手嶌葵が語る、映画音楽への愛とシンガーとしての成長 「今は今の感覚を楽しむ方がいい」

手嶌葵、映画音楽への愛

カバーを歌うことは「自分に立ち返る行為」 

ーーラナ・デル・レイについてはどんな印象ですか?

手嶌:とにかく、低音の響きや表現の仕方が素敵だなって思いますね。ディズニー映画の『マレフィセント』(2014年)でも、『眠れぬ森の美女』の主題歌(「Once Upon a Dream(いつか夢で)」)を、ちょっと半音下げ気味に外して歌っていて。そういうひねったところも好きですね。

ーー手嶌さんは以前、加藤登紀子さんがお好きで前作でもコラボ。自分とは違うタイプのシンガーに刺激を受けたりすることが多い?

手嶌:そうですね。自分は低音が弱いとも自覚しているので、目指したい相手ではあります。

ーー映画のリメイクというと、また最近では『スタア誕生』がレディー・ガガとブラッド・クーパーによってリメイクされますよね。最近の映画も観ますか?

手嶌:もちろん。映画館へ行くのは大好きですよ。家族と一緒に家で見るのも好きなんですけど、気になった新作映画があれば、まずは映画館へ行って良い音で見たいなって思うし、実際に1人でふらっと行くことは多いですね。先日も『ボヘミアン・ラプソディ』観に行きました。楽しかった!(笑)。それと、私はサントラが大好きなので、ミュージカルものに限らず気に入った映画のサントラは、必ず買っています。今、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が公開されているじゃないですか。このシリーズのサントラは結構好きで、また引っ張り出して聴いています。ちょっと古い時代のアメリカの音楽というか、埃っぽいテイストがあってそこが良いんですよね(笑)。全てがクリアに聞こえるんじゃなくて、ほんわかと滲んだようなサウンドは、聴いていて耳が喜んでいる気がします。

ーーアルバムの話に戻りますが、前作と比べてまたグッと表現力に深みが加わりましたよね。歌の重心が、少し下になってきているのかなって。

手嶌:ありがとうございます。そうですね、歳を重ねる中で声が低くなるのかなとも思いますし(笑)、自分でもだんだん(低音を)コントロールできるようになってきたなとは思います。もちろん、まだまだ満足いくほどではないですけど、今回はオリジナル曲に比べて重低音が響く曲もなるべく選んでみたので、そこは挑戦しがいがあったし、聴き取っていただけたら嬉しいです。

ーー年齢を重ねていく中で、声の響かせ方なども変わってくるものなのですか?

手嶌:そう思います。もちろん、若い時にしか出せない綺麗な音もあるとは思うんですけど、今は今で声の響く場所が感覚的に少しずつ変わってきていて、それを楽しめるようになってきましたね。

ーーシンガーにとっては体そのものが楽器でしょうから、その変化をポジティブにとらえられたらきっと一生楽しめるのかもしれないですね。手嶌さんは、自作曲を歌うこともあれば、コンポーザーからの提供曲を歌うこともありますし、今回のように既存曲をカバーすることもありますよね。それぞれの魅力はどんなところにありますか?

手嶌:カバーはとにかく歌っていて楽しかったり、幸せな気持ちになったりしますよね。その曲を、私の声を通して多くの人に知ってもらいたいという気持ちもあります。オリジナル曲に関しては、すごく難しいです。例えば歌詞にしても簡単に書けるものはないので、できあがった曲への愛着は強いですね。そして、提供曲に関しては作っていただけるというだけで幸せなことだと思っていて。「丁寧に歌わないといかんな!」って思うので、少し緊張もしていますね。

ーーカバーアルバムに関しては、キャリアの節目節目で出してきていますが、「映画音楽をカバーする」ということは、手嶌さんのキャリアの中でどんな意味を持ちますか?

手嶌:やっぱり、小さい頃からずっと好きで歌っていた曲なので、ある意味では私を作ってくれた曲たちなんですよね。それをまず知ってほしいという気持ちもあります。私という人間を知ってもらうには、まずカバーを聴いてもらうのが一番なのかなとも思っているんです。本当に、素に近いというか(笑)。なんのプレッシャーもなく「私、こんなに音楽が好きなんです!」「楽しいです!」って思って歌えているのはやっぱりカバーなんですよね。なので、カバーを歌うというのは「自分に立ち返る行為」とも言えるかもしれないです。

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手嶌葵 - Cheek to Cheek~I Love Cinemas~ダイジェスト映像

(取材・文=黒田隆憲/写真=三橋優美子/ヘアメイク=吉田友美(Ant))

■リリース情報
『Cheek to Cheek ~I Love Cinemas~』
通常盤(CD) ¥3,000(税抜)
初回限定プレミアム盤(LPサイズジャケット)
SHM-CD(2枚組)+ポスター ¥4,800(税抜)
【収録曲】
<通常盤、初回盤Disc 1>
1. Cabaret(映画「キャバレー」より)
2. Diamonds Are a Girl’s Best Friend(映画「紳士は金髪がお好き」より)
3. Cheek to Cheek(映画「トップ・ハット」より)
4. On The Street Where You Live(映画「マイ・フェア・レディ」より)
5. C’est si bon(映画「昼下りの情事」より)
6. Kiss The Girl(映画「リトル・マーメイド」より)
7. Blue Moon(映画「ワーズ&ミュージック」より)
8. Tea for Two(映画「二人でお茶を」より)
9. Young and Beautiful(映画「華麗なるギャッツビー」より
- Special track -
10. Cheek to Cheek (duet version)  Duet with 平井堅
<初回盤Disc 2>
通常盤、初回盤Disc 1の全曲のinstrumentalバージョンを収録
初回限定プレミアム盤特典 
・LP サイズジャケット仕様
・高音質 SHM-CD 仕様
・ポスター封入

■ライブ情報
『手嶌葵 Concert Tour~Cheek to Cheek~』
12月1日(土)福岡国際会議場メインホール
12月22日(土)なかのZERO 大ホール
12月24日(月・祝)メルパルク大阪 
2019年1月11日(金)横浜・関内ホール

オフィシャルサイト

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