THE PINBALLS 古川貴之の人生に影響を与えた4作品とは? ルーツから浮かぶ根底にある想い
THE PINBALLSが、11月6日に「魔法」をテーマにした2ndシングル『WIZARD』をリリースした。
今回は、ボーカルの古川貴之の人生に影響を与えた作品について語ってもらうインタビューを行った。古川が選んだのは、The Beatles『The Beatles』、サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』、矢沢永吉『成りあがり』、テレビアニメ『ロミオの青い空』。この4作品を通して、彼がどういう人生を歩んできたのか、楽曲制作への影響など、”古川貴之”という人間を様々な角度から掘り下げる。(編集部)
これが良いと言える自分になりたかった
ーー今日のインタビューは古川くんの人生に大きな影響を与えてきた音楽や書籍、アニメを通じて、古川貴之という人間がどういう人生を歩んできたのかが見える内容にできたらと思います。
今回は『ホワイトアルバム』の愛称で知られるThe Beatles(以下、ビートルズ)の『The Beatles』、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』、矢沢永吉さんの自伝『成りあがり』、そしてテレビアニメ『ロミオの青い空』という4作品を準備してもらいました。まずは、音楽の話題からにしましょう。
古川貴之(以下、古川):『ホワイトアルバム』は僕、一番好きなアルバムで。たぶん中学生くらいのときに出会ったのかな。当時仲の良かった先輩がすごく音楽が詳しい人で、「お前が聴いているのはダサい!」みたいなノリでいろんな音楽を聴けと勧めてきたんです。当時はすでに音楽の世界で生きていきたいという気持ちを持っていたので「もっといろんな音楽を知りたい」という気持ちが強くてビートルズもその先輩とディスカッションしていく中で触れていて。中でも『ホワイトアルバム』は「このぐらいは知っておかなくちゃいけない」みたいな基礎として、周りから絶賛されていたんですよ。だから、最初は自分から良いと思ったわけではなくて、周りの人たちが素晴らしいと言った言葉から「この作品を理解したい、わかるようになりたい」と思ったんです。これが良いと言える自分になりたいなって。
ーーなるほど。そういうことってありますよね。
古川:はい。なので、本当に良いなと思えるようになった、その感動って今も覚えているんですよね。自分の意思で「これを好きだと感じられるようになりたい」と思っていたら、向こうからも手を差し伸べるように握手してきて、「あ、俺やっぱりこの4人(=ビートルズ)の感性とフィットするんだ」と。やっと両思いになれたみたいな、そのうれしさをすごく覚えているんですよ。
ーーでは、相当聴き込んだんでしょうか?
古川:ええ、良いと思えるまで何十回と聴きました。しかも、その時期はそんなに長いともつらいとも感じなかったんじゃないかな。いいなと感じられるようになると、どの曲もカッコよく感じられて。「Yer Blues」もいいし「Good Night」もいいんだけど、自分の中では「Happiness is a Warm Gun」が一番すごいと思いました。ガキの頃ってスピードの速い曲とか声が高い曲とかを激しく感じがちなんですけど、「Happiness is a Warm Gun」はテンポがゆっくりめなのに何よりも激しいぞと強く感じて。
しかも、全体的には遊び曲も多いですよね。たぶん、そのテキトーな感じもすごく好きだったのかも(笑)。しかも、この頃になってくると4人の仲も悪いですし。でも、そういうちょっと危うい雰囲気や雑な感じから生っぽさとか人間っぽい身近な印象も受けますし、本当に息をするように音楽を作っていたんでしょうね。
ーー文字通り“記録(=Record)”としてのアルバムというか。
古川:そう思います。ちょっとプライベートを覗き見たようなスリル感もありますし。あとは、視覚的にも白いジャケットがすごく好きでした。今日はレコードを持ってきたんですけど、初めて聴いた当時はパカパカってケースが両側に開くCDで、それが単純にモノとしてすごくカッコよく思えたんですよね。
それに、この頃のジョン・レノンは見た目もカッコいい。昔の若々しい姿もいいですけど、みんなだんだんと狂っていって、変な風貌になって(笑)。僕はポール・マッカートニー派でもあるんですけど、一人ひとりの人生を調べていくとジョンの人生が自分と重なるところがあるんですよ。重なるといってもジョンのほうがずっと大変ですけど、複雑な生い立ちに気持ちが惹かれるんです。そこから、「この人を理解したい」という気持ちが強くなったのかな。「この人と同じ気持ちになりたい、この人の考えていることを理解したい」なと。好きと言える自分になりたい、みたいな。
ーーもしかしたら、「『ホワイトアルバム』を理解したい」というよりも、「『ホワイトアルバム』の頃のジョンを理解したい」という気持ちが強かった?
古川:うん、そうかもしれないですね。