山田三郎、神宮寺寂雷、有栖川帝統……ヒプノシスマイク、各キャラクターのラップスタイルに注目

ギャンブラーらしい力強くタイトなラップの有栖川帝統(Fling Posse)

 シブヤ・ディビジョンの有栖川帝統はギャンブラーだ。有り金はもちろん、自分の命すら賭けのテーブルに載せるほどのギャンブル狂。地道や堅実といった言葉が大嫌いで、生まれ持った強運で生き残ってきた。また7月7日生まれ、177cm、77kgとラッキーセブンにこだわったキャラクター設定だ。

ヒプノシスマイク Fling Posse「Shibuya Marble Texture -PCCS-」

 有栖川帝統を演じる野津山幸宏はヒプノシスマイクがデビュー作という新人声優ではあるが、それを感じさせないスキルと勢いのあるラップを披露している。少しハスキーで滑舌のいい声とタイトにビートを乗りこなすフロウで耳障りのいいバイブスを生み出している。

 シブヤ・ディビジョンでは、ファッションデザイナーの飴村乱数と作家の夢野幻太郎が滑らかでフリーキーなラップをする中で、有栖川帝統の力強くタイトなラップはグループの中でいいインパクトを与えている。

ポエトリーリーディングのようなラップスタイルの神宮寺寂雷(麻天狼)

 シンジュク・ディビジョンの神宮寺寂雷は、長身痩躯でミステリアスな雰囲気を持っている天才医師。座禅と釣りが趣味で基本的には穏やかな性格だが、変人を好むという一面もある。

ヒプノシスマイク シンジュク・ディビジョン麻天狼「The Champion」Trailer

 神宮寺寂雷役の速水奨はヒプノシスマイクの中では大ベテランの声優である。速水奨の深みのあるバリトンボイスから放たれるポエトリーリーディングのような独特なラップにより、ミステリアスな医師という神宮寺寂雷のキャラクターをうまく表現している。神宮寺寂雷のソロ曲「迷宮壁」では、ラッパーのGADOROが作詞を担当しているが、彼もまたポエトリーリーディングのようなフロウが特徴のラッパーだ。神宮寺寂雷のラップは、GADOROの「クズ」に通じるものがあると感じる。

【Official MV】 GADORO / クズ

 ストーリー性のある壮大なリリックをビートにのせて喋るようにラップする神宮寺寂雷のスタイルは、ヒプノシスマイクのキャラクターの中でも唯一無二と言える。

 このように様々なライムやフロウを駆使したラップスタイルで、ヒプノシスマイクのキャラクターを演じている声優たち。元々ヒップホップに精通していた山田一郎役の木村昴以外はヒプノシスマイクでラップに初挑戦ということだが、やはりみなプロの声優である。耳がよく、もちろん滑舌や声もいいので、非常にラップがうまい。声優としてリリックの内容を汲み取った上でキャラクターを演じるので、ラップに感情を乗せるのがうまいのだ。ぜひ今回紹介したキャラクター以外のラップスタイルもチェックしてみてほしい。

■橋本洋平
1981年横浜生まれ。広告制作の傍ら、ヒップホップやR&Bを中心に執筆する音楽ライター。ファンキーなサウンドが好きで、ロックやEDMも好む。
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