ボーン・ミュージックが伝える音楽への情熱とユーモア 『BONE MUSIC 展』開催に寄せて
ところで、当時はどんな音楽が「ボーン・レコード」となって聴かれていたのだろうか。
「ボーン・レコードは壊れやすかったので、多くが失われたり破棄されたりしてしまっているから、現存するものから推測するほかないのだけど、若者の間ではやはりジャズやロックンロールが人気だったようだね。ビル・ヘイリー、エルヴィス・プレスリー、エラ・フィッツジェラルド……。映画のサントラや、ロシア人アーティストの曲もたくさんあったよ。最も多く登場するのは、ウクライナ出身のピョートル・レシェンコ。“ロシアン・タンゴ”とも呼ばれる美しいロシア語の歌を、戦前にたくさん歌って人気があったのだけど、戦後は西側へ移住したから“ロシアの裏切り者”とみなされたんだ」
気になる「音質」だが、薄いレントゲン写真に溝を掘ったソノシートのようなボーン・レコードは、予想通りほとんどが酷いものだったようだ。
「やっとの思いで手に入れ、家に帰って再生したらノイズしか入っていなかったこともあったよ(笑)。時間が経つにつれて劣化もするしね。おそらく、カッティングする人のスキルにも依るんだろうね。中には驚くほど高音質のボーン・レコードもある。時が経つにつれて需要も高まり、たくさんのボーン・ミュージックが作られた。ただ、金目当てのカッティングマンも増えていき、次第にクオリティは重視されなくなっていった」
本展覧会を通して最も伝えたいことは、「いかに音楽が大切なものであるか」だとコーツはいう。
「我々は今、どんな音楽でも、いつでもどこでも自由に聴ける環境にいる。本当に素晴らしいことだ。でもボーン・ミュージックの時代は違った。音楽が簡単に手に入る今、どれだけ音楽が大切か、どれだけ我々が恵まれているかなんて、あまり考える機会はないよね」
骨の図柄が入ったボーン・レコードは、アート作品としても充分楽しめる。が、今の我々には想像もできないような「制限」や「抑圧」の中、工夫を凝らしながら音楽を求めていた当時の人々に想いを馳せ、彼らの「情熱」や「ユーモア」を是非とも堪能してほしい。
(文=黒田隆憲/写真=(c) The X-Ray Audio Project)
開催期間:2019年4月27日(土)〜2019年5月12日(日)
会期中無休
開館時間:11:00〜20:00
但し、5月2日(木)はイベント開催のため17:00閉館
最終入場は閉館の30分前
会場:BA-TSU ART GALLERY アクセスマップ
主催:Sony Music Entertainment (Japan) Inc.
協力:Time Out Tokyo、Pioneer DJ Corporation
お問い合わせ
入館料:前売料金:一般 1,200円 (税込)
プレミアムチケット:2,400円 (ボーンレコードグッズ付き)(税込)
当日料金:1,400円 (税込)
販売期間:前売券:2019年3月7日(木)~2019年4月26日(金)
当日券:2019年4月27日(土)~2019年5月12日(日)
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