SUGARSOUL×DJ HASEBE対談 20年の歩みでたどり着いた、音楽との理想的な付き合い方

SUGARSOUL×DJ HASEBE対談

 今年8月にSILVA、DOUBLEとのトリプルネームで発表した新曲「UPLOAD」が大きな話題を呼んだSUGARSOULが、メジャーデビュー20周年記念アルバム『sugar soul<Remastered>』をリリースした。このアルバムは2003年発売のベストアルバム『sugar soul』をグラミー受賞エンジニアとしても知られるランディ・メリルの手により最新リマスターし、新曲「Moonlight Dance」を追加収録。今回はそのリリースを記念して、SUGARSOULの代表曲である「今すぐ欲しい feat. Zeebra」を共に生み出したDJ HASEBEとの対談が実現。「今すぐ欲しい」が生まれた背景を改めて語ってもらいつつ、長期の活動休止期間に入った理由、今まで明かされていなかった当時の裏話、さらにはお互いの新曲/新作に込めた思いや今後の音楽との付き合い方まで幅広くざっくばらんに語ってもらった。(猪又孝)

『sugar soul<Remastered>』ダイジェスト映像

長い活動休止を経て、再び表舞台へ

SUGARSOUL

ーーメジャーデビューから20年経ちましたが、今はどんな思いですか?

SUGARSOUL:大して思うことはないですね。だって私は半分以上冬眠していたようなもので。音楽を一度、私は捨てたんですよ。

ーー『SOULMATE』というシングルを2001年にリリースしたあと、活動休止状態にありましたからね。

SUGARSOUL:歌も歌えなかったし、音楽自体が怖い、もう私と関係ない、っていうくらいになったから。だいぶ長いこと音楽とも離れて、歌とも離れて。アーティストなんてとんでもない、ただ息をしてるだけみたいな感じだったから、(20年と聞いても)キャリア的に実感するものはないし、「あ、ほんと?」っていう感じで。

ーー2010年にアイコSUNという名義で、今は亡き朝本浩文さん、MC CARDZと共にKAMというユニットで音楽活動を再開するまで10年かかりました。

SUGARSOUL:自分は鬱だったんだけど、ちょっと動けるようになって、何かしないとつまらないっていうふうにやっとなってきたところだったの。そのときに朝ちん(朝本浩文)が「一緒にやろうよ」って声を掛けてくれて。

ーーKAMでは2010年にシングル『When the Sun Goes Down』をリリース。2011年6月に『SPIRITUAL』『MATERIAL』というEPを二枚同時リリースしました。

SUGARSOUL:そのあとハセさん(DJ HASEBE)に誘われて「Love Shines (feat. sugar soul & ZEEBRA) 」を作ったり。

DJ HASEBE

HASEBE:「Love Shines」は、自分の活動20周年が2010年にあったから、Zeebraとアイコ(SUGARSOUL)でもう一回何かを作りたいなと思って。で、KAMのライブを観に行って「こういうのをやりたいんだけど」ってアイコに話したのが超久々。そのときまで俺も会ってなかったしね。

SUGARSOUL:当時は誰にも会えないような状態だったから。正直、「Love Shines」のときも、まだ自分の中では復活っていう感じではなかった。アーティストとしての心持ちとかスキルとかすべてにおいて何にも復活してなかったの、実は。

HASEBE:そうだよね。俺もなんかそんな感じはしてた。

SUGARSOUL:ただ、なんかやらなきゃって思えたからやり始めてみた、っていう感じで。声を掛けてくれるならありがたいから何でもやろうみたいな気持ちだったんだよね。ただ、アーティストして「こういうのやりたいんだよね」みたいな自発性は全然なくて。KAMもドラムンベースは好きだったし、3人でいろいろやってるのは楽しかったんだけど、出産して子供を抱えながらだったし、東日本大震災もあって沖縄に移住したから、制作やライブがなかなかできなくなっちゃって自然消滅して。

ーーでも、最近は少しずつライブなどをやっていましたよね。

SUGARSOUL:初めは、HAB I SCREAMが声を掛けてくれてフィーチャリングをやったりとか(2015年発売『HAB I SCREAM』収録「I See You」)。自分の中ではリハビリ的な感じでやらせてもらいながら、ライブも恐る恐る「こんなんでいいんですか、こんなんでいいんですか?」って新人みたいな気持ちでちょこちょこやり始めて。そうやってだんだん感覚やスキルを取り戻していって、昔以上になってきたなって感じるようになってきたときに、SILVAが「20周年でなんかやろう」って「UPLOAD」の企画の声を掛けてくれて。なんか面白そうじゃんって、やっと自分から乗り気で音楽をつくろうと思えたの。それが2年前。

