欅坂46『21人の未完成』は写真展のよう? 平手友梨奈、志田愛佳、原田葵らの写真から感じたこと
欅坂46初のグループ写真集『21人の未完成』(集英社)は、卒業や活動休止メンバーを含めた1期生21人全員が撮り下ろしで一冊に収まるという、まさに奇跡とも言える、全304ページ重さ約1Kgの写真集。発売から一週間が過ぎた今、改めて気になったメンバーの作品をピックアップしてみたい。
21人のメンバーをそれぞれ21人の有名カメラマンが撮影している『21人の未完成』は、ファンにとってはメモリアルな一冊として楽しめる一方で、どこか写真展に来たような感覚をも味わえる。1人14ページの中で、いかに自分の世界観でメンバーの個性を表現するか、カメラマン同士の見えない競い合いも見どころの一つだからだ。
まずは、平手友梨奈×神藤剛の「共振」。欅坂の原点とも言える渋谷からスタートし、海に落ちてもがく平手の姿。何者でもないただの少女が芸能界という大海原でもがき苦しみ、そして哀しみや不安にも似た何とも言えない表情でこちらを見つめる姿は、きっと平手の境遇を投影しているのだろう。渋谷での制服姿はいつにも増して等身大の高校生であることに気づかされ、海のシーンでひたする一方向を向いているところからは、振り返らず前だけを見つめて進んでいる感じが伝わって来る。
この写真集で最も魅力が活かされたと感じたのは上村莉菜×奥本昭久の「小動物の衝動」。欅愛に溢れた思慮深い言動が目立つ上村は、欅坂の中でも「妖精」と言われるほど、黒のストレートロングヘアに透明感ある愛らしさで人気を誇るメンバー。本来ならいち早くブレイクしてもおかしくない逸材だが、まだその魅力を活かしきれていない印象があった。以前からロリータファッションのグラビアには何度も挑戦してきたが、単に可愛いという印象に留まっていたように思う。今作でも、メルヘンチックなアンティーク調のスタジオで、ワンピースに身を包んだ上村だったが、カメラ目線の時には、無表情の中にも何かを訴えてくる人形のような存在感を発揮し、どこか読者を見透かしているように感じた。目線がない時の無防備な姿には思わずドキッとしてしまう大人の色香が醸し出されていて、奥村が言う「見ているのか見せられているのか」という言葉が妙にしっくり当てはまる。今まで表現しきれていなかった上村の真の魅力が引き出されると同時に、素顔を見せないアイドルとしての幻想を守っていることも感じられる作品だ。
頭の中の個性が溢れる作品となっているのは、長沢菜々香×藤本和典の「My World」。写真集が発売された当初からSNSを中心に、“ほうじ茶”の札を持って裸足で走る長沢の姿が話題になっていた。『伊東温泉 ハトヤホテル』といった昭和テイスト満載のロケ地で撮影する時点で勝ちが確定したような、長沢ワールド全開のエキセントリックな世界観が実に癖になる。台車に座ったり、床に寝転がったり、伊豆のレトロなテーマパークでの記念撮影風だったりと、まるで家族旅行で無邪気にはしゃぐ女の子のよう。たまに古い家族旅行の写真を見返したときに、なんでこんなシチュエーションで撮ったのだろう? と不可解に思いながらも笑って見入ってしまう、そんな写真に近いものを感じる。ただ、衣装は21人の中で最多の8着。しっかりと計算して撮影されたものだと考えると、長沢と藤本のセンスの奥深さを感じざるを得ない。