AKB48「NO WAY MAN」で告げるアイドルの海外進出の幕開け 楽曲&パフォーマンスから考察
同じグループの中でメンバー間の順位を争う総選挙のあるAKB48は、いわばレッドオーシャン。日本全体を見渡してみても国内のアイドル市場はすでに飽和状態で、数年間続いたアイドルバブルもすでに沈静化しつつある。そんな中で目が向けられているのが海外市場だ。BTS(防弾少年団)の成功例や、女性グループにおいてもTWICEなどの多国籍グループが盛り上がっている。世界的に見ればこうしたアイドルコンテンツはまだまだ伸びしろのあるホットな市場だ。現に、この「NO WAY MAN」のMVにも海外からのコメントがずらりと並ぶ。国内よりも海外から注がれる視線の方が熱いのだ。国内アイドルにとって海外市場はまさに”ブルーオーシャン”なのである。
さて、このように”赤”と”青”を対比させた歌詞に対して、MVにはグレーを基調に”赤”を差し色にした衣装で激しくメンバーたちが踊る様子が映っている。灰色のスタジオは無機質で退廃的。ピタリと合った演技というよりはむしろ、それぞれが高難易度の振り付けに喰らい付くために必死にもがいているといった印象で、”レッドオーシャン”、つまり”血で血を洗う戦い”がダンスを通して繰り広げられているのだ。これが逆に美しく洗練されてしまうようでは元も子もないだろう。一糸乱れぬ動きよりも、それぞれが力強く体を動かす熱量の方が重要で、結果的にそれが全体として意味を帯びたものになればよい。ある意味、今作は海の向こうで華々しくデビューを飾ったIZ*ONEを引き立てるための、あえて”踏み台”役を買って出たような愚直なパフォーマンスである。
海外で華々しくデビューした3名、日本で凌ぎ合う国内組。今後これを機に海外へと進出し、世界で活躍する日本出身のアイドルが続々と増えていくかもしれない。その幕開けを告げるシングルが、この『NO WAY MAN』だ。
■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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