花澤香菜、出会いの連鎖で築いた表現者としての今 オリンパスホール八王子公演レポ

花澤香菜のライブに感じた表現者としての今

 「ここからはライブ後半に突入しますよ」と告げられるとバンドメンバーが捌け、花澤と佐橋の2人がステージに残った。今回のメインは何と言ってもこの2人によるアコースティックコーナーであろう。そして、そこでカバーしたフジファブリック「若者のすべて」はこの日の中で最も幸せな瞬間だった。事前にペンライトの使用も控えるよう促され、静寂と暗闇のなかで彼女の歌声がまるでロウソクの炎のように優しく光っていた。歌う前には選曲した経緯や、佐橋とフジファブリックとの意外な接点も明かされ、ひとつひとつの出会いが大きな物事に繋がっていく、そういう出会いの連鎖のような意味合いも込められたひと時だったように思う。

 この後、「春に愛されるひとに わたしはなりたい」では演奏中に舞台から一旦捌けて衣装チェンジし青い服に着替えて歌い切った。「大丈夫」「25 Hours Day」「CALL ME EVERYDAY」「あたらしいうた」と続けて披露し、本編は終了。

 途中でダンサーも登場し、観客総立ちで踊り合うなど、音楽を目一杯楽しむ空間になっていた。アンコールではデビュー曲「星空☆ディスティネーション」も披露され、客席からは歓声が上がる。サプライズで佐橋の誕生日を祝う光景もあり、会場からはこの日一番の歓声と拍手が送られた。ラストに「おやすみ、また明日」を歌い、夏の終わりとともに彼女たちはステージを後にした。

 新しい絆を確かめ合いながら、次に進んでいる彼女を温かく見守るようなステージ、そして「今の花澤香菜」を存分に感じ取れるコンサートであった。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

花澤香菜 オフィシャルサイト

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