作詞家 zoppに聞く、理想的な“雨ソング”の特徴 「情景と主人公の心情をリンクさせる」

作詞家 zoppに聞く、理想的な雨ソングの特徴

「(雨ソングは)まだまだたくさんの可能性を含んだコンテンツ」

ーーそのほかにも印象に残っている雨ソングはありますか?

zopp:竹内まりやさんが作詞した嵐の「復活LOVE」ですね。この曲は〈横なぐりの雨〉から始まり〈この部屋を飛び出した 君は〉と続く。「横なぐりの雨」というワードは台風のような荒れ模様を想像すると思うんです。そんななかで部屋を飛び出すなんて、“君”はよほど切羽詰まってますよね。たったワンフレーズで、登場人物たちの様子を鮮明に描ききっていて素晴らしいです。

ーーなるほど。わずかなワードで登場人物の心情まで伝わってくるのは興味深いですね。それに冒頭に〈横なぐりの雨〉があることで、楽曲全体に雨風の強い情景が印象づけられますね。

zopp:そうなんですよね。Mr.Childrenの「雨のち晴れ」も興味深い雨の使い方をしています。この曲では、主人公の心情を表す比喩表現として“雨”や“晴れ”を用いています。タイトルは「雨のち晴れ」ですが、歌詞の中では風景がほとんど描かれていないのがおもしろい。あと福山雅治さんの「Squall」は、「スコール」をひと夏の恋に例えていていい歌詞ですよね。スコールって短い間にたくさん雨が降るじゃないですか。ドラマティックな恋の表現として比喩しています。また、この曲も“雨”というワードがでるのは、冒頭の〈さっきまでの通り雨〉のみですが、聴き手に雨が上がったばかりの情景を想像させますよね。夏や梅雨、秋冬など季節によっても雨のイメージは変わると思います。

ーー雨には様々な表現方法があるんですね。他に天候をモチーフにした歌詞はどんなものがあるのでしょう。

zopp:雨以上にオールマイティなのが風だと思います。前に進むための追い風、抵抗する向かい風、あとは言い切りたくない時に「答えは風が知っている」という使い方をしたり。風は雨と違って明確な終わりがなくて、曖昧なことのたとえとしても使われることが多いかもしれません。この他に太陽や雪はポジティブなイメージ。雲は地上と空を区切る境界線で、もうすぐ雨が降るなど何かのヒントになるアイテムとして使われるように思います。また、流れる雲などは自由の象徴という印象ですね。

ーーこれまで、雨を用いた楽曲はたくさん発表されていますが、今後はどのような雨ソングが生まれると思いますか?

zopp:数年前から「ゲリラ豪雨」という新しい言葉がでてきています。先ほども紹介した「Squall」の〈通り雨〉や、「復活LOVE」の〈横なぐりの雨〉など、雨にも様々な種類があるんですよね。だから色分けがしやすくて何通りものパターンで物語を描くことができます。そういう意味では、まだまだたくさんの可能性を含んだコンテンツだと感じますね。

(取材=北村奈都樹・村上夏菜/構成=北村奈都樹・平沢花彩)

<あわせて読みたい>
第1回(きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く
第2回(SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック
第3回(ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法
第4回(ジャニーズWEST、NEWS、乃木坂46…J-POPの歌詞に使われている“風諭法”のテクニックとは?
第5回(ジャニーズWEST、山下智久、ドリカム……なぜJ-POPの歌詞には“物語”が必要なのか?
第6回(プロの作詞家がバンドの歌詞にアドバイス? 「ワードアドバイザー」が目指していること
第7回(zoppがももクロ新作で試みた“作詞家の作曲術”「ライバルだった人たちと一緒に仕事ができる」
第8回(作詞家zoppが“アイドル育成集団”をプロデュースする理由「生活に根ざしたコンセプトを」
第9回(zoppが考える、SMAPの歌詞が色あせない理由「調べると、あらゆる視点での面白さに気づける」
第10回(亀と山P、テゴマス……作詞家zoppが考える“続編”曲の面白さ「深読みは歌詞だからこそできる」
第11回(『関ジャム』出演! 作詞家zoppが語る、ヒットする応援歌の共通点「平歌とサビは目線が違う」
第12回(作詞家 zoppが明かす、“夏うた”への危機感「季語を使う不便さが顕著に出てきた」
第13回(作詞家 zoppが考える、“流行歌”が更新されない理由 「日本人の琴線に触れるメロディが減った」
第14回(作詞家 zoppが語る、クリスマスソングの作詞術 「back numberはある種、王道」
第15回(zoppが語る、これからの作詞家像「キャッチコピー的な歌詞も書ける人が台頭する」
第16回(作詞家zoppが考える、近年の失恋ソングの傾向 「自分のことではなく“超他人事”を歌っている」
第17回(『関ジャム』出演 zoppが語る、結婚式ソングの作詞法「テクニックはない、というのが特徴」
第18回(作詞家 zoppに聞く、“泣き歌”の歌詞に欠かせないこと 「絶対に取り返せない喪失感が大事」
第19回(作詞家 zoppに聞く、平成カラオケソングの傾向「歌うのが難しい曲の方がたくさん歌われている」
第20回(作詞家 zoppに聞く、2018年のベストリリック 「米津玄師さんは踊りが生きる歌詞になっている」
第21回(作詞家 zoppが予想する、令和に求められる歌詞の傾向 「“低温の応援歌”がもっと増えていく」

zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら

■関連リンク
zoppの作詞クラブ
Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「連載」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる