E-girls「Follow Me」はロックが下敷きにあった? ゼブラヘッドのパンクアレンジ好評の理由

Zebrahead『Brain Invaders』

 米国カリフォルニア州のロックバンド、Zebraheadが日本語でカバーしたE-girlsの「Follow Me」が話題だ。

 本カバー曲は、前作『Walk the Plank』からおよそ3年5カ月ぶり、通算9枚目のニューアルバム『Brain Invaders』(3月6日日本先行発売)に収録された、日本限定ボーナストラックである。『パックマン』や『スーパーマリオブラザーズ』など、日本のテレビゲームをモチーフにした本人監修によるこの曲のリリックビデオが2月に公開されるや否や、ファンのみならず、様々な方面で大きな反響を呼んだ。

Zebrahead /「Follow Me」 Lyric Video (Short Version) ~日本語~

 アルバムのリリース前日となる5日には、彼らがこれまで来日した際に撮りためていたオフショットの映像で構成された、新たなMVの公開も。日本を代表するガールズグループによる大ヒット曲を、パンクアレンジでカバーするという“異色すぎるコラボレーション”。しかし、実際に聴いてみると全く違和感がなく、原曲を知らない人が聴いたら「これは彼らの持ち曲だ」と言われても何の疑問も持たないに違いない。

ゼブラヘッド /『Follow Me』来日記念MV (Short Version) ~日本語~

 Zebraheadは1996年、カリフォルニア州オレンジ郡ラハブラで結成された現在5人組のバンドである。FugaziやDescendentsなどパンクバンドに影響を受けつつ、ヒップホップの要素を取り入れたサウンドにより、他とは一線を画する存在になっていく。ラッパーのアリ・タバタビィを迎えてツインボーカル体制となった後も、オリジナルメンバーのジャスティン・マウリエロ(Vo/Gt)や、グレッグ・バーグドルフ(Gt)が脱退するなど幾度かの試練を乗り越え、女性ミュージシャン限定のカバーアルバム『Panty Raid』(2009年)や、MAN WITH A MISSIONとの日本限定スプリットEP『Out of Control』をリリースするなど、いわゆる「パンクバンド」のイメージにとらわれないユニークな活動を続け話題を集めてきた。

 一方E-girlsは、LDHに所属する女性グループのメンバーを中心に構成されたガールズ・エンタテインメント・プロジェクトである。「EXILEの妹分」というキャッチコピーとともに2011年、シングル『Celebration!』でデビュー。ナイル・ロジャースを彷彿とさせるファンキーなギターカッティングや、90年代初期ユーロビートを彷彿とさせるサウンドが特徴で、以降も基本的にはEXILEの系譜を継ぐダンサンブルなリズムや、どこか懐かしい歌謡曲風味のメロディを持つ楽曲を中心にリリースしてきている。

 「Follow Me」は、そんな彼女たちが2012年10月3日にリリースした通算3枚目のシングル曲だ。発売初週のオリコン週間シングルランキングでは前作より6倍アップの2位を記録。同年8月に公開されたMV(ショートバージョン)のYouTube再生回数は、現在までに6,375万(3月11日時点)を超えており、彼女たちのMVの中では最も再生回数が多く、「代表曲」と言って差し支えないだろう。実際、〈Follow me! Follow me!〉とリフレインするサビのメロディは、きっと誰もが一度は耳にしたことがあるはずだ。

E-Girls / Follow Me ~Short Version~

 実はこの「Follow Me」は、彼女たちのレパートリーの中ではかなり「イレギュラー」な楽曲である。作曲を手がけているのはJam9。K-POPグループのKARAや倖田來未、乃木坂46などの楽曲提供も行なっている音楽ユニットで、イシノユウキ(Vo)、Giz’Mo(RAP)、MOCKY(DJ)という3人編成。地元のプロサッカークラブ、清水エスパルスとのコラボ曲なども多く手がけており、いわゆるスタジアム級のアンセムソングを作るノウハウも持っている。

 それを踏まえて「Follow Me」を聴くと、この曲はダンスミュージックではなくロックミュージックのフォーマットで作られていることに気づくはずだ。ザクザクと刻まれたイントロのヘヴィなギター、トップノートとベースラインが共に下降していく「カノン進行」、そしてエイトビートのリズム。「味付け」などほとんど加えなくても、そのままバンドで演奏すれば「ロックアレンジ」「パンクアレンジ」になってしまう。

 極め付けはサビの後半の歌詞〈このまま 飛べそう〉のラインで絡んでくる、シンセのカウンターフレーズ。これをシンガロング必至の掛け合いコーラスに置き換えるアイデアが閃いた時、おそらくZebraheadのメンバーたちは「勝算あり」と思ったことだろう。一度このカバーを聴いてしまうと、E-girlsバージョンも元々は「ロックアンセム」を下敷きに書かれたものだったのでは? とすら思えてくるほど違和感がないのだ。

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