『Rouge』インタビュー
初来日直前、マレーシア出身シンガーYunaインタビュー 新作『Rouge』が示すアイデンティティ
ジャンルやシーンの枠の中には当てはめられたくはない
ーーこれまでもYunaさんの作品には多彩なフィーチャリングゲストが迎えられていて、今作でもジャンルや国籍、音楽性の幅広いアーティストが参加しています。フィーチャリングしたい相手はどのように決めて、どのようにオファーしたのでしょうか。
Yuna:たとえば、「Pink Youth」の場合だとリトル・シムズと仕事をしたいな、と以前から思っていて、この曲にぴったりかもしれない、と思ったの。彼女のラップの仕方、歌い方はこの曲を最高のものにしてくれるな、と。結果、彼女が参加してくれたことで、曲がまた一段階違うものになったし、素晴らしい作品にしてくれたわ。フィーチャリングアーティストを決める上での法則みたいなものはなくて、何となく感覚的に試してみる必要がある。もちろん、依頼して断らたりすることもあるけど、話したことがある人や尊敬するアーティストがこの曲を良くしてくれそうだと思ったら、オファーするようにしているの。今回の楽曲でもリストを作って数名候補に挙げていたりしたわ。たとえば「叶わないだろうな〜」と思いつつ私が大好きなケンドリック・ラマーの名前も入れていたしね。
ーー今作には、日本のMIYAVIさんや韓国のJay Parkさんなども参加しています。Yunaさんはアジアをルーツに持つアーティストとして、アジアの音楽シーンをどう見ていますか?
Yuna:徐々に伸びていると思う。バラエティに富んだものに対して、アメリカのミュージックシーンの中でもみんな徐々にオープンになっているし。それぞれのアーティストも存在として素晴らしいわ。たとえば、88risingはアジア系のアーティストを輩出しているという意味でとても頑張っていると思う。NIKIとか、リッチ・ブライアンとかね。彼らは、音楽活動においてアジアンコミュニティからのサポートを得ていると思う。一つのカテゴリーに押し込むというよりも、あらゆるバラエティを楽しんでいるような感じがするわ。
アジア人のアーティストだからアジアンっぽい音楽を作る、という固定概念が無くなってきていると思う。2019年において、アジア人でどこどこ出身であるとかは関係なく、自信を持って自分の個性を持って挑戦していればいいんじゃないかな。
私の場合は、アジア系のイスラム教徒だけど、それが今のミュージックシーンのどこに当てはまるのか? というと、わからない。それに私自身「どんな枠に当てはめるの?」と言われると、枠の中には当てはめられたくはないのよね。私のそういうところを気に入ってくれる友達もいっぱいいて良かったと思う。
他人の意見と自身のアイデンティティに向き合うということ
ーー個人的にはアルバムの楽曲で、SNS社会で生きる時代において「Likes」の歌詞に深く共感しました。これはどんな想いで書かれた歌詞ですか?
Yuna:「Likes」は、SNSでもらったコメントにすごくインスパイアされたの。人によっては、私が他とは違う、ということで気に入ってくれた人や「典型的なポップスのアーティストとはちょっと違う」って言ってくれる人もいる。
でも、混乱している人とかもいたの。特にハリウッドにいると、ある行動を取ることが当たり前というか、みんなそうしているから同じように振る舞うことを求められる。たとえばパーティーに行って、「お酒何か飲む?」って言われて「私はお酒を飲まないの」と言うと、「えっ、飲まないの? 何で? そんなに高尚な存在なの?」とか言われたりするし……。
でもその反面、私がイスラム教徒であるということを知っている人達は、(お酒を飲んだりしたら)「彼女そんなことやっていていいの? アーティストだからできるの?」と言うし。こういう風にふるまうべき、と思っている人達もいて、いろいろな意見がある。
ここ10年ぐらい、ずっとそういったことと向かい合っている。みんなちゃんと分かっていないで色々言っていると思うし、これらを受け止めるのは本当にエネルギーを使うの。無視したいけど、できないからとても疲れる。そういった意味でこの曲は率直な気持ちでそういうことを題材にして歌っているわ。
ーージャンルや型に捉われていないあなたの音楽が大好きですが、今作の楽曲は歌詞もよりメッセージ性が強くパーソナルな部分が反映されていると感じました。歌詞のインスピレーションを受けるのはどんなときですか?
Yuna:その曲にもよるけど、運転している時に思い付くことは結構あるかな。今取り組んでいる曲を車の中で聴いていると思い浮かんだりするわね。このアルバムでは、とても才能のある作曲者と一緒に仕事ができてとてもラッキーだと思っている。特に今回のアルバムでは、クローエ・アンジェリデスにはいっぱい助けられたわ。
ーーYunaさんはポップでありながらR&Bの世界観をしっかり伝えることのできるアーティストだと思います。今後、アーティストや表現者としての目標はありますか?
Yuna:将来的には、いい音楽をずっと作っていきたい。素晴らしい音楽を作り続けたい。あとは、もっとパフォーマンスしていきたいな。ツアーに出られる限りパフォーマンスをしていくことは、私にとって嬉しいことだし、どのアーティストも夢見ることだと思う。チケットを売ってツアーに出ることは、みんなが目標にしていることだと思うから。それがアーティストとして本当の意味での収入になっていく。これは、仕事でもあるけど、自分が本当に好きなことでもある。だから、自分の生活をちゃんと持ちながらもツアーなどに出て音楽活動をしていければ、ありがたいと思う。それが、究極の目標ね。自分の家族を持って、心地いい生活ができて、なおかつ自分が好きな音楽活動ができれば素晴らしいことだと思うわ。
ーーありがとうございます! 9月の来日を心から楽しみにしています。
Yuna:こちらこそどうもありがとう! 楽しかったわ。日本に行くの楽しみ~。
(取材・文=神人未稀、通訳=渡瀬ひとみ)
(アーティスト写真=Steve Taylor)
■イベント情報
『Local Green Festival』
8月31日(土)、9月1日(日)
※ユナは9月1日(日)出演
開催場所:横浜赤レンガ地区野外特設会場
詳細
■リリース情報
Yuna『Rouge』
発売中
価格:¥2,500(税抜)
CDはこちら
<収録予定曲>
1. キャスタウェイ feat. タイラー・ザ・クリエイター
2. ブランク・マーキー feat. Gイージー
3. ノット・ザ・ラヴ・オブ・マイ・ライフ
4. ティーンエイジ・ハートブレイク feat. MIYAVI
5. ピンク・ユース feat. リトル・シムズ
6. フォーゲット・アバウト・ユー
7. ライクス feat. カイル
8. エイミー feat. マセーゴ
9. ダズ・シー feat. Jay Park
10. フォーエヴァーモア
11. ティアダ・アヒール
12. レッスンズ※
※日本盤ボーナス・トラック
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