Eveが2018年最後のライブで伝えた、これまでへの感謝とこれからへの強い気持ち
ここでEveがライブを振り返り、「あっという間ですね」と観客に告げると、彼の転機作となった2017年のアルバム『文化』のリリース当時を思い出し、歌い手としてカバーを中心に活動していた彼が、全編オリジナル曲でアルバムを完成させた当時の不安や覚悟、そして、その挑戦を受け入れてくれたファンへの感謝を伝えていく。「2017年は僕がどういう人間かということも含めて、自分の中身を知ってもらえた1年でした。(中略)今日この景色を見て、あのとき自分がやろうと思ったことは間違ってなかったのかな、と、そんなことを思いながら歌っていました。(中略)こうして目の前にたくさんの人が来てくれているのを見ると、(自分の音楽が広がっているのを)実感します。本当にありがとうございます」。インターネットでの動画投稿をきっかけに人気を獲得した彼だからこそ、自分の音楽を聴いてくれる人々を前にして演奏するライブの現場は、感謝を伝えられる大切な場所なのだろう。
本編最後の「羊を数えて」は、背後のスクリーンの映像や照明を落とし、バンドの演奏と光を放つ「EVЭ(=EVE)」の文字だけのシンプルな演出で、真正面から観客に向き合って歌を届けていく。ここでは〈そこで気づくんだ/自分は1人じゃなかったんだ/あなたの大切さにまた救われてしまいました〉という歌詞が、まるで目の前の観客に向けて感謝を伝えるような雰囲気で歌われていた。アンコールでは巨大なミラーボールが回り、「惑星ループ」や新曲「ラストダンス」を披露。最後は「お気に召すまま」で大団円を迎え、終演後に待望の最新アルバム『おとぎ』を来年2月6日にリリースすることが発表された。
自身にとって大きな転機作となったアルバム『文化』は、おそらく彼自身が思っていた以上に、彼に様々なきっかけや新たな出会いをもたらしてくれたのだろう。そして、来年2月に発売を控える最新作『おとぎ』は、いよいよ彼の音楽がより大きな場所へと向かう発火点となるような、キャリア屈指の勝負作になるはずだ。そのリリースを前に、これまでへの感謝とこれからへの強い気持ちが、全編からひしひしと伝わってくるようなライブだった。
(撮影=山川哲矢)
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
■セットリスト
1.トーキョーゲットー
2.アウトサイダー
3.デーモンダンストーキョー
4.Dr.
5.会心劇
6.ふりをした。
7.迷い子
8.ホームシック
9.sister
10.fanfare(instrumental)
11.ナンセンス文学
12.ドラマツルギー
13.あの娘シークレット
14.アンビバレント
15.羊を数えて
EN1.惑星ループ
EN2.ラストダンス
EN3.お気に召すまま