森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.156
マイヘア、OAU、PELICAN FANCLUB、フレンズ、キノコホテル……個性あふれるバンドの新作
昨年11月にミニアルバム『Boys just want to be culture』でメジャーデビューを果たした3ピースバンド、PELICAN FANCLUBの新作EP『Whitenoise e.p.』。リードトラック「ベートーヴェンのホワイトノイズ」がとにかく素晴らしい。シューゲイズ、ポストロック、ドリームポップといったルーツミュージックをさらに深く肉体化し、美しさ、儚さ、切なさ、危うさを同時に放ちながら、圧倒的なカタルシスを讃えたサビのメロディに突入するこの曲は、彼らの音楽的スタイルをわかりやすく示すとともに、あらゆるリスナーに開かれたポップネスを体現している。〈僕も君も人間だった〉というあまりにも本質的な歌詞にしっかりとした説得力を持たせるエンドウアンリ(Vo/Gt)のボーカルも強烈。
映画『今日も嫌がらせ弁当』主題歌の「楽しもう」、ドラマ『きのう何食べた?』エンディングテーマの「iをyou」を収めたニューシングル『楽しもう / iをyou』。軽快なシャッフル系のリズムで体が動き出し、日々の嬉しさ、切なさ、愛らしさを反映したかのようなメロディで心が解放される「楽しもう」は、曲名通り、“日常を楽しもう”という前向きな思いに満ちたポップソング。一方、ソウルミュージックの香りを漂わせながら、上質な手触りの旋律と〈この先ずっと君と/手と手つないでいたいな〉というフレーズをナチュラルに響かせる「iをyou」は、大切な人に対する切実で豊かな感情を反映させたラブソング。ポップミュージックの滋味をたっぷりと堪能できる、フレンズの魅力をストレートに告げるシングルだと思う。
ガレージロック、サイケデリック、パンク/ニューウェイブなどをルーツにした音楽性で異彩を放ちまくるキノコホテルの7thアルバム『マリアンヌの奥儀』は、支配人・マリアンヌ東雲(歌と電気オルガンほか)と以前から交流があったという島崎貴光 (SMAP、w-inds.、AKB48など)を共同プロデューサーに迎え、「踊れるキノコホテル」 をコンセプトに掲げて制作。ディスコ、歌謡、ロックンロールが混ざり合うダンスナンバー「ヌード」、ブラス、ストリングスを交えたゴージャスな音響とセクシーで切ないメロディが響き合う「愛の泡」など、キノコホテルの個性がポップに昇華された作品に仕上がっている。艶めかしくも鋭利なボーカルが際立っているのも本作の魅力だ。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。