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『Gravitation』インタビュー

黒崎真音が『禁書目録』新OP「Gravitation」で受け取った、偉大な先達からの言葉のバトン

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 11月21日、黒崎真音がニューシングル『Gravitation』をリリースした。

 本作の表題曲は現在放送中のテレビアニメ『とある魔術の禁書目録 III』(TOKYO MXほか)のオープニングテーマ。黒崎は2010年、『とある魔術の禁書目録 II』のエンディングテーマ「Magic∞world」を1stシングル曲としてリリース。翌年には同アニメの新エンディングテーマ「メモリーズ・ラスト」も歌っており、『禁書目録』シリーズにその歌声を添えるのは3回目となる。そして今回のシングル曲「Gravitation」の作詞を手がけたのは、これまで『禁書目録』シリーズのオープニングテーマを歌ってきた川田まみ。黒崎と川田と『禁書目録』のタッグにCDリリース前からファンの期待は大きく、10月初旬、この曲が各音楽配信サイトで先行リリースされるや、瞬く間にiTunes Storeのアニメソングチャートで1位を獲得した。

 黒崎は今年下半期屈指のアニソンヒット曲をいかに歌い上げたのか? 『禁書目録』シリーズ、川田まみ、そしてアニメファン、アニソンファンへの想いとともに話を聞いた。(成松哲)

「『禁書目録』の世界を歌い上げることが第一義」

ーー新曲「Gravitation」、好調な滑り出しを見せましたね。

黒崎真音(以下、黒崎):ありがとうございます!

ーー10月頭に先行配信リリースされるや、iTunes Storeのアニメソングチャート1位をキープし続けた。その状況ってご自身は予想なさってました?

黒崎:「Gravitation」がオープニング主題歌になっている『とある魔術の禁書目録 III』の放送を待ちわびていた方がすごく多かったので、反響があるだろうなという予感はしていました。前回のアニメ第2期から8年の歳月をかけての今作、3期目だから期待値は高いだろうなっていうか。夏コミ(コミックマーケット94)で初めて音源が公開になった時、その反響がすごかったので。そういうのを見ていると、今までリリースしてきた曲とは全然違うなって。配信が決まったときにも「みなさんにダウンロードしていただけるんじゃないか」って期待もすごくありましたね。

ーーそのファンの期待値を実感することは?

黒崎:配信前からTwitterでリプライをいただいてました。歴史が長い作品の上に、私自身、第1期に「Magic∞world」という曲でエンディングを飾らせていただいていたので「(川田)まみさんが引退した今、新しい『禁書目録』のオープニングは黒崎さんしかいないと思うんです!」みたいな熱いメッセージをいただいたりとか(笑)。なので自分が担当させていただくことが決まるまでは「そういうお言葉をいただくことはうれしいものの、自分では主題歌を歌えるか決められないものだし、どうしたものかなあ。でもできたらいいなあ」って気持ちでいました。

ーーとはいえ、ダウンロードランキングが示した通り、みんなが黒崎さんの歌声を待っていた。

黒崎:すごくプレッシャーはあったんですけど、(川田)まみさんが書いてくださる歌詞ということもあって、前向きな気持ちでレコーディングに臨ませていただいて。黒崎真音の第何章かはわからないんですけど「私の新しい物語が始まる」みたいな気持ちは自分の中にあったし、それがいいように作用したのかもしれないですね。

ーー確かに8年前に『とある魔術の禁書目録 II』のエンディングテーマ「Magic∞world」「メモリーズ・ラスト」を歌ってはいるものの、今回の「Gravitation」はその拡大再生産には留まっていない。最新型の黒崎真音を提示してますよね。

黒崎:この8年のあいだにいろんなアニメのテーマソングを歌わせていただいている中で「黒崎真音はこういうボーカリストだ」って決め付けずに活動するようになっていったから、最新型になれたのかもしれないですね。今回は特にAメロ、Bメロはメロディライン的にはけっこう平坦だったりするんですけど、その平坦なメロディラインをボーカリストとしていかに作り込むかみたいなチャレンジはすごく面白かったですし。

