エレファントカシマシ 宮本浩次の卓越した”変化” バンド、ソロ、プロデュース楽曲から考える

 最後はバンドともソロとも一線を画している、宮本浩次プロデュース曲「きみに会いたい-Dance with you-」を紹介したい。こちらも基本的にメジャーコードとマイナーコードで構成され、サウンドのシンプルさという点では両者とも共通している。しかし、バンドやソロの楽曲にあった“男臭さ”はなく、高橋が潜在的に持っている独特の色気をそのまま楽曲に反映したかのようなダンスミュージックに仕上がっている。

高橋一生「きみに会いたい-Dance with you-」 Music Video Full Version

 また、歌詞の内容もソロやバンドとは異なる。「きみに会いたい-Dance with you-」は先日最終回を迎えたドラマ『東京独身男子』(テレビ朝日系)の主題歌として書き下ろされたもの。高橋はドラマ内で、すでに婚約者がいる元カノが忘れられず、何度も彼女の思わせぶりな態度に振り回される男性を演じていた。同曲はそんなドラマとの相性もよく、愛する人に恋い焦がれる気持ちを官能的に描いたラブソングとなっている。これまで宮本が、エレファントカシマシの楽曲で描いてきたどこかぶっきらぼうで直接的な愛の言葉とは対照的なのだ。

 バンド、ソロ、プロデュース。“らしさ”を残しつつ、それぞれのサウンドで順応さを発揮している宮本。“ロックバンドのフロントマンである宮本浩次”という世間の印象にしばられることなく、多様なジャンルや他アーティストのプロデュースにも挑戦することで、何が起きるか分からない新時代に飛び込んで行こうとする宮本なりの決意が表れているのかもしれない。

 ソロとしての宮本浩次は、散歩の道中。次は一体どんな場所に立ち寄るのだろう。そして、そこでどんな感情を“解き放って”くれるのだろうか。彼の散歩はまだまだ、終わらない。

■清水 莉子
1994年生まれ。
エンタメ系の記事を主に執筆するフリーライター。
「エンタメも人生も、考察してはじめて面白い」がモットーです。
Twitter(@marmriotharis)

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