BMTH、Fever 333、Papa Roach……話題作から「2019年のラウドシーンの在り方」を考察

Papa Roach『Who Do You Trust?』

 4枚目は、もはや大御所感すらあるアメリカ・カリフォルニア州出身の4人組バンド、Papa Roachの10thアルバム『Who Do You Trust?』です。2000年のアルバム『Infest』でデビューし、「Last Resort」や「Scars」といったヒットシングル曲も多数生み出してきた彼ら。初期こそラップボーカルを軸としたニューメタルサウンドが支持されますが、作品を重ねるごとにオルタナティブロックやストレートなハードロックへとシフトチェンジしていきます。近作ではエレクトロの要素も強めつつありましたが、前作『Crooked Teeth』(2017年)ではラップメタル/ニューメタルへと最接近し、過去のキャリアを総括するミクスチャーサウンドで初期からのファンを喜ばせました。

 今回の新作『Who Do You Trust?』でもそのミクスチャーロックサウンドは健在で、バンド形態を無視した打ち込みでの表現やモダンなダンスチューン、ヒップホップを彷彿とさせるトラック、1分半に満たないハードコアナンバーなどバラエティに富んだ楽曲が次々に繰り出されます。ラップボーカルやスクリームなども目立つものの、要所要所で飛び出すキャッチーなメロディが本作をよりポップなものへと昇華させています。前作での表現はまだまだ甘かった、これこそがPapa Roachなんだ!との叫びが聞こえてきそうな、自信に満ちた楽曲群はまさに10枚目にして到達した彼らの真骨頂なのかもしれません。

Papa Roach - Who Do You Trust? (Official Music Video)
Bring Me The Horizon『Amo』

 最後は、つい数日前に海外でリリースされたばかりのBring Me The Horizon待望の新作『Amo』。イギリス・シェフィールド出身の彼らはデビュー当初こそブルータルなデスコアサウンドで注目を集めましたが、アルバムを重ねるごとにそのサウンドを変化/進化させてきました。特に、ジョーダン・フィッシュ(Key)が加入してシングルギター編成となったタイミングで発表された4thアルバム『Sempiternal』(2013年)ではエレクトロニコアの色合いを強め、続く5th『That’s The Spirit』(2015年)ではポップさの目立つニューメタル的スタイルへと移行。その結果、同作は全英&全米2位という大成功を収めています。

 その『That’s The Spirit』から約3年半ぶりの新作となる今回のアルバムでは、さらに劇的な変化を遂げています。オリヴァー・サイクス(Vo)はこのアルバムについて「今までやってきたようなサウンドではない」と事前に発言していましたが、「Mantra」など直近のスタイルに近い楽曲あれど、もはやメタルやハードコアからはかけ離れたトランシーなトラックや、モダンテキストのポップチューン、ラウドなギターが轟くもののその後ろでブラスセクションが鳴り響く楽曲など、多彩さは前作以上。確かにオリヴァーの言うとおり「今までやってきたようなサウンド」からはかけ離れたものが多く含まれています。しかし、どの曲からも前作、前々作から脈々と受け継がれる彼らの血や匂いがしっかり感じられる。だからなのか、筆者は特別違和感を得ることなく、するっと楽しめる1枚でもありました。

Bring Me The Horizon - MANTRA (Official Video)
Bring Me The Horizon - nihilist blues (Lyric Video) ft. Grimes

 ここ数年、エクストリームメタルが単に“激しさ”を“極限まで”追求するものではなく、“多様性”を“極限まで”追求するものへとシフトしつつあることがいろいろなバンドの新作から感じ取れましたが、Bring Me The HorizonやPapa Roachといったバンドがそれを見事に体現。Fever 333やCane Hillのように自身のルーツに正直なバンドも増え、Born Of Osirisは少ない曲数でアルバムを年に複数枚発表することに挑戦する……今回紹介した5枚を通して、このシーンが少しずつ多様化を見せはじめているのではないか?と感じたのは、筆者だけでしょうか。2月には国内からもONE OK ROCKが2年ぶりのアルバム『Eye of The Storm』をリリースしますし、今後もこういった傾向は続いていきそうです。こういった変化がどこまで受け入れられるのか、今年1年かけて見守っていきたいと思います。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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