B’z、トップランナーであり続ける理由 サマソニヘッドライナー、サポートメンバー一新などから考察

 そして、ファンにとってはツアーの告知以上に驚きの発表となったのが、サポートメンバーの一新である。キーボードの増田隆宣、ベースのバリー・スパークス、ドラムのシェーン・ガラース、ギターの大賀好修はそれぞれB’zとの長い活動歴を誇り、2011年以降はこの4人で鉄壁の布陣を築き上げていただけに、大きな決断だったと言って間違いない。

 もちろん、B’zのオリジナルメンバーは松本孝弘と稲葉浩志の2人であって、これまでも幾度となくサポートメンバーの交代が行われてきた(ちなみに、今年の『SUMMER SONIC』の別日でヘッドライナーを務めるRed Hot Chili Peppersのドラマー、チャド・スミスがレコーディングで叩いたことも)。デビュー30周年という区切りを迎えたことに加え、『DINOSAUR』以降に発表した新曲「マジェスティック」や「WOLF」には、ベースで亀田誠治、ドラムで玉田豊夢と、これまでと違うプレイヤーが参加していたこともあり、今にして思えば予兆もあったと言えるが、やはり驚きは相当なものだった。

 ただ、これまでのメンバーとしばしの別れとなることに寂しさを覚えつつも、新たなラインナップは興奮を禁じ得ないものだった。まず注目が今回唯一の日本人となるギターのYukihide“YT”Takiyama。B’zはサポートメンバー同様に、アレンジャーも時期ごとに変えてきたが、YTは『DINOSAUR』からメインアレンジャーとして加わり、数曲でコーラスにも参加するなどしていただけに、納得の人選だと言える。また、YTは2016年の『LAST GIGS』で活動を終了した氷室京介の片腕だった人物であり、B’zへの参加も氷室が松本に彼を紹介したことがきっかけ。これは日本のロック史における重要なリレーだと言えよう。

 ドラムのブライアン・ティッシーは過去にもB’zのレコーディングに参加経験があり、松本孝弘のTMGにも参加するなど、ファンの中では知られた人物。それ以外の経歴を見ても、Whitesnake、オジー・オズボーン、Slash's Snakepit、スティーヴィー・サラスなど、B’zにも通じる、あるいは直接関わりのあるアーティストと仕事をしてきていて、こちらも納得の人選だ。

 一方、20代の若手アーティストの抜擢は意外性があった。キーボードのサム・ポマンティは、稲葉とスティーヴィー・サラスのユニットINABA / SALASの『CHUBBY GROOVE』に参加していたキーボーディストであるルー・ポマンティの息子。『DINOSAUR』にもコーラスで参加と、すでに接点はあったものの、過去のサポートメンバーの中でもとりわけ長い間ツアーに貢献してきた増田隆宣の後任として、どんな役割を果たすか見ものである。

 さらに驚かされたのが、インド人の女性ベーシスト、モヒニ・デイの参加だ。5弦ベースを用い、タッピングやスラップを駆使したテクニカルなプレイを持ち味として、ジャコ・パストリアスをカバーした動画などが話題となった彼女の参加は、大きなインパクトを与えるはず。B’zとの接点に関しては、交流のあるスティーヴ・ヴァイが彼女の動画を見て、自身の作品やライブに招いているので、そのあたりの繋がりと考えられる。バークリー音大のアレンジ&オーケストレーション科出身であるYTとの相性も考えて、ジャズやフュージョンの素養を持つ彼女の起用に繋がったという部分もあるかもれしれない。

 新たなサポートメンバーと、『SUMMER SONIC』での日本人初のヘッドライナー。B’zの31年目は、またしても大きなチャレンジの年となりそうだ。2人が常々口にしているのは、「僕らはCDを作り、ライブをするだけ」ということだが、それは決して「同じことを繰り返す」というわけではない。音源の形はCDからデータへと変わり、フェスの存在が大きくなるなど、時代は常に移り変わっていく。そんな中にあって、B’zはチャレンジ精神を持って変わり続け、常に新鮮な気持ちで楽曲制作やライブと向き合ってきたからこそ、今も変わることなくトップランナーとして走り続けることができているのだ。ラグビー日本代表の応援ソングでもある新曲「兵、走る」の〈ゴールはここじゃない まだ終わりじゃない〉〈追いつきたいなら 今はトライ〉という歌詞は、B’zの精神性の表れでもある。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

関連記事