『ミッドナイトライナー』インタビュー
THE FOREVER YOUNGが語る、新体制後の変化「どこかに嘘があったら絶対に人に伝わらない」
涙や笑いといった感情を解放させてくれるライブを行い、全国各地で熱狂を集めている3ピースバンド、THE FOREVER YOUNG。このたびリリースされる3rdシングル『ミッドナイトライナー』には、彼らがライブハウスで培ってきた温度が見事にパッケージされている。大合唱できるバンドサウンドから、ロマンティックな弾き語りまで、現役のキッズのみならず、永遠の青さ――“THE FOREVER YOUNG”な心を抱えた大人にも響く3曲。『京都大作戦』などの出演も控えて勢いに乗る今に至るまでの道のりを、メンバー全員に聞いた。(高橋美穂)
誰か一人っていうよりバンド全体が変わった(オガワリョウタ)
――私、ライブに伺うのはご無沙汰しているんですが、先日アップされていたライブの動画を拝見して「おっ!」と驚いたんです。以前と違いステージにガンガンお客さんが上がっているし、3人も弾けているし。最近のライブではいつもあんな感じですか?
クニタケヒロキ(以下、クニタケ):僕たちにしかできないような空気感というか、ぐちゃぐちゃな感じを最近は段々と出せるようになってきましたね。元々パンクやハードコアは好きなんで、そういうライブを目指してきたんです。最近よくステージの上で言っているのは「チカンと、人のものをパクる以外は、何やってもいいぜ」って。あと、目の前に泣いてる奴や、沸々としている奴がいたら、そいつの手を持ってステージに上げたり。お客さんは、僕やこいつ(タカノ)のマイクで歌って、そのマイクを投げ散らかしたりするんですけど、なめんな!っていう気持ちにはならないし、僕たちも楽しいけん、何やってもいいぜって思います。
――特に、オガワさんのパフォーマンスはドラマーらしからぬ激しさですよね。
クニタケ:前に高橋さんと話した4年前とは、こいつも全然変わったと思います。
オガワリョウタ(以下、オガワ):僕、毎回ダイブするなんて全然してこなかった人間なんですけど、(タカノが入って)新体制になったぐらいからですかね……ドラムって基本、動けないじゃないですか。ギターやベースは、音が鳴ってたらどうにでもできるけど、ドラムはその場で叩かなきゃいけない。でも、曲によっては動ける時間があることに気付いて、一回やってみたら「ヤベエ、楽しい! 何でもやれるやん」ってなって。そこからエスカレートしていったんですよね。誰も観ていないでしょうけど、自分がいかに楽しいかどうかっていう。
――いやいや、あんだけ激しかったら観ますって(笑)。「ドラマーは動けない」という固定概念から解き放たれたんでしょうね。でも、ドラマーとしては、単純に大変ですよね?
オガワ:何もしなかったら休憩の時間ですからね。でも、追い込まれれば追い込まれるほど、やり切った時にめっちゃ気持ちいい! って思えるし、アスリートみたいになっています。
――激しいだけって思われるのも……とご自身のプレイにも気を配るようになりそうですね。
オガワ:ほんとに。自分との闘いです。
――そんなライブでの変化に影響を及ぼしたのが、タカノさんの加入です。元々は、THE FOREVER YOUNGのライブをオーディエンスとして楽しんでいたのだとか。
タカノジュンスケ(以下、タカノ):そうですね。いつもライブを観て泣いていました。
――どういった経緯で加入することになったんでしょうか。
クニタケ:立候補してくれたんです。(前のメンバーの脱退があってから)2年強、タカノも含めてサポートメンバーのギターを二人入れて活動していたんですけど、正式メンバーになるために就職先とかも蹴ってくれて。すごく熱量が伝わってきて、正式にメンバーとして入ってもらうことにしました。
――でも、サポート期間はずいぶん長かったんですね。
クニタケ:皆同じ福岡在住なんですけど、僕とサン(オガワ)は久留米で、タカノは北九州なんです。東京でいったら、葛飾と八王子くらい(距離が)離れているんですよね。あとは、タカノの前のバンドと一緒にライブをしたこともあったんですけど、それだけで人間性がわかるわけでもないし、そういうのを確かめるために時間がかかりました。技術より人間性が大事だと思ったんで。