ーー確かにAメロ、Bメロに対してサビのメロディラインがドラスティックに動いたり、2コーラス目を抜けたあとの展開がド派手だったり、本当に局面ごとに表情が変わっていく曲ですよね。

黒崎:私はそれがすごく面白かったですね。AメロとA’メロとあるんですけど、Aメロはちょっと無機質に歌って、A’の方ではノドをギュッと絞めてみる感じというか、ちょっとガナる感じで歌ってみたり、でもサビはそういうもどかしさを一気にヌケる感じがあって。実際、アレンジャーの中沢(伴行)さんにも「ここは優しく歌ってほしい」ってリクエストをいただいたし、私自身、サビはできるだけ明るくしたいという思いがあったので、そこはもう口角を上げまくって歌ってみたりしていますし(笑)。

ーー実際、Aメロ、Bメロとサビでは黒崎さんの声色が変わっているものの、他方、素人にはちょっとわかりかねる部分ではあるんですけど、そうやって表情を変えることで声色も変わるものなんですか?

黒崎:昔、ボイストレーニングに通っていたときに先生にもすごく言われていたんですよ。「笑って歌っているときの声は明るく聞こえるし、口角を下げたらやっぱり低く、怒っているように聞こえるよ」「だから歌は顔からいきなさい!」って(笑)。

ーーそのAメロ、Bメロ、サビでド派手に表情が変わるメロディラインや歌詞に戸惑いはなかった?

黒崎:何回もレコーディングしたり、どうやってパートごとの強弱を付けていくのか考えたり、けっこう試行錯誤はありましたね。機械的に平坦に歌うのがいいのか? 黒崎真音らしくぶん回して歌うのがいいのか? いろいろ試しながらも『禁書目録』の世界を歌い上げるということが私の第一義にあったので、その『禁書目録』らしさを探っていきました。

黒崎真音「Gravitation」MV(ショートVer.)公開!(TVアニメ『とある魔術の禁書目録Ⅲ』OP)

川田まみが「Gravitation」に込めた2つのメッセージ

ーー黒崎さんの思う『禁書目録』らしい楽曲って?

黒崎:うーん……。言い方が合っているかわからないんですけど、どこかで聴いたことのある感じを出したかったんです。アニメが第3期まで……しかも第2期から8年の時を経て第3期が作られることってすごく珍しいと思うんですよね。そうやって長い間望まれて満を持して今っていう作品のオープニングだからこそ、どこか懐かしい感じというか、第1期、第2期とちゃんとリンクしている感じのサウンド、私の知っている『禁書目録』らしさ……って、そのらしさを言葉にしなきゃいけないんですけど(笑)、なんと言うか、これまで『禁書目録』のオープニングテーマを歌い続けて、しかも今回作詞もしてくださったまみさんと一緒にいる感覚でやりたいっていう思いは個人的にあって。だからまみさんの歌詞を、まみさんが隣にいるようなイメージを持ちながら歌うことで「らしさ」を生み出すようにしました。

ーーその「作詞家・川田まみなる存在」がプレッシャーになることは?

黒崎:ありました(笑)。「Magic∞world」のときも緊張感はもちろんあったんですけど、あれから8年ぶんの『禁書目録』シリーズへのファンの方の思い入れというものも感じていましたし、あとまみさんが詞を書いてくださったということは、私に『禁書目録』のオープニングテーマというバトンをパスしてくれたっていうことだと思うので。そういったいろんな方々に納得していただけるものに仕上げないと私自身悔しいから、自分であったり、『禁書目録』というアニメであったり、そのファンであったり、いろんなものとの戦いみたいなものを感じて歌ってました。

ーーそして見事に黒崎真音オリジナルのボーカリゼーションを作り上げた。ただ、これはこれでチャレンジだった気はするんです。先ほど「川田さんが隣にいる感覚で歌った」とおっしゃってましたけど、黒崎さんは自ら作詞をする方でもある。そういう人が自分の言葉ではなく、川田まみというフィルターを通して『禁書目録』の世界を歌い上げるのは、またひとつの挑戦だったのでは?

