春野、歩く人、蜂屋ななし……ボカロPによるインスト&英語詞が印象的な楽曲
蜂屋ななし
蜂屋ななしは、和とロックを掛け合わせてみては、クラシック、ジャズを取り入れるなど、曲幅の広いボカロP。「Nightmare」は、恐怖を与えるサウンドメイクを施したインストルメントだ。不協和音の後から重なる正常なピアノの音が、一瞬、安心をもたらすが、その音も徐々に不協和音へと変わるにつれ、最終的には不穏な終わりを迎える結末。随所に取り込んだルナティックなサンプル音も、緊張をはらんだ空気にうまく結びついている。
歌い手・宮下遊のアルバム『青に歩く』でもカバーされている楽曲「Fading ghost」の初音ミク歌唱版。ピアノの音色を重ねて構成しているサウンドが、サビに入ると、その音を残しつつも、バンドサウンド色の強い、派手な音へと変わったり、大サビ前の間奏部分では、ダブステップ要素が加わったりと、センチメンタルな歌詞であるにも関わらず、どこか悲劇的な印象を受ける。英詞から日本語詞の切り替わりのほか、曲調自体が大きく表情を変える1曲だ。
インストルメントや英詞の楽曲は、広くリスナーに響く、ジャンルの垣根を超えた作品と言える。このような、音の世界に十分に浸ることのできる音楽は、この先も、新たに誕生するだろう。そして、ありふれた日常を彩ってくれるはずだ。
■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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