長澤知之が明かす、曲作りに向き合い続ける理由と意味 「ほんの少しでも“善いこと”をする感覚」

長澤知之が明かす、曲作りの根底にある思い

「自分との対話のような歌を作ることは、自分にとってセラピーにもなってる」

ーー歌の終わりに〈弱い人間の歌〉だと表明する「コウモリウタ」は、長澤くんの歌の中で描かれてきた原風景みたいな曲だと思ったんですけど、これも最近書いた曲なんですよね?

長澤:そうです。だから、今も自分の中には、こういう曲が生まれるような心の部分があるということですね。「ソウルセラー」みたいに外向きな自分もいるし、「コウモリウタ」みたいな内向きの自分もいる。生きていれば浮き沈みがあって、沈んでる時の自分もまた自分なので。

ーーでも、こうして取材でたまに会って話していても思うんですけど、最近になってちょっと変わってきたところも多いんじゃないですか?

長澤:より肯定的に物事をとらえるようになってきたとは思います。ただ、生活リズムは相変わらず最悪ですね。昼夜逆転してるし、お酒もよく飲むし、それでいつも疲れている。で、フィジカルが疲れていると、メンタルにきちゃうこともあって、だから「コウモリウタ」のような曲を書いちゃう(笑)。

ーー生活リズムの問題だけだったら、それは直せばいい(笑)。

長澤:そうですね(笑)。だから、基本的にはポジティブになってきてます。どんなことが起こっても、それは自分という映画の中のワンシーンでしかないと思うようになって。その映画がハッピーエンドであれ、バッドエンドであれ、自分は何らかの意味を持って生きていると思いたいというか、思えるようになってきて。そのために自分は曲を書いたり、人と出会ったりしてるんだろうなって。

ーーそれは肯定的というより、諦観にも聞こえるけど(笑)。

長澤:まあ、このミニアルバムは最初からアコースティックな作品にしようと思って作った作品なので、あまり世の中に対して罵詈雑言を言ってるような曲が入らなかっただけ、というのもあるかもしれませんが(笑)。ただ、〈弱い人間の歌〉というのは、やっぱり自分も昔からそういう、登校拒否をしてずっと引きこもっていたような人間だから。今はもうそれを晴らそうとか考えたりはしていませんけど、その時の、社会に対する怒りだとか恨みだとかは、ずっと心の中に残ってはいるんです。で、今って30代、40代の引きこもりって社会問題にもなってるじゃないないですか。たまたま自分は今、こうして人前で歌っていたりもするけれど、自分がそうなっていても全然不思議じゃないレールにのっていたわけで、そういう人たちのことを他人事とは思えないんですよね。自分が引きこもっている時、やっぱり確実に音楽に救われたという実感があるので。その時、弱ってた自分に寄り添ってくれたような歌を、自分も歌うことができればってことは考えるんですよね。

ーーただ、20代までの引きこもりと30代以上の引きこもりでは、またその深刻さもちょっと違ってきますよね。

長澤:そうかもしれませんけど、自分にできることは、あの時に部屋を出なかった自分を想像して書くしかないんですよね。もし自分だったら、どういうことを歌ってほしいか。それは、絶対に「頑張れ」みたいなことじゃないんですよ。

ーーなるほど。そのことが理屈としてはわかっても、それを実感として本当の意味でわかる表現者っていうのは、きっと限られていますよね。

長澤:そうかもしれないし、実際に何か助けになることができなかったとしても、30代を過ぎても部屋から出られないような人がいるということを、常に頭の片隅に置いていたい。そういう人たちも含めてこの世界が成り立っているんだっていうことを、自分はちゃんと認めていたい。

ーーそっか。そういう人たちがこの世界にいないものとするのではない、というだけでも、それは表現としてきっと意味のあることですよね。

長澤:はい。そう思って歌を歌っています。そしてきっと、そういう自分との対話のような歌を作ることは、自分にとってセラピーのようなものにもなってるんですよね。もちろん音楽をやる動機の中には、多くの人に聴いてほしいっていう承認欲求のようなものもあるんですけど、それだけではここまでやってこれなかったと思うんです。音楽を続けてきた中で、どうしても欲張りになって、そこに意味のようなものを求めるようになってきた。それは自分にとって、この世界の中でほんの少しでも「善いこと」をするというような感覚なんですよね。「願掛け」みたいなことに近いのかな? そういう気持ちで、これからも曲を作って歌っていくだけですね。

 (取材・文=宇野維正)

長澤知之『ソウルセラー』

■リリース情報
アコースティックミニアルバム『ソウルセラー』
3月20日(水)発売
発売日:2019年3月20日(水)
価格:¥2,300(税抜)
<収録曲>
M1 あああ
M2 ソウルセラー ※連続配信第四弾
M3 笑う ※連続配信第二弾
M4 金木犀 ※連続配信第三弾
M5 コウモリウタ
M6 歌の歌
M7 ゴルゴタの丘
M8 Close to me ※連続配信第一弾

『ソウルセラー』購入者オリジナル特典
以下の店舗・ストアにて先着で予約者に、未発表新録曲CDをプレゼント。
・TOWER RECORDS (オンライン含む):未発表新録曲「空待ち」CD
・AMAZON:未発表新録曲「だってそれしか知らないし」CD
※CD特典は無くなり次第終了。

各音楽配信サイト・サブスクリプションサービスにて配信
iTunes
Apple music
Spotify
YouTube Music
AWA
KK box

■ライブ情報
『長澤知之 Nagasawa Tomoyuki Acoustic Tour 2019 ‘Soul Seller’』
チケット代:全自由 ¥4,320(ドリンク代別/整理番号付)
Key:山本健太

4月4日(木)愛知 新栄sunset BLUE  SOLD OUT!
問い合わせ JAILHOUSE 052-936-6041

4月6日(土)福岡照和 SOLD OUT!
4月7日(日)福岡照和 SOLD OUT!
問い合わせ:キョードー西日本0570-09-2424

4月9日(火)広島Live Juke
問い合わせ:ユニオン音楽事務所082-247-6111

4月11日(木)大阪Music Club JANUS   
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224

4月20日(土)札幌くう COO SOLD OUT!
問い合わせ:マウントアライブ011-623-5555

4月23日(火)渋谷duo MUSIC EXCHANGE
問い合わせ:ソーゴー東京03-3405-9999

■関連リンク
公式ウェブサイト
Instagram
Twitter
Facebook
YouTube

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる