇を撃つ 太陽みたいに/とても冴えた気持ち グラス高くかかげ 思いっきり祝いたいよね〉と晴れやかなBメロへ。過去を歌っていたAメロはもう登場しない。このBメロは「過去~現在」を歌う前半部分から「現在~未来」を歌う後半部分への橋渡しとなるパートなのだ。

 そして一気に転調し奏でられるGメジャーの晴れやかな響きが印象的なCメロに。クライマックスとなる2回目のCメロでは、小沢と子どもたちが〈あふれる愛がやってくる〉〈その謎について考えてる〉〈高まる波 近づいてる〉と交互に歌い、まるで彼が「未来」に希望を託しているかのような場面となっている。そして再びストリングスの間奏が流れ、どこまでも続く未来に思いを馳せるように曲は幕を閉じる。

 子どもたちのコーラスのほか、1回目のAメロでは、彼が活動休止する前の時代に生まれた現在の20代についてもふれられている。これから先の未来を担う子どもたちと、小沢たちが築いた時代を受け継いだ次世代の若者たち。同曲には、そんな少年少女たちへのエールが込められているように思う。また、過去を振り返りながら“今”の暮らしの素晴らしさについて歌われるところからは、現在までを生きてきた人々への労いのようにも感じる。この曲を聴きながら、過去に、現在に、未来に思いを馳せて「グラスを高くかかげ  思いっきり祝う」機会があっても良いはずだと、私は思う。

■堀田 蕗敏(Hotta Robin)
1994年生まれ。プロのインハウスデザイナーとしてプロダクトデザインを行う傍ら、楽曲分析、自作のピアノ楽曲の演奏・公開を行う。
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