伊藤美来、西田望見……キャラクターソング、声優ユニットの活動経て生まれたソロ作をピックアップ
西田望見『女の子はDejlig(ダイリー)』
キャクラターソングが大ヒットしたということを鑑みたとき、近年でいえば『マクロスΔ』発の戦術音楽ユニット・ワルキューレを外すことはできないだろう。そのメンバーの一人であった西田望見は、今年5月に開催された『フライングドッグ10周年記念LIVE-犬フェス-』でソロデビューを発表した。ワルキューレのメンバーはそれぞれがすでにソロとして活動中、そんななかで発売された西田のデビューミニアルバム『女の子はDejlig(ダイリー)』(7月24日発売)は、ファンにとっても待望であったことだろう。
「女の子が現実と夢を行き来する」というコンセプトのもと制作された今作では、各楽曲の世界観を伝えるための4つの語り部分(リーディング)が挟まれている。これが良いクッションとなって、現実(リーディング部分)と夢(楽曲部分)が聴き手にもわかるようになっているのが興味深い。それによってエレクトロポップスな楽曲「ロンリーロンリーシンギュラリティ」(TeddyLoidとの再タッグ作)、元Shiggy Jr.・原田茂幸による「フルスロットルで行こうぜ!」などといった異なる音楽性をもつ楽曲をよりスムースに聴かせている。
今作の収録曲で作詞を担当し、リーディング部分のストーリーまで監修しているのは、アンジュルムやJuice=Juiceなどの作詞を担当してきた児玉雨子だ。西田と対話を重ね、今作のコアな部分にまで携わっている。女性ファンの多いアンジュルムを支える彼女が、声優とアイドルという壁を超え、今作に繋がっているのは面白い。
バラエティに富んだ楽曲群の一方で、リーディング部分では現実生活に悩み途方に暮れた人物像が幾度となく描かれている。西田と児玉が今作において「音楽は夢の部分にあたる」と語っているように、夢と現実を幾度と行き交いもう一度現実と立ち向かうという希望へと導くような作品になっている。
それは大きくいってしまえば、“音楽は人を救う”という本質的な命題に触れた作品でもある。もしかしたら大げさだと思う人もいるかもしれない。しかし、こうした前向きなメッセージは、アニソンの元来の資質が活かされた声優の音楽だからこそ自然に響かせることができるのだろう。アニソンや声優音楽が持っているポップスとしての強度を、遺憾なく発揮した作品ではないだろうか。
■草野虹
福島、いわき、ロックの育ち。『Belong Media』『MEETIA』や音楽ブログなど、様々な音楽サイトに書き手/投稿者として参加、現在はインディーミュージックサイトのindiegrabにインタビュアーとして参画中。
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