ReNの卓越した音楽センスとカリスマ性 ワンマンツアー『衝動』ファイナル公演を振り返る
今年4月17日に初の海外レコーディングによるデジタルシングル『HURRICANE』をリリースしたシンガーソングライターのReNが、同曲を引っさげたツアー『ONE MAN TOUR 2019『衝動』』のファイナル公演を5月30日、東京・新木場STUDIO COASTにて行った。
小ぶりのアコースティックギターを抱えたReNがステージに現れ、「ようこそ!」と声を掛けると客席から大きな歓声が上がる。おもむろにアコギのボディを叩き出し、足下のループステーションを使ってパーカッシブなフレーズをループさせると、そこに軽やかなギターリフやハーモニクスを織り交ぜたフレーズを次々と重ねていく。まずは「What I'm Feeling」でライブをスタートした。
「すごい、後ろまでパンパンじゃん!」「今日という日をどれだけ待ち焦がれてきたか。今日は僕のうちに遊びに来たような気分で、リラックスして楽しんでね」
そう元気よく挨拶すると、畳み掛けるように「Life Saver」を披露。ステージ後方に設置されたLEDスクリーンには夜の高速道を走る車の映像が流され、〈君を乗せて 朝まで車を走らせて 真夜中のハイウェイを 東へただ真っ直ぐ〉という歌詞の世界観をビジュアル的に演出する。再びアコギのボディを叩き、つんのめるようなシンコペーションのリズムを構築したReNは、体をしなやかにくねらせながらギターを激しくかき鳴らし疾走感と焦燥感を煽り立てる。雄大なフォークミュージック「Sheffield」に続く「Aurora」では、まるでCocteau Twinsのような美しく幻想的なギターサウンドを展開。先ほどのLEDスクリーンには、ReNの足下に置かれたループステーションやペダルエフェクターが映し出され、これらを駆使しながらたった1人でギターや声を重ねていく、彼のテクニカルなパフォーマンスを堪能できる一幕もあった。「よし、次の歌はみんなで歌おうかな、いいよね?」屈託のない笑顔でそう呼びかけると、跳ねるような軽快なリズムとともに「Umbrella」を演奏。サビのシンガロングでオーディエンスとの一体感を深めていく。晴れの大舞台でも全く物怖じしない、無邪気で天真爛漫なそのキャラクターからは、すでに貫禄すら漂っている。「Friends Forever」ではエレキギターを抱えたReNが、心地よい裏打ちのリズムを刻みながら歌詞の一部を「スタジオコースト」と変えると、フロアからは黄色い歓声が上がった。さらにエンディングでは、ボブ・マーリーの「One Love」を引用するなど心憎い演出もあった。
「まだまだいけるかな?」と叫びながら、再びアコギに持ち替え「Illumination」のイントロをかき鳴らすReN。様々なスピードのカッティングを次々と重ね、重層的なアンサンブルを構築していく。さらにアコギのボディを拳で打ち鳴らし、4つ打ちキックのようなビートで高揚感を煽るとフロアのボルテージも最高潮に。LEDスクリーンには星空がオーバラップしたReNの姿が映し出され、次第に夜が明けていくようなファンタジックな映像に会場からはため息が漏れた。
ループステーションを使わず、自らのグルーヴでアコギと歌を披露した「Tell Me Why」、歯切れの良いギターカッティングとタメの効いたヒップホップビートが絶妙なコントラストを生み出し、その上で気だるく歌う「存在証明」は、少しかすれたハスキーなReNの声が印象的だった。そして、本編最後に演奏したのは待ちに待った「HURRICANE」。哀愁を帯びたイントロのギターリフが爪弾かれた瞬間、フロアからはこの日一番の歓声が上がった。ボコーダーを用いた分厚いコーラスによるサビのリフレインを、オーディエンスとともに高らかにシンガロングしたReNは、「サンキュー、ありがとう!」と簡単に挨拶すると、颯爽とステージを後にした。鳴り止まない拍手や、自然発生的に始まった「Friends Forever」のシンガロング、スマホのライトを頭上にかざし、ペンライトのようにウェーブさせる人たちで溢れる中、再び登場したReN。シンセによるビートに合わせ、エレクトロダンスチューン「Shake Your Body」を披露すると、タオルをぐるぐると回す人たちフロアを埋め尽くし、圧巻の光景を見せた。しっとりと歌い上げた新曲「Fallin’」、「最後にみんなで大きい声で歌いたいと思います」と挨拶し、始めた「Lights」では、〈You Gotta Show Your Lights〉というサビのフレーズや、エンディングの〈We Are The Lights〉をシンガロング。ファイナル公演は無事に幕を閉じた。
飾り気のない自然体のキャラクターと、卓越したソングライティング、さらには天性の歌声をも併せ持つReN。新人とは思えぬカリスマ性をたたえた彼の、これからの活躍が楽しみだ。
(文=黒田隆憲/RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER))