フェアリーズとSPEEDに流れる“共通のDNA” 『ウルトラFES』、hiroとのコラボへの期待
一方のフェアリーズは、ライジングプロダクションが明言はしないものの“2010年代のSPEED”を生み出すべく、幼少時から全国各地のダンススクールで修業を積んだ面々を選りすぐったグループ。2011年のデビュー前から共同生活を送り、『スッキリ!!』(日本テレビ系)の企画でグループ名が公募され、デビューまでの奮闘ぶりが伝えられたことを覚えている人も多いのではないだろうか。こちらは全員中学生でのデビューだったが、まだあどけないメンバーたちが先輩の安室奈美恵やMAXのようなセクシー感をにじませた楽曲をハイヒールで歌い踊るギャップが印象深かった。
ライジングプロダクションの伝統といえるパワフルに歌いながら踊れるスキルの高さはもちろん、もっとも類似性を感じさせるのは高音パートの歌い上げ方だ。ソウルフルでパンチのある島袋の歌唱法は非常に個性的だが、フェアリーズの中でも比較的歌割の多い伊藤萌々香、下村実生らの時折ミックスボイスを交えた高音部の歌い上げ方は、特にSPEED的要素を感じさせるポイントといえる。現在と比べると歌もダンスも拙いが、デビューシングル収録の「Song for You」などがわかりやすいかもしれない。
この2組については、デビューまでの育成時に牧野アンナがかかわっていることも共通点といえる。安室奈美恵やMAXらとともにSUPER MONKEY'Sの一員として活動したキャリアも持つ牧野は、他にもSKE48らを手掛けてきたアイドル業界の立役者。ダンスについてはもちろん、元アイドルならではの経験を活かしたメンタル面を含む厳しい指導はよく知られているところだ。フェアリーズの場合はさらに、世界的に活躍するダンサーであるDA PUMPのKENZOがレッスンや振付などでもかかわっており、非常にシンクロ感の高いパフォーマンスを見せるグループへと成長している。
ソロとしてはジャズや島唄にもトライするなどボーカリストとして成熟した魅力を見せる島袋と、DA PUMPや三浦大知の活躍で再び音楽シーンを席巻する勢いを見せているライジングプロダクションの申し子のような存在であるフェアリーズ。2組が今回のコラボでどのような融合を見せてくれるのか、実に興味深い。
■古知屋ジュン
沖縄県出身。歌って踊るアーティストをリスペクトするライター/編集者。『ヘドバン』編集を経て、『月刊ローチケHMV』『エキサイトBit』などで音楽/舞台/アートなど幅広い分野について執筆中。