Clean Bandit、コラボレーションの中で突き詰めた音楽性「曲そのもので勝負することを考えた」

Clean Bandit、コラボで突き詰めた音楽性

 クラシックとEDM/クラブミュージックを軸にして、古今東西の様々なサウンドを融合させるUKの3人組、Clean Bandit。彼らが約4年振りとなる最新アルバム『What Is Love?』を完成させた。この作品には、ザラ・ラーソンやルイス・フォンシ、マリーナ、デミ・ロヴァート、エリー・ゴールディング、ショーン・ポール、ビッグ・ボーイ、クレイグ・デイヴィッド、リタ・オラ、チャーリーXCXなどを筆頭に、前作以上に豪華ゲストが集結。2曲目「Baby (feat. Marina & Luis Fonsi)」にはSEKAI NO OWARIのNakajinもギターで参加するなど、イギリスを越えてますます世界へと広がっていったこの4年間の活動を象徴するようなコラボレーションが多数生まれている。『What Is Love?』の制作風景や、リリース日の翌日にアルバムのローンチイベントとして京都の東福寺で開催された配信ライブ「LIVE FROM KYOTO ~古都から世界へ」について、グレース・チャトーとジャック・パターソン、ルーク・パターソンの3人に聞いた。(杉山仁)

色々な愛の形が入っている作品(グレース) 

ーー最新アルバム『What Is Love?』は「愛」がテーマになっていますね。愛というのはかなり大きいテーマですが、これはどんな風に生まれたものだったんですか?

グレース・チャトー(以下、グレース):最初は特に「愛」をテーマに作りはじめたわけではなかったのよ。

ジャック・パターソン(以下、ジャック):そう。すごくオーガニックな形でこのテーマが生まれたんだ。僕らは今回のアルバムを3~4年間かけて作っていて、その中でアルバムの収録候補になる曲がたくさん生まれていった。そして、その中でもベストなものを選んでいく段階で曲を並べてみたら、「今回の曲は、愛がテーマになっているかも」と気づいたんだよ。

ーーなるほど、自然に生まれていったものだったんですね。

ジャック:うん。愛というのはすごく大きなテーマで、一言で「愛」と言っても、そこには色々な形がある。たとえば家族愛もあるし、兄弟愛もあるし、恋愛という意味での愛もあってーー。そういう様々な愛の形や、その愛がどう変遷していくかということを表現している曲が多いことに、僕らも後になって気づいたんだよ。

ーー実際、今回のアルバムでは、とてもパーソナルな愛から、より社会問題に繋がるような愛まで、様々な「愛」の形が描かれていますね。

ジャック:そうだね。しかも、今回は前作以上に様々なゲストが参加してくれているから、僕たちだけではなくて、一緒に楽曲を書いてくれた人たちとの会話の中から生まれた要素も反映されているんだ。たとえば、ジュリア・マイケルズが参加してくれた「I Miss You (feat. Julia Michaels)」は、彼女が自分の体験を正直に書いてくれたストーリーになっていて、僕らも「いいものにしてくれたな」とすごく感心していて。

グレース:一方で、社会問題を反映した曲なら、「Rockabye (feat. Sean Paul & Anne-Marie)」は、イギリスの社会システムからはみ出してしまったシングルマザーの女性たちが、子供を育てるために最終手段に訴えるしかない、そうしないとやっていけないということについての気持ちを歌っている曲で。今回の作品には、本当に色々な愛の形が入っていると思う。

ーーClean Banditの楽曲には、音楽的にもクラシックやクラブミュージックなど様々な要素が混ざっていると思うので、「色々な愛の形がある」というのは、とてもあなたたちらしい作品なのかもしれないですね。サウンド面では、どんなことを工夫しましたか?

グレース:たとえば……ギターは大変だったわ。

ジャック:うん、ギターは大変だった。

ーーどういう意味ですか?

