INORANが語る、“まだ見ていないもの”に向かう姿勢「音楽の力の信じて生き勝る」

INORAN、飽くなき音楽への探究心

多くの人と一緒に素敵な時間を共有したい

ーー一方で、本作にはMuddy Apesで活動を共にするディーン(・タイディ)さんやタカ(・ヒロセ)さんが作曲した楽曲も含まれています。

INORAN:INORANというミュージシャンのアルバムなんですけど、別に僕が主役じゃなくてもいいと思っていて。もちろん責任者ではあるけど、みんなが集う場所になればいいのかなという、そういう感覚のアルバムですね。

ーーサウンド的にも、特に前半はリズム面をかなり前に押し出した印象を受けますが?

INORAN:ミックスでそういうふうにしました。リズムがガツンと前に出るような感じが自分の中で旬なので。好きなんですよ、そういう音が。やっぱりロックをやっているんだったら、EDMのキックに負けたくないじゃないですか。だって、こっちは生で打っているんだから。

ーーだからなのか、ボーカルも含めて一つひとつの音の骨格がはっきり伝わってきました。

INORAN:ドラムなんて6セットぐらい用意していますし。特に僕らみたいなミュージシャンは、頑張れるところは頑張ってこだわっていかないとね。

ーーボーカルの面でも、例えばオクターブで歌っていたり、女性ボーカルをフィーチャーしていたりします。そういった歌唱面での工夫がアルバムにカラフルさを与えている印象を受けました。

INORAN:僕は音楽全般が好きなので、分け隔てなく聴いた結果が近年のそういう部分に影響を与えているのかな。ボーカルの処理に関しても「こうじゃなきゃいけない」というのがまったくないし、気に入ったものは素直に取り入れています。

ーーちなみに「Long Time Comin」で歌っている女性はどなたですか?

INORAN:これは「Sakura」(2014年のミニアルバム『Somewhere』収録曲)や「Wherever I go」(アルバム『Thank you』収録曲)で歌っていた鎌田ひかりというシンガーです。

ーーそこも含めて、みんなで作っている感がより強い1枚なんですね。

INORAN:そうですね。ライブも含めてみんなが参加できるような音楽、曲たちであってほしいし。愛着が湧くじゃないですか。愛着ってすごく大事で、そこが心配なものを安心に変えられると思っているので。

ーー他の方が書いた歌詞を歌うことに関してはどうでしたか?

INORAN:すごく刺激的でしたよ。やっぱり自分の手グセだけじゃないから、曲や言葉のアクセントが全然違いましたし。それこそが自分がもっとも刺激を受けたところですね。

ーーこのタイミングに、こういう新しいトライをすることってなかなか大変なことなんじゃないかと思うんです。年をとると頭が固くなる人も多いと思いますし、そういう中でソロ活動20周年で一区切りついた次の一歩で、偶然とはいえこういうチャレンジがあったというのは、INORANさんの中で本当にまだまだやっていないこと、やりたいことがたくさんあるなんだなと伝わってきました。

INORAN:人と比べて変わっているんですかね(笑)。でも、本当にそんなことより、多くの人と一緒に素敵な時間、美味しいものを共有したい、ただそれだけなんです。そのほうが楽しいですし。で、届けるからには自分の中にある、できるだけオーガニックなものでありたい。それは最低限ですね。

この先も感謝を忘れずに、自分を奮い立たせて前進したい

ーーアルバムタイトルも非常に象徴的です。なぜ今回、『2019』という西暦を新しいアルバムに刻んだんですか?

INORAN:いろんな世の中の動きもあって、いい年になるんだろうなという希望も感じられたので。2019年はラグビーワールドカップが日本で初開催されますしね。2019年はこの先50年、100年後を見据えたときに節目の年になるだろうなと思ったんです。自分のキャリアにおいても『2019』ってタイトルのアルバムはわかりやすいじゃないですか(笑)。そのぐらい自分の深層心理の中でも、未来に対して願いがあったりするのかな。

ーー日本に限って言えば元号が平成から令和に変わって、何か新しいことが始まるタイミングでもありますし。

INORAN:ですね。世界的に考えると様々な不安もありますけど、でもうまくいくように願いながらギターをプレイしたいなと思っています。

ーーその希望的かつポジティブな考え方というのは、INORANさんの中では昔から一貫しているものなんですか?

INORAN:いやあ、どうでしょうね。バイオリズム的に落ちた時期もいっぱいあるけど、ミュージシャンとしてはやっぱりそうじゃないと、自分がいる意味がないし、それが責任だと思うので。

ーーアートワークもとても印象的なものですが、これはどういうイメージなんですか?

INORAN:これはMV撮影のワンシーンで、僕が持っているヴィンテージの1951年製のアコースティックギターに、VJさんがレーザーを当てたところなんです。70歳近いギターにもっとも最先端のレーザーが当たっているこの絵がすごくいいなと思って、「これがジャケットにいいんじゃない?」という感じで決まりました。なんだか不思議な絵ですよね。

ーーでも、アルバムの音を象徴するような絵でもあるのかなとも思いました。このアルバムで鳴らされている普遍的なロックサウンドには、現代的な味付けもところどころに加えているわけじゃないですか。そのアップデートされていく感が見事に表現されていると思ったんです。

INORAN:そこまでつなげて考えていたわけではないですけど、そう感じてもらえたらうれしいですね(笑)。でも、導かれた絵だと思うので、そこはつながっているんだと思います。

ーー8月21日からは全国ツアーもスタート。そのあとにはLUNA SEAのニューアルバムも控えていて、INORANさん自身のスケジュールはかなりタイトになるのかと思いますが。

INORAN:そうですね。でも、うれしいことですよ。感謝しかないです。

ーーその感謝の気持ちを忘れないからこそ、ここまで続けられるんでしょうか。

INORAN:かもしれないですね。僕は感謝を口に出していくことはすごく大事だと思っていて、そうすることは自分自身に言い聞かせているのかもしれない。そういう意味でも、この先も感謝を忘れずに、自分を奮い立たせて前進したいと思います。

(取材・文=西廣智一)

■リリース情報
『2019』
発売:2019年8月7日(水)
完全生産限定盤(CD+DVD+LP)
¥10,000(税抜)

通常盤(CD)
¥3,000(税抜)

[CD]
1.Gonna break it
2.COWBOY PUNI-SHIT
3.You’ll see
4.Rise Again
5.Don’t you worry
6.Starlight
7.It Ain’t Easy
8.For Now
9.Don’t Know What To Say…
10.Long Time Comin
11.Made Of Fire

[DVD]「Starlight」Music Video
[LP]CDと同内容

■ライブ情報
『TOUR 2019「COWBOY PUNI-SHIT」』
8月21日(水)新宿BLAZE <FC限定> SOLD OUT
8月24日(土)神戸VARIT. <FC限定> SOLD OUT
8月25日(日)LIVE ROXY静岡
8月31日(土) 金沢AZ
9月1日(日) 長野CLUB JUNK BOX
9月13日(金) 広島SECOND CRUTCH
9月14日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
9月16日(月・祝) 福岡DRUM Be-1
9月20日(金) 仙台darwin
9月22日(日) 名古屋ElectricLadyLand
9月23日(月・祝) OSAKA MUSE SOLD OUT!!
9月29日(日) TSUTAYA O-EAST(「B-DAY LIVE CODE929/2019」)

オフィシャルサイト

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