Jay Som、Bedouine、Joanna Sternberg…USインディーシーンで活躍する女性SSW新作5選
Sofia Bolt『Waves』
フランス出身で現在はLAを拠点に活動するAmélie Rousseauxのソロユニット・Sofia Bolt。デビュー作となる本作には、Rhyeを手掛けたプロデューサーのItai Shapiraや、Angel OlsenをサポートしてきたEmily Elhaj、そして、アメリカンポップスのレジェンド、Van Dyke Parksなど様々なゲストが参加して、LAの名門スタジオ、Revival at The Complexでレコーディングされた。Amélieはエレキギターとボーカルを担当。タイトなバンドサウンドには、オルタナティブな歪みや西海岸らしいサーフ/ガレージロックの豪快さが息づいている。その一方で、リバーブを聴かせた空間に浮かぶAmélieのアンニュイな歌声も魅力的で、荒波の海なか、女の子が涼しい顔をして浮き輪で泳いでいるようなクールさ。なかでも、Van Dyke Parksがストリングスアレンジを手掛けた「Waves」の奇妙な無重力感が面白い。
Mega Bog『Dolphine』
シアトル出身のErin Elizabeth Birgyによるソロユニット・Mega Bog。5作目となる本作は、Meg Duffy (Hand Habits)、James Krivchenia(Big Thief)、Zach Burbaなど前作にも参加した仲間に加えて、ブルックリンのシンガーソングライター、Nick Hakimも参加。NYでレコーディングされた。Erinが持ってきた曲のスケッチをもとに作り上げていくらしいが、ジャズのセッションのように曲の展開は複雑で先が読めない。といっても難解というわけではなく、そこには不思議なポップさや艶やかさがある。フルートやシンセが飛び交い、突然、エレキギターがラウドに掻き鳴らされる、サイケデリックでプログレッシブな世界。そんななか、少女のように軽やかに駆け抜けるErinの歌声は、歌うというより、何かを演じているようなシアトリカルな雰囲気もある。起伏に富んだ曲の展開や技巧的な演奏は物語性を感じさせるが、本作ではイギリスのSF作家、Ursula K. Le Guinに影響を受けたとか。できれば対訳つきで、じっくり聴き込みたい。
■村尾泰郎
ロック/映画ライター。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CULÉL』『OCEANS』などで音楽や映画について執筆中。『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』『はじまりのうた』『アメリカン・ハッスル』など映画パンフレットにも寄稿。監修を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シンコーミュージック)などがある。