畠山美由紀、冨田恵一プロデュース作に見る音楽的充実 『Wayfarer』リリース公演を振り返る

 確かに、インタビューの際の彼女は、気の効いたジョークで周囲を和ませ、豪快に笑い、あけすけに自らの思いを語ってくれた。その飾らないキャラクターは、歌っている姿だけでは意外と見えないものなのだが、MCとなると話は別。この日も、自分の祖先が旅芸人だったことをユーモラスな語り口で話し、会場を和ませていた。エレガントでシックなボーカリストとしての畠山と、気さくで肩肘張らないお姉さんといった畠山。そのギャップが大きな魅力であり、いじわるな言い方をするなら、「あ、今ちょっと素が出たな」と思える瞬間がたまらなく愛おしかったりするのだ。

 歌を歌えば別世界へと連れて行き、MCでは周囲の人をハッピーにさせる。Port of Notesとしての長年の活動や、Double Famousに彼女が起用されたのも、そうしたキャラクターあってのことだろう。音楽的な充実はもちろん、その人柄があってこそ他者といい作品が作れるのではないか。そんなことを思い知らされた一夜だった。

■土佐有明
ライター。『ミュージック・マガジン』、『レコード・コレクターズ』、『CDジャーナル』、『テレビブロス』、『東京新聞』、『CINRA.NET』、『MARQUEE』、『ラティーナ』などに、音楽評、演劇評、書評を執筆中。大森靖子が好き。ツイッターアカウントは@ariaketosa

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