次世代型ギャル 安斉かれん、謎多きソロシンガーはJ-POPを切り開くニューアイコンとなるか?
2010年代というのは、いろいろな邦楽が再定義された時代だったかのように思う。ceroやSuchmos(「STAY TUNE」ヒットの意として)が打ち出したシティポップ、あいみょんが再熱させたフォークソング。そして、King GnuやOfficial髭男dismが更新している、J-POP。2020年代のメインストリームを作るであろう人物たちが、2010年代後半から続々と姿を現し始めた。
そんな中、「登場はまだか」と切望されているポジションがひとつある。それは“時代のアイコンになりうるソロシンガー”だ。歌に共感でき、生きざまに感化され、ファッションだって真似したくなってしまう。浜崎あゆみや安室奈美恵に続く存在を、時代は渇望しているのではないだろうか。では、誰が“時代のアイコン”になりうるのか。その可能性のひとつとして、次世代型ギャルである安斉かれんをぜひ推したい。
安斉かれんは、神奈川県藤沢市出身の20歳。ポストミレニアル世代(1990年代後半から2010年の間に生まれた世代、またの名を“Z世代”)の次世代型ギャル(=ポスギャル)のひとりだ。その出で立ちは、金髪にカラコン、つけまつげ、古着と渋谷を闊歩する強めなギャルとなんら変わりがない。だが、出回っているビジュアルが全て真顔で、公開されているMVに限らず、インタビューの間に挟まれている写真やInstagramの投稿さえも全部真顔。整った顔立ちに抜群のスタイル、画一化された表情は、バーチャルインフルエンサーのimmaや葵プリズムを彷彿させ、「安斉かれんは実在しないのではないか」という憶測がネットで飛び交ったほどだ。
アーティストとしては、令和元日の5月1日に「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」でデビュー。ポスギャルな見た目から推測するにEDMチューンなどを歌いこなしていてもおかしくないが、彼女が歌うのは90年代リバイバルを感じさせるJ-POPだ。キラキラしたシンセにドラマティックなメロディラインは、歌姫が時代を席巻していた頃のヒットチャートを想起させる。ミレニアル世代以前には懐かしく、ポストミレニアル世代以降には新しい。浜崎あゆみや安室奈美恵が開拓したジャンルに、リバイバル世代としてつっこんでいく腹の座ったニューアイコンこそ安斉かれんなのだ。
大手の新人アーティストだと“最強の布陣でメジャーデビュー”というのが定説のようになっているが、彼女はデビュー曲から自分で作詞を手掛けている。その世界観は、ポストミレニアル世代の思考を反映した極めてリアルなものだ。「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」においては、空気を読むことと自分らしく生きることの狭間で揺れ動く繊細な感情が描かれている。〈人の評価に怯え 自分を隠して、やって来たけど〉というリリックは本音を飲みこんだ経験がある人にはチクリと刺さるものだし、〈何を言われても 何が起こっても 周りに 合わせて 生きたくない〉という歌詞は“自分らしく生きていきたい”という強い思いが反映されているように受け取れる。