DAOKO×MIYAVI、AKB48、三代目JSB、MWAM……MV監督としての蜷川実花の手腕
一方、男性グループでは、三代目 J SOUL BROTHERSと「花火」「Powder Snow〜永遠に終わらない冬〜」と2作にわたってコラボしている。“ひと夏の恋”をテーマにしたバラード「花火」では、ダンスシーンのバックにプロジェクションマッピングのごとく花火が浮かび上がる仕掛けが鮮烈。続く「Powder Snow〜永遠に終わらない冬〜」では、モノクロの中に突如として鮮やかな花のイメージが現れる。前者が女性目線、後者は男性目線で、双方ともに惹かれ合いつつもすれ違う男女を描く相関関係になっている点にも注目したい。
また、ロックバンドのMVでは、MAN WITH A MISSIONの「Memories」が出色だ。その名の通り、青春時代の思い出を綴ったミドルテンポのナンバーは、切ないメロディと歌詞でファンにも人気の1曲。MVは渋谷の街をさまよう少年が、導かれるようにMAN WITH A MISSIONのライブが行われている空間に足を踏み入れるというストーリー仕立てで進み、さながら短編映画のよう。昼と夜で表情を変える渋谷の雑踏の風景、舞い落ちる羽に彩られた夢の中のようなライブシーンにこだわりが感じられる。
どの作品にも一貫しているのは、楽曲の持つ世界観はもとより、その中でいかに自身とアーティストとの化学反応を作り出すかを意識している点だろう。衣装や小道具、セット、ライティングを細部まで作り込んだ上で、アーティストがどんな答え(表現)を見出すのか。そこに全霊を傾けて作品作りをする姿勢が垣間見える。蜷川の作り出すイメージとアーティストの持つ表現力、そして楽曲のエモーショナルな瞬間が渾然一体となり、出現する一瞬の美しさ。それをそのままMVに映し撮ろうという試みは、やはり写真家という出自があってこそのものではないだろうか。
9月には早くも監督4作目となる映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』の公開が控え、ますます精力的な活動が期待される。こちらの主題歌は蜷川たっての希望で、東京スカパラダイスオーケストラが2001年にリリースした「カナリヤ鳴く空 feat.チバユウスケ」に決定したという。天才作家・太宰治のスキャンダラスな生き様に、スカパラの奏でるホーンの情熱的な響きとチバのシャウトはまさにうってつけ。果たしてどんな作品に仕上がるのか、観る者すべてを圧倒するような映像を期待せずにはいられない。
■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。