黒崎:確かにチャレンジではあったんですけど、まみさんから「もちろん『禁書目録 III』のストーリーをイメージして書いてるんだけど、この歌詞には裏テーマとして真音ちゃんへのメッセージも込めているんだよ」というお話をうかがっていたし、実際に改めて歌詞を読んでみたら、なんかこう、いろいろなことがひとつに重なったんですよね。「いいことも悪いことも全部自分の糧になる」「私たちはそういう重力に引き寄せられているんだ」っていうメッセージをまみさんがくださったのかな?って……ホントに勝手になんですけど(笑)、私はそう解釈していて。そういう歌詞の中のメッセージと、今の自分の気持ちをスムーズに重ねることができたな、とは思ってます。

ーーでは普段使っているボーカルテクニックと同じテクニックを使って歌えたのでは? 前回のインタビューのとき黒崎さんは『されど罪人は竜と踊る』というアニメーションでありライトノベルのストーリーやキャラクターと、ご自身の中に眠る想いを重ね合わせて作詞して歌ったっておっしゃってましたし。

黒崎:そうですね。共感できることが一番歌に力を与えてくれると思っていますから。自分で歌詞を書くときはもちろん自分の思っていることを書くわけですし、歌詞を提供していただいた場合もやっぱり「この気持ちわかるなあ」「自分の中からは絶対出てこない言葉だけど、確かに私にもこういう想いはあるな」っていう照らし合わせみたいなことをしていますし。今回はまみさんが私に向けたメッセージも込めてくれた分、歌詞に想いを重ねるのが簡単だった気はします。

ーーその黒崎さんからは出てこないだろうけど、イマジネーションを喚起される言葉って今回の川田さんの歌詞の中にもありました?

黒崎:めちゃくちゃたくさんありましたよ。まず歌詞のパートごとに視点が変わっていく構成はまず私にはできないし、あと〈願いの意味も色を越えた〉っていうフレーズなんかもまず私からは出てこないんだけど、「どんな色なんだろう?」ってすごく想像力をかきたてられるし、きっと聴いてくださる方も「それ何色?」って気になると思うんですよね。そうやって聴く人によっていろんな想像を呼び起こされる深みのある歌詞だったから、作詞家としてもすごく勉強させていただきました。

ーー一方、曲はいかがでした? これまでも中沢伴行さんや尾崎武士さんといった“I’ve Sound”の方々と共作することは多々あったかと思うんですけど、先ほどおっしゃっていたようにAメロ、Bメロ、サビでここまで表情が変わる曲も珍しいし、2コーラス目を抜けたパートにはかなり意外な展開が待ってますし……。

黒崎:あはははは(笑)。

ーーだからアニメで1コーラスだけ聴いて気になった人は絶対にCDや配信楽曲を買ってフルレングスで聴くべき曲だとは思うんですけど、これ、歌うのは大変だよな、っていう気もするんです。

黒崎:さっきお話したとおり、メロディラインはほぼ同じAメロとA’メロでちょっと声を変えてみたりいろいろ試すことができたからむしろ面白かったし、そういうトライアンドエラーをできたおかげで我がことながらドラマチックな曲に仕上がったな、という気もしています。あとイントロのシンセなんかは「THE・禁書目録」って感じで、いちアニメファンとしてテンションが上がりましたし(笑)。「さすが中沢さんと尾崎さんの魔法が効いてるなあ」という印象はありましたけど、「どうしよう」という戸惑いはなくて、レコーディング自体も面白かったですね。

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