シドが全曲新録の『承認欲求』と17年目で目指す先「“引き算できるような音楽”がキーワード」

シドが語る、『承認欲求』と17年目で目指す先

ローボイスをいかにしっかり届けるかが課題だった(マオ)

ーー作詞という観点でお聞きしたいのですが、これまでの活動においてマオさんの中で大きなターニングポイントになったのは、どういうタイミングでしたか?

マオ:ターニングポイントはアルバムごと、と言ってしまえばそれまでなんですけども、大きく言えばメジャーデビューしてタイアップが付いたときかな。タイアップ曲を作るときはテーマの縛りがあるので、そこについて書けるかどうかという力量が試されますし、そこで一度苦しんだことがありました。でも、そこを突き抜けたあとには、逆にタイアップ曲のほうが書きやすくなったこともありましたよ。

ーーでは、今作のように一切縛りのない中で作詞をしていくのは、逆に新鮮だったのかなと思いますが、今回の作詞では曲ごとに一つひとつテーマを見つけていったんですか? それとも曲を聴いて歌詞が導かれたのでしょうか?

マオ:曲によっていろんなパターンがありますね。先にテーマを決めて臨むこともありますし。でも、昔よりもテーマを決めてから書くことが増えたかもしれないですね。どっちがやりやすい、やりにくいで作詞はしていないですけど、一番いい状態に持っていくにはどうすればいいかというところで、結果的に今はこのやり方だったということなのかな。

ーー歌についてはどうでしょう。今回もいろんなタイプの楽曲が揃いましたが、曲によって表現の仕方や歌詞によって歌い方が変わってくるのかなと思いますが?

マオ:今回もいろんなトライがありましたけど、最近はローボイスにこだわりが出てきたので、そのへんをいかにしっかりレコーディングして届けるか、そのローの感じをライブでどう再現するかという難しさも考えながら注力しました。そこは課題でしたね。

ーーあと、今回はアートワークもすごく新鮮でした。アーティスト写真もアルバムジャケットの色使いに紐づいたものになっていますよね。このアートワークはどういったところから?

ゆうや:僕らとデザイナーさんの意見の出し合いで、ここに着地した感じですね。特にジャケットに関しては、生のままだと女性の裸感がすごく強く出るので、そこをアート側にうまく持っていくことで、こういう方向性に向かっていったんだと思います。

ーーポップな色合いのアートワークは『承認欲求』という感情的なタイトルからはギャップを受けますし、ではアルバムが感情的なサウンドなのかというと、すごく丁寧に音作りが施されている。先ほどのマオさんのローボイスの話もありますけど、全体的にも落ち着いた作風なので、より強いギャップを感じるんです。

マオ:きっとファンの人たちもそのイメージで来るんだろうなと思うと、サプライズ感を用意したくて。なので、そう感じてもらえたなら、こちらの思惑どおりですね(笑)。

ツアーで「17年目のシド」を表現できたら(ゆうや)

ーーシドは昨年、結成15周年を迎えました。今のご時世、バンドを長く15年も続けていくことは非常に大変なことだと思うんですが、皆さんにとっての15年ってどういうものなんでしょう?

明希:やっぱり「重み」じゃないですかね。

ゆうや:単純にすごいなとは思いますよね。周りの皆さんからも「すごいね」と言われますし、自慢できることなんじゃないかなと感じています。ただ、いろいろあったし、振り返ると早かったですけど。

ーー15年って、子どもが生まれて中学を卒業するまでの期間ですものね。大人に差し掛かるタイミングというか。

ゆうや:確かにそうですね。「シド、高校1年生」って感じですね、きっと(笑)。

ーー10周年のときとの違いって感じましたか?

