Suchmos、念願の“横浜スタジアムワンマン”で見せたバンドの現在地

YONCE(撮影:Shun_Komiyama)

 9月8日、Suchmosの6人がデビュー当時から目標のひとつとして公言してきた横浜スタジアムでのワンマンライブ『Suchmos THE LIVE』を実現した。関東地方には台風が接近しており、当日朝までライブの開催が危ぶまれていたが、予定通り行われることが発表された際には本人たちの強い意思と覚悟も伝わってきた。スタジアムでのライブという、Suchmosの夢を共有してきたファンもその音が鳴り響くまで気がかりだったにちがいないが、ステージ6人が登場し挨拶代わりとなるセッションを繰り広げると、会場を埋め尽くした3万人の観客の拍手喝采がスタジアムの底から大きく湧き上がるように轟いた。アディダスのジャージに破れたジーンズというアイコニックなスタイルのYONCEが「よく来たね」と声をかけると、歓喜の声は一段と大きくなる。何にも変えられない、格別の瞬間だっただろう。

 「YMM」からスタートしたライブはしかし、祝祭感に浮き足立つことなくSuchmosサウンドの醍醐味と6人で紡いできた歴史をパノラマティックに魅せるステージとなった。全作品からまんべんなく選曲されたセットリストは、今年春から行なってきたアリーナツアーをさらにブラッシュアップし、アルバム『THE ANYMAL』での渋みのあるブルースやサイケ、プログレッシブロックの流れを汲んだ最新モードへとリアレンジが施された曲が並んだ。「WIPER」など自由度の高い空間を持った曲でさっそく遊びのあるインプロビゼーションを聴かせ、都会的でグルーヴィな「DUMBO」で躍らせた前半では、YONCEが「懐かしい曲やります」と告げスタートした「Miree」から「STAY TUNE」という流れで盛り上がった。ただ、この2曲はSuchmosの名を広げた曲でもあるが、どちらかといえばその次に控える、滑らかなドライヴからブルージーな叙事詩を紡ぐ「In The Zoo」へと、観客をバンドの深みへ引き入れる役割を果たしていた印象だ。TAIKING(Gt)のギターアルペジオに、アコギを弾き語るYONCEが重なっていき、徐々にOK(Dr)によるビート、HSU(Ba)のふくよかでメロディアスなベース、幻想的な60’sポップス的なTAIHEI(Key)の鍵盤、そしてKCEEのDJが絡み合っていく。内省的で、互いに静かに語りかけ合うような、感覚的には半径の小さなアンサンブルだが、これがスタジアムというスケールを支配していくのがスリリングだ。続く新曲「藍情」は、メンバーのメロウなハーモニーからプログレッシブに展開する曲で、充実した現在の6人のタイム感があればこその情熱的な温度と渋みも醸す。スペイシーな音響とやわらかなギターの咆哮、コーラスがシンフォニックな「OVERSTAND」へというこの3曲の流れは圧巻だった。

HSU(撮影:Shun_Komiyama)

 中盤では改めてメンバーそれぞれ、このライブを開催できたこと、それを信じてきてくれた観客へと感謝を述べ、OKがメンバー紹介をした。6月に手術をしカムバックしたHSUは、「苦難から帰ってきた男」と紹介され大きな拍手が会場を包む。そしてそのHSUは「この6人でおかしな人生を歩んでます。ガキの頃から一緒の連中が、こんなところに立っているなんて信じられないよ」と笑顔を見せた。またYONCEは、「Suchmosというバンドをやっていなかったら、俺ってこんなことで笑うんだとか幸せを感じるんだとか、そういうことに気づけずにいたと思う」と言い、「でも6人で初めてステージに立ったときと、あまり変わっていない。いろんなものを見つけていく旅を、これからもしていきたい」と、目の前の3万人に宣言した。こうしたMCの後に演奏された「MINT」は、気のおけない仲間との関係性や、人生とロックミュージックとの蜜月が際立って聞こえて、グッときた。

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