『ポラリス』インタビュー
Base Ball Bear、新レーベル設立と今後のビジョン スリーピースの熱量詰まった『ポラリス』語る
Base Ball Bearが1年9カ月ぶりの新作となるEP『ポラリス』をリリースした。4つの新曲と昨年開催された『日比谷ノンフィクションⅦ』のライブ盤との2枚組から成る本作は、徹底的な音の引き算を施しソリッドな説得力に満ちたスリーピースバンドとなったBase Ball Bearの今が浮き彫りになっている。そして、本作からBase Ball Bearの作品は自身が設立したレーベル<Drum Gorilla Park Records>から発信されていく。サウンドと歌詞の変化、そしてレーベルを立ち上げた理由と今後のビジョンも含めてメンバー3人にたっぷり語ってもらった。(三宅正一)
音数は減ったかもしれないけど、熱量は増えたと思う
ーー『光源』以来、1年9カ月ぶりのリリースになるわけですが、ライブを中心に活動してきた中で、新しい音源を作りたいという欲求もどんどん高まっていましたか?
堀之内大介(以下、堀之内):新しい音楽を作ることがリアルになったのは3人でライブをやるようになってからですね。
ーーなるほど、サポートギターに弓木英梨乃さんを迎えていたフェーズが終わってから。3人でライブをやるようになったのはいつごろからでしたっけ?
小出祐介(以下、小出):弓木さんにサポートをお願いしていたのは去年の2月いっぱいですね。
ーー3人でライブをやるようになってからの手応えは?
堀之内:自分の立ち位置からの見え方も変わって。ステージ後方のど真ん中に自分のドラムセットがセッティングされるのも新鮮だったし、あとは音数が一つ減るだけでこんなに変わるんだなという気づきがありましたね。特に昔の曲をやるときにどういうアレンジにすれば3人でよりよい演奏ができるのか考えるようになってから「これで新曲を作ったらどうなるんだろう?」という頭になっていって。
ーー関根さんはそのあたりどうですか?
関根史織(以下、関根):弓木ちゃんと演奏するのもすごく刺激的で楽しかったんですね。ただ、やっぱりサポートの方にお願いするとどうしてもその場の空気で演奏するのは難しい部分もあるんですよ。だけど、3人だけだと言わずもがなの空気で演奏できる場面があるので。その空気感によってアウトロが伸びちゃったりもするんですけど(笑)、それってやっぱり長年バンドやってきたメンバーとでなければどうしても共有できない部分だったりすると思うので。3人になったときはそれがすごく心地よかったですね。音数は減ったかもしれないけど、熱量は増えたと思います。
ーー間違いないですよね。それはこの新しい音源にも如実に表れていることで。
関根:ロックバンドとしてこの感じをもっと突き詰めていけたらと思いますね。もう一つ先へ行けるような気がしたからこそ、3人でやっていきたいと思ったし、音源でもそれを表現したかった。
ーー変な話、ライブを見てる以上にスリーピースのアンサンブルのすごみをこの音源で感じると思ったんですよね。
関根:その気概はすごくありました。スリーピースで新たにアンサンブルを構築していくやりがいもあったし、きちんと演奏に自信のあるバンドになりたいと思ったんですよね。まだまだ自信のない部分もあるけど、そこときちんと向き合って戦いながらやっていくという気概があるんですよね。
ーーそれはホリくんもそうでしょ?
堀之内:うん。まぁ、でも関根さんのほうがやっぱすごかったんですよ。
ーー伸び率が?
堀之内:伸び率というか、熱量が。
ーー中邑真輔に倣って言うと滾ってる感じだ。
堀之内:そう、まさに。俺はその滾ってる感じに影響を受けたって感じですね。関根さんの熱量に対して自分が応えられる最大限を出そうと。それをやった結果がこうなる、みたいな感じですね。ライブも新曲も。
ーー小出くんがマテリアルクラブの制作を進めているときにリズム隊はスタジオに入って、それが実際この盤にはすごく活かされてますよね。作曲クレジットにも初めて関根さんの名前が記されていたり。
堀之内:そうですね。関根さんと2人でスタジオに入ったときに30パターンくらいの(リズムセクションの)ループのデモを聴かせてもらって。「1回のスタジオじゃ消化しきれない!」ってなったんです。これはすげえなと。で、俺は一回そのデモを持ち帰って、一人でスタジオに入ってドラムのフレーズを考えてまた戻してということをやったり。
ーー小出くんは関根さんの滾っている感じをどう見ていたんですか?
小出:滾ってるかはわからなかったですけど「まぁ、やれるでしょう」って思っていたので。
ーー心配することがないという。
小出:そんな感じだったから(リズム隊でスタジオに入る話を)振ったって感じですね。
ーー関根さんの熱量はチャップマンスティックを弾くようになったのも大きいんですかね?
関根:というよりも、やっぱり近年は楽器を弾くのがすごく好きだなと思っていて。チャップマンスティックもそうだし、ベースのこともさらにすごい好きになって。30パターンのデモについても、こいちゃん(小出)から「ループを作って」って言われる前から自分のフレーズのネタ帳みたいなが存在していたんですね。それは人に聴かせる用じゃなくて、みんなで制作に入ったときや誰かとセッションしたときに自分の中で迷いなくフレーズが出るようになんとなく録り溜めていたもので。
ーー小出くんはスリーピースでライブをやるようになったこの1年はどういう実感がありますか?
小出:あんま覚えてないな(笑)。もちろん、曲を覚え直さないといけないとか、そういうことはありましたけどね。リードギターが何をやってるか確認するとか、そのフレーズをコピーし直さないといけないとか。自分で考えたテーマリフも多いけど、それらをずっと弾いてたわけじゃないから。「あっ、こういうフレーズだったのか」って思ったりね。で、必要な部分だけ抜き出してみるという作業をして。あとは自分が弾きやすいように弾き方を改変したり。でも、それは苦ではなかったし、むしろ余分なものをババッと捨てられたんですよ。そこで残ったものをブラッシュアップするという感じですかね。やや専門的な話になっちゃいますけど、普段はカポタストを付けて演奏していた曲を、それをなしで弾くようになったりとかして。今までは開放の音が弾きたいからカポを付けて弾いてたんですけど、それを外さないとリードの幅を持てない。アドリブで弾く部分も多いので。そうやって自分のギタリストとしての変化は当然促されました。でも、僕からすれば今までバッキングしかやってこなかったところから、ギターが上手くなるいい機会にもなったんですよ。
ーーあくまで前向きに捉えられた。
小出:そう。練習するのも楽しいという感じですね。3人になってからずっとやってることでもあるんですけど。あとは、僕は今までもけっこう色んなことを弾いてたはずなんですけど、意外と知られてなかったんだなって。見る人が見ればわかってたかもしれないですけど、やっぱり3人でライブをやるようになって「小出くんってこんなにギターが弾ける人なの?」みたいな反応もあって(笑)。3人になってからは「ちゃんと演奏を見せなきゃ!」とか「ちゃんと盛り上げなきゃ!」とか、そういう視点が増えましたね。