DEAN FUJIOKAは“ポストJ-POP”の頼もしい担い手に 最新作チャートインを機に考察

DEAN FUJIOKA「Unchained Melody」Music Video

 彼の楽曲の醍醐味は、ダンスミュージックの構造を使いつつも、1曲のなかに壮大でドラマティックな展開を作り上げる手腕にもある。たとえば「Unchained Melody」は6分にも及ぶが、長さをほとんど感じさせない。徐々にビルドアップしていく展開が、EDM的な高揚感と物語のクライマックスを一致させていて、まるでウェルメイドなショートフィルムを見るようだ。また一方で、「DoReMi」の終盤で登場する言葉遊びは、腰砕けなほどユーモラス。ふと見せるこうした気負いのなさは、いまや珍しい“スター”のオーラを放っている。

 最後に一点。本作は日本語、英語、中国語のトリリンガルで歌われている珍しいアルバムでもある。サウンドだけではなく、言葉の面でも国や地域を横断するコスモポリタニズムを体現しているのは興味深い。世界と日本をポップミュージックのなかで接続しているという意味で、『History In The Making』も星野源言うところの“イエローミュージック”の実践と言えるかもしれない。DEANは近年、星野源と対談を行ったりラジオ番組で共演したりと交流を深めており、シンパシーを互いに抱いていることはたしかだ。日本のポップミュージック史へのリスペクトとオマージュを常に欠かさない星野とは対照的に、好奇心の赴くまま最先端のエレクトロニックミュージックへ躊躇なく飛び込んでいくDEANの姿もまた、“ポストJ-POP”の頼もしい担い手だ。

■imdkm
ブロガー。1989年生まれ。山形の片隅で音楽について調べたり考えたりするのを趣味とする。
ブログ「ただの風邪。」

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