――タカノさんは、サポートとして参加した当初、どのような心境だったんでしょうか。
タカノ:最初は喰らい尽くような感じでしたけど、だんだん馴染んできました。
――タカノさんが正式加入して、このたび『ミッドナイトライナー』のリリースとなったわけですね。「ミッドナイトライナー」は、あの、“ライブでステージに上がってくる奴ら”に向けて書かれているんじゃないかと思いました。
クニタケ:これは、サンと相談しながらリリックを書いたんです。ライブで言っていることをわかりやすく歌っている感じですね。
――このタイミングで歌にしようと思ったのはどうしてですか。
クニタケ:同じニュアンスのことは他の曲でも歌っているんですけど、最近のライブは、僕らとお客さんの熱量が一緒になってきていると思うんですね。僕が言っていることは前から変わっていないんですけど、そういう状況の中でわかってもらえることがあるんじゃないかって思って、改めて名刺代わりになるような曲を出したわけです。
――お客さんがシンガロングしたくなる部分もありますし、これ「俺の曲」「私の曲」って思う人がたくさんいそうですよね。
クニタケ:そう思ってもらえたらいいですね。
――これまでの楽曲では、切なさや後悔もさらけ出してきましたけど、「ミッドナイトライナー」では、“行こうぜ”という前進の意思があらわになっています。バンドやクニタケさん自身に、切なさや後悔を跳ね飛ばせるパワーが付いてきたんですかね。
クニタケ:そうかもしれないです。一人でいると落ち込むことは変わらずあるんですけど、ライブで目の前に泣いている奴がいたら、手を取りたくなるんです。だから“行こうぜ”だと思うんです。俺も一緒やし、ここの空間では怖いものはないやろって。
――泣いてる子がいたら、一緒に泣くのではなく、手を取れるようになったんですね。以前「僕はメンヘラなんです」と言っていたこともありましたが、だいぶ強くなったんじゃないんですか?
クニタケ:メンヘラは変わらないんですけど(笑)、強くはなったかもしれないですね。
――オガワさんは、クニタケさんの変化を感じますか?
オガワ:誰か一人っていうより、バンド全体が変わったんですよね。こいつ(タカノ)がサポートで入った当初とはバンドとしても全然違うし、成長した……かどうかはわからないですけど、変わったとは思います。
クニタケ:そうそう。こいつ(オガワ)も、こんなにインタビューで話さなかったし、ライブでもあんな激しい動きをするような子じゃなかったんですよ。前のメンバーが抜けた時に、(二人で)これからどうしようという話は一切しなかったんですけど、「何とかやるしかねえな」って模索はしてきました。それが実を結んで、バンドが変わってきたんだと思います。
――ピンチをチャンスに変えたんですね。タカノさんは、客観的にバンドを見ている期間もあったと思うんですが、この変化についてどう思いますか?
タカノ:僕がサポートをはじめた時は、前のメンバーのことを引きずっている気もしたし、曲にもそういう雰囲気が出ていたと思うんですけど、だんだんいい感じになってきましたね。
――まさに「ミッドナイトライナー」の〈全部壊れちまって前が見えなくなっても〉っという状態だった。
クニタケ:そうですね。
――でも〈俺とキミの声は響いているから〉という状態でもあったから、ここまでこられたのかなって。また、ここをお客さんたちがシンガロングすることで、説得力が増しますよね。
クニタケ:美しいですよね。サビをシンガロングするのは好きなんですけど、リリックは後から付けるんですよ。でもこの曲は、最初から〈全部壊れちまって〉って歌っていたので、そのままでいいんじゃないか?となりました。ポロッと自分の中からでてきた言葉だったんですけど。
――本音が表れたのかな。〈上手くいかない時はココへ帰ってこいよ〉の“ココ”はライブハウスだろうなって想像できるし、そこに自分も行ってみたくなる歌だと思います。
クニタケ:ありがとうございます。