次世代型ギャル 安斉かれん、謎多きソロシンガーはJ-POPを切り開くニューアイコンとなるか?
彼女の生々しい感性は、新曲の「人生は戦場だ」においても健在だ。〈自分らしくとは何? 模範解答はない〉は、“何者かにならないといけない”という呪縛にかかっている若者の感覚を表しているし、〈夢見がちの僕は 馬鹿にされるのも知っていた〉は実現可能な夢を持つことがよしとされている現代の風潮を歌っているようにも聞こえる。現実をしっかりと見つめる目を持ち言語化する感性こそ、安斉かれんの作詞の強みではないだろうか。
また、「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」「誰かの来世の夢でもいい」「人生は戦場だ」は3部作になっており、MVのストーリーも繋がる構成だ。舞台は未来の渋谷、高度なARが実現した近未来の『Immersive Society 3.0』である。荒廃と発展が共存しているサイバーパンクな映像は、世界的なテクノロジー企業とタッグを組み作り出されたもの。空想世界でバーチャルな存在と共に生きる、安斉かれんの姿が無機質に描かれている。以前であればフィクションの世界として捉えていたシチュエーションも、ここまでリアルに再現されてしまうと近い未来を見ているよう。ストーリーの前後関係が明記されておらず、作品を行ったり来たりすることで物語の考察が深まる作りになっている。映像と歌詞のリンクや、登場人物をキーにしてMVを読みといていくのも楽しそうだ。
ポスギャルでありながら、生々しい感覚を持ちJ-POPを歌う安斉かれん。多くの謎を抱えつつも、ニューアイコンの片鱗を見せている彼女がどんな飛躍を見せてくれるのか。今後も目が離せない。
■坂井彩花
ライター/キュレーター。1991年生まれ。ライブハウス、楽器屋販売員を経験の後、2017年にフリーランスとして独立。Rolling Stone Japan Web、EMTGマガジン、ferrerなどで執筆。Twitter