ルーク・パターソン(以下、ルーク):これはジャックが前から言っていたことなんだけど、いくつも音を重ねるんじゃなくて、むしろそれを「抑えたい」と思っていたんだ。歌とシンプルな演奏だけでもいい曲として成立するようなものを作ってみたいという話を、僕らは前からずっとしていて。そこで今回は、ギターもあまりレイヤーを重ねずに、曲そのもので勝負することを考えたんだよ。それがなかなか大変な作業だったんだ。

ーーなるほど、いわゆる「引き算の難しさ」を経験したんですね。他にも今回のアルバムには、ここ数年世界的にポップミュージックのトレンドになっているダンスホールの要素など、曲ごとに様々なアイデアを取り入れていますね。中でも3人がそれぞれ印象的だった楽曲の制作風景というと?

グレース:印象的だった曲が毎日変わるから難しいんだけど……(笑)。今言ってくれたダンスホールの要素で言うと、私は昔から、ダンスホールがすごく好きだったのよ。私が最初に買ったCDも、Ace of Baseの「Happy Nation」(1992年)だったりして。この曲はレゲエを女性ボーカルのポップソングと上手く組み合わせた最初の曲だと思っているんだけど、たとえば「24 Hours (feat. Yasmin Green)」や「Nowhere (feat. Rita Ora & KYLE)」、「Rockabye (feat. Sean Paul & Anne-Marie)」みたいに、今回の収録曲の何曲かからは、きっとAce of Baseの影響が感じられるんじゃないかと思う。

ルーク:僕は、今答えるなら「24 Hours (feat. Yasmin Green)」かな。実は、今回日本に来て空港からホテルに向かうまでの間に、『What Is Love?』の完成版を初めてじっくりと聴いてみたんだ。それで、「全曲立ってるなぁ」と思ったんだけど、中でも「24 Hours (feat. Yasmin Green)」の「出会ってから1日=24時間で、すべてOKになっちゃった」という、ロマンティックな雰囲気に魅力を感じていたところだったんだ。

ジャック:僕はやっぱり、「Baby (feat. Marina & Luis Fonsi)」かな。僕らは今回、京都の東福寺でとても印象的な『What Is Love?』のローンチイベントをやらせてもらったけど、そこではこの曲にギターで参加してくれたSEKAI NO OWARIのNakajinと、歌で参加してくれたマリーナが駆けつけてくれた。そのとき周りを見渡したら、みんながすごく楽しそうで、それが本当に嬉しくて。Nakajinはいつか、Clean Banditのメンバーにしたい(笑)。

ーーははははは。

ジャック:「Baby (feat. Marina & Luis Fonsi)」は曲としても、何でもありの面白いものになっているよね。メキシコのマリアッチ風のトランペットがあって、そこにスパニッシュギターも入っていて、普通じゃあり得ない構成になってる。しかも、コード進行としてはジャズの名ナンバーとして知られる「Autumn Leaves」と同じ進行をなぞっていて……(笑)。

ーー本当に色んな要素が混ざっている曲で。

ジャック:そういう意味でも、新しい挑戦ができた印象的な曲になったと思う。

ーー「Baby (feat. Marina & Luis Fonsi)」も披露された東福寺でのローンチライブは、和太鼓や今話してくれたゲストが加わって、とても素晴らしいものになっていましたね。

グレース:ありがとう! 嬉しい。

ジャック:あの日のセットは(フレンチDJ界の大御所)ボブ・シンクレアと一緒に作った、僕らのライブで使用している舞台をベースにしていて、それを東福寺に持ってきたんだ。

グレース:配信には映っていなかったと思うんだけど、ステージを照らすためのライトもすごい数になっていて。実現できてすごく嬉しかった。

ジャック:イギリスから一緒に来てくれたマリーナは日本が大好きな人だから、「日本に行けるなら何でもいい!」という感じで、僕らのライブを口実に日本にやってきたんだ(笑)。

グレース:いい言い訳ができて、来てくれることになったのよ(笑)。

『LIVE FROM KYOTO ~古都から世界へ』@京都・東福寺
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