ゆうや:ありました。10周年まではバーっと駆け抜けてきて、10周年と15周年の間でそれこそ各々が活動したりという期間もあったので、10周年のときよりも感じること、考えることが多くなりましたし。それが大きな違いでした。

ーーゆうやさんがおっしゃった「シド、高校1年生」じゃないですけども、このアルバムはロックバンドとしての成熟感が強く出た内容だと思います。引き算の話もそうですが、15年、16年と活動を続けて積み重ねてきた経験がしっかり形となって表れたのがこのアルバムなのかなと。「ロックバンドが大人になるって、こういうことなのかな」と聴きながら感じました。

ゆうや:なるほど。引き算というのはこの作品を作るちょっと前ぐらいのツアーでも、普通に飛び交っていたキーワードだったんですよ。それこそ成熟というか、今の俺らだからこそできる自力というのが付いたと思うので、バンドだけの音でなんとかやるというか。それをこのタイミングにみんなでうまく擦り合わせて、歩幅を合わせることでたどり着いた大人なポップのようなものを作ることができたのは、バンドにとってもよかったなと思っています。

ーーと同時に、シドの音楽ってすごくドメスティックなものだとも感じていて。日本のロックというものがひとつの完成を見たところから一歩踏み出した、新しい形の“普遍性の強いロック”だなと思うんです。90年代より以前って海外のロックにどう近づくかという戦いがあったと思いますが、90年代後半以降には日本独自のロックがどんどん生まれ、日本人だからこそ作れる“普遍性の強いロック”が定着した。シドの楽曲ってそういうものなんじゃないかな、と。

ゆうや:僕らは日本の音楽シーンを否定していなかったし、どこが一番だとかそういう固定概念なく音楽に取り組んできたので、そこが良い方向に出ているのかなと思います。

ーーそこを踏まえてこのアルバムを聴くと、2000年代以降の日本のロック/ポップスにおけるひとつの答えなんじゃないかという印象も受けたんですよ。

ゆうや:それは大げさですよ(笑)。

明希:でも、そう言っていただけるのは素直にうれしいですね。

ーーマオさんがおっしゃった「このアルバム自体を2019年という時代にしっかり刻みたい」という言葉にもつながりますが、あとあと振り返ったときに「2019年はシドが『承認欲求』をリリースした年だ」と記憶される、そういう1枚になることを願っています。あとは、この作品をライブでどう表現するかですよね。9月13日からは早くも全国ツアー『SID TOUR 2019 -承認欲求-』がスタートしますが、どういったライブをイメージしていますか?

ゆうや:まずは今の僕らが生み出した『承認欲求』の世界をうまく伝えられるツアーになったら一番いいなと思いますし、あとはホールツアーということでいろんな表現ができて、表現の幅も広げられると思うので、そこで“17年目のシド”というのを表現できたらと思っています。

(取材・文=西廣智一)

■ホールツアー情報
『SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL』
2019年11月21日(木)東京国際フォーラム ホールA
OPEN17:30 / START18:30

ID-S BASIC優先予約
2019年8月21日(水)12:00~8月27日(火)16:00
※2019月8月19日(月)時点でID-S BASIC会員の方が対象。

チケット料金:全席指定¥7,500(税込)
※4才以上有料
チケット一般発売日:2019年10月13日(日)

『SID TOUR 2019 -承認欲求-』
詳細はこちら

■リリース情報
『承認欲求』2019年9月4日(水)発売
【初回生産限定盤A(CD+DVD)】¥3,611+税
【初回生産限定盤B(CD+写真集)】¥3,611+税
【通常盤(CD)】¥2,870+税
※封入特典:初回生産限定盤A・B、通常盤(初回仕様分)
・「承認欲求」購入者対象握手会参加券
・SID TOUR 2019 -承認欲求- FINAL チケット特別受付応募チラシ

<収録曲>※初回生産限定盤、通常盤、共に同様の内容
01. 承認欲求
02. Blood Vessel(アプリゲーム「イケメンヴァンパイア」第2章主題歌)
03. 手
04. デアイ=キセキ
05. see through
06. ポジティブの魔法
07. 淡い足跡
08. Trick
09. 涙雨
10. 君色の朝
 
詳細はこちら

■配信情報
シド『承認欲求』リリース記念スペシャルトークイベントLINE LIVE配信詳細
配信日 2019年9月7日(土)東京イベント
配信時間 12:00~12:30
視聴はこちら

配信日 2019年9月8日(日)大阪イベント
配信時間 12:00~12:30
視聴はこちら

■関連リンク
サブスクリプションサービス各サイト
シド オフィシャルサイト
シド オフィシャルTwitter
シド オフィシャルWeibo

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