kolme RUUNA×フレンズ おかもとえみ対談 日常から生まれる言葉と音楽「“見たもの”を大事に」
(おかもとの歌詞には)日本語の良さが詰まっている
おかもと:(アルバム『Hello kolme』に収録されている)「Only for now」はRUUNAさんの作詞ですよね。アルバムの他の曲はわりと「強い女子」っぽい表現が多い印象だったんですけど、この曲の歌詞からは優しさみたいなものが感じられました。歌詞を書くときは実体験から考えることが多いですか?
RUUNA:前はコンセプトを決めてそれに沿って書くことも得意だったんですけど、今は自分の内面を歌詞にするとが多いですね。「Only for now」は特に自分のリアルに近いと思います。この曲はテーマも含めて3回書き直してるんですけど、完成したものは電車の中で号泣しながら帰った日に書きました。メンバーには「周りから見ると変人だ」って言われたんですけど(笑)、仕事と自分のプライベートの区切りがうまくいっていない時期で……いつも降りる一駅前から歩いて帰って、その時に思っていたことを一晩で歌詞にしました。
おかもと:そうなんですね。それを知って曲を聴くとまた染みてきそうです。
RUUNA:あと最近は誰かに向けて歌詞を書くことも結構あります。
おかもと:ああ、なるほど。誰かに向けた曲って、その人の魂が感じられるから私はすごい好きですね。
RUUNA:歌っていて恥ずかしい時もあります(笑)。一番仲の良い友達とか、両親とか、近い人たちに向けた曲は作ってきたので、次は誰に書こうかというのが……。
おかもと:じゃあ私に書いてください!
RUUNA:本当ですか? 好きすぎて気持ち悪い歌詞になっちゃいそうですけど……(笑)。
おかもと:超見たいです、それ。
ーー次の曲のテーマが決まりましたね。
RUUNA:はい。おかもとえみさんに向けてです(笑)。
おかもと:わー、嬉しいな。
ーーRUUNAさんがわりとリアルな表現に向かうことが多いのに対して、おかもとさんはいかがですか?
おかもと:普段の生活に絡めて曲を作ることは私もあります。今度出る「楽しもう」は映画(『今日も嫌がらせ弁当』)の主題歌なんですけど、原作を読んでインスピレーションを受けるだけじゃなくて、友人から言われた「通勤中に「塩と砂糖」を聴いて勇気づけられているので、そうやって応援してくれる歌をもっと作ってほしい」という話から「じゃあその友人に寄り添える曲を書こう」という気持ちになって作りました。
RUUNA:おかもとさんの歌詞は言葉選びが素敵だなっていつも思うんですよね。響きが可愛かったり、ちょっと色っぽい雰囲気があったり、日本語の良さが詰まっているというか……「どういうことを考えてこの歌詞が出てくるんだろう」といつも思っていました。
おかもと:そうですね……「見たもの」を大事にしているかもしれない。例えば、『恋のステーキまだ焼けない!』(著:小丸栄子)っていうタイトルの漫画があるんですけど、それを見たときからずっと「恋のステーキって何だろう?」って気になっているんですよね(笑)。「生なんだけど焼けたら成就するのかな?」とか、「逆にミディアムレアなのが甘酸っぱい恋が始まるまでの時間なのかな?」とか、本の内容とは全然違うんですけど(笑)、そんなことを無意識に考えちゃう。そういう比喩表現を気にしたり、あと「iをyou」だったら、たまたま見たキャンプファイヤーの動画が印象に残っていて、「あ、だから自分はサビに<炎>っていう言葉を使ったんだな」とか、後から気づくことも多いです。
RUUNA:「見る」かあ……これからいっぱい見ます(笑)。
ーー「iをyou」のお話がありましたが、サビの<淡い炎が揺れる>の次に<心の奥が燃える>と続く流れは感動しました。<揺れる>と<燃える>で響きが揃っていて、<炎>と<燃える>も意味がつながっていて、最初は火の描写だったのがいつの間にかエモーションの話になっていくっていう……。
おかもと:嬉しいです。そんなふうに言っていただけて逆に感動しました。
ーー(笑)。このラインはパッと出てきたんですか? それともいろいろ言葉をはめていく中ででてきたんですか?
おかもと:ここは何かをそんなに意識して作ったというわけではないですね。「降ってくる」というか、<淡い炎が揺れる>って来たら<炎>だから何となく心の奥が燃えているんだろうな、っていうのは自然に出てきたので……ただ、このあたりでちょっと抽象的なことを言ってしまっているので、その後の言葉はふわっとした印象をかっちりまとめるイメージで出していきました。そういうバランスの調整みたいなことはします。
RUUNA:言葉のはめ方がすごくキャッチーだなと思うんですが、最初の1文目から順番にできる感じなんですか?
おかもと:そうですね。曲先行の場合は、基本的にはAメロから始めて音ができているところまでノンストップでいくことが多いかな。スムーズにはまる言葉が出てこないときは、類語辞典を使ったりします。
RUUNA:類語辞典、めっちゃ使いますね。
おかもと:フレンズだとひろせ(ひろせひろせ。フレンズのキーボード)が作ってくる音源に入っている言葉をそのまま活かすこともありますね。基本<ららら~>って歌ってるんだけど一か所だけ<だけど~>ってなってるところがあったりして、そうしたらその<だけど>を残して前後の歌詞を書いたりとか。「Hello New Me!」って曲の場合は仮歌に<つまりは俺式>って単語があって、「ちょっと待って、<俺式>って何?」ってなったんですけど、結局<つまりは俺式>以上にはまる言葉がどうしても見つからなくて(笑)、そのフレーズにつながるように歌詞を考えました。