アルルカン、DEZERT、シェルミィ、ユメリープ…歌詞や世界観がティーン層に刺さるV系バンド
中学生のとき、学校へ行けなくなったことがある。昼間からベッドで布団に包まる私を外へ連れ出してくれたのは、間違いなくヴィジュアル系バンドだった。部屋を出て、地元の新星堂にCDを買いに行き、初めて東京のライブハウスに足を運んだ。爆音の中、ステージに立つ真っ黒いメイクをしたバンドマンの姿に夢中になった。それから友達が増え、家や学校以外に居場所ができた。あの頃の自分と同じように、生きづらさを抱えた思春期の少年少女は、今もきっとどこかにいるはずだ。そんなティーン層に刺さるバンドを紹介したい。
歌詞や言葉が“刺さる”、アルルカンとDEZERT
今年で6年目を迎えるアルルカン。今年頭から始めたワンマンツアーのファイナルでは、新木場STUDIO COAST公演を成功させるなど、その勢いは今も留まらず、今やシーンの中核的存在だ。アルルカンの魅力は、切なさと激しさの入り混じった曲やフロアとの一体感が感じられるライブなどが挙げられるが、本記事で注目したいのは暁(Vo)による歌詞だ。暁の書く歌詞には、“生きる苦しみ”を感じさせる言葉が多い。たとえば2015年にリリースされた「ジレンマ」のサビでは、〈生きてて楽しい事なんて今までそんなに無かった?それでも良い それでも良い。だから 感じる事もある 「生きてきた」時間の上 どれだけ苦しんだとしても いつか何かに変わってく〉と、現実を生きる苦しさと向き合いながらも、希望を求めてもがく暁の生きざまが感じられる。同じような苦しみを抱えて悩む人たちへ、共感と希望を与えてくれるだろう。また、最新シングル曲の「ラズルダズル」は、〈自らの弱さと ここで 戦い続ける者へ 響いていけ 僕らの歌〉という言葉で締めくくられる。現実と戦うオーディエンスへ向けた、ある種のラブソングのようにも感じられないだろうか。さらに暁は、“アルルカンを自分の遺書にしたい”とまで言う。命を懸ける覚悟で走り続けるストイックな姿は、きっとティーン世代の心にも、勇気を与えてくれるに違いない。
感情をブチ撒けるようなライブパフォーマンスや、激しい楽曲が魅力のDEZERTは、2011年結成。2018年にL'Arc〜en〜Cielなども擁するMAVERICK DC GROUPに所属し、今年の夏には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』にも出演予定。活動の幅をさらに広げているバンドだ。DEZERTでも、千秋(Vo)の言葉に注目したい。2016年にリリースした『「最高の食卓」』収録の「ピクトグラムさん」は、疾走感のあるバンドサウンドが心地よい、ライブ終盤に披露される曲だ。この曲のラストのサビで千秋は、〈不安定でいい 1人だっていい 「自分なんか」と嫌われても 未完成でいい 汚れてもいい 出口が見つからないなら 非常口でいい もがけばいい〉とギターを掻き鳴らしながら歌う。学校、恋愛、家族、仕事……悩みの多くに、出口なんて見つからない。その非常口として、音楽があってもいい。ライブハウスに逃げ込んでもいい。そんな風に全肯定してくれるようなこの曲は、ティーン世代はもちろん、社会で生きる全ての人へ刺さる優しさがある。また、先月22日に行なわれた『血液がない!』ツアーのファイナル公演で千秋は、「不安な未来も、明るい未来も、目をつむりたくなるような過去も、楽しかった過去も、この5分間だけは全て忘れて」「バンドが綺麗事を言わなきゃ始まんねえだろ」と言い放った(参考:VISUNAVI)。そんな“綺麗事”に身を委ね、ライブの間だけでも現実の悩みや辛さを忘れることができれば、また明日を生きる原動力が生まれてくるのかもしれない。