HASEBE:ここ数年は俺もライブで一緒にやらせてもらったりしていて。嬉しいことに、自分が出させてもらうフェス側から「SUGARSOULと一緒にやってくれませんか?」っていう話をもらうこともあって、そういうときはアイコに「興味があったら一緒に出ない?」って誘って。それで何度かフェスに出たこともあったよね。

ーー1997年に発売された代表曲「今すぐ欲しい」が生まれた背景を改めて教えてください。

HASEBE:アイコと出会ったのは1996年。カワベさん含めて3人でSUGARSOULを始めたんです。

SUGARSOUL:最初、SUGARSOULはユニット名だったからね。しかも、ハセさんが参加する前、最初のDJはパブちゃん(DJ PMX)だった。

HASEBE:そうだった、そうだった(笑)。

SUGARSOUL:私はその頃、ループものでR&Bを歌ってる日本人の子がいなかったから、そういうものがすごくやりたかったの。そしたらハセさんが、ネタをサンプリングしてループしたトラックを持って来てくれて「コレに乗せて曲を作ろう」って。私は打ち込みも少し勉強してたから、ここからここがヴァース、ここからここはサビねって構成をつくったり、サビはこういうコーラスを入れて、とか言いながらハセさんと一緒に作っていったの。だから「今すぐ欲しい」はカワベさんは一切関わってない。

HASEBE:96年って『さんピンCAMP』があったんだけど、自分はそこに絡めたわけじゃなかったし、ちょっと違うことをやりたいなと思ってて。当時はサンプリングしたループもので歌ってるものがなかったから、そこを日本でしっかりやりたいなと思ってたんです。そういう時期にアイコを紹介されたからタイミングがばっちりだったんですよ。

SUGARSOUL:作りたいモノがお互い合致してたんだよね。

HASEBE:で、「今すぐ欲しい」のトラックはストックで持っていたものだったんだけど、歌詞に関しては当時の事務所の社長さんから「エロい曲をつくりたい」っていう提案があったの。露骨にエロい歌が欲しい、みたいな。で、タイトルはあとで決めるんだけど、セックス的なテーマはインパクトあるし良いかもねってなって。なので、俺はそれに合うようなトラックをアイコに渡して、アイコがあのリリックを考えてきてっていう流れだった。

ーー今振り返っても斬新なテーマですよね。ここまでストレートに女性からセックスを求める歌は今でもあまりないですし。

SUGARSOUL:そう。今でもこの歌、好きな人がいっぱいいる。女の子たち、この歌好きだからね。30代くらいの子が今でも「好きです」とか「青春です」とか言ってくれる。

HASEBE:セックスの歌を全員合唱してるっていうのはちょっと笑えるけどね(笑)。

SUGARSOUL:いまだに大合唱だからね(笑)。

HASEBE:「今すぐ欲しい」は、1997年に出した『Those Days』に入ってるのがオリジナルで、そのあと俺が出した『adore』に入っているのは歌もラップも録音し直してるんです。で、俺は現場で『adore』に入ってるバージョンをよくかけてたんだけど、今回のリマスター版で久々に聴き返したらオリジナルの「今すぐ欲しい」もいいなと思って。歌がいい。

SUGARSOUL:いいよね。かわいいよね(笑)。

HASEBE:そう、かわいいの。

SUGARSOUL:超初々しい(笑)。自分で聞いても「え、誰?」みたいな(笑)。

HASEBE:けど、かわいい中に艶っぽさもあって、すっげえいいなと思って。Zeebraのパートも、改めて聴き直すと、こっちも良かったんだって。今日はこのあとあとDJで名古屋に行くんだけど、オリジナルの方をかけたいと思ってる。

SUGARSOUL:やっぱ欲が出るんだよ。もっとこうしたかった、ああしたかったっていう欲が3人ともあったから、それを叶えたのが『adore』バージョンだったの。でも、二度とできないよねっていうものがオリジナルには詰まってる。やっぱりそのときにしか出せない歌や声ってあるから。

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