7thシングル『VORACITY』インタビュー
MYTH & ROIDが考える、アニメオープニングとグルーヴの融合「わざと金物を極端に少なくした」
「カッコよく歌うよりも少女みたいな高い声が怖く聴こえる」(KIHOW)
ーーだからこそ全体がどっしりした、重心の低い感じになっていますよね。疾走感もあるけど、ヘヴィーなサウンド、でもスタイリッシュに削ぎ落とされているという、絶妙なバランス感で成り立っている楽曲に聴こえました。
Tom:今回のOP曲制作は、ある程度の要望をもらって、一番最初に出した楽曲があるんですけど、それはめちゃくちゃテンポが遅くてグルーヴィーな曲で。監督から「いや、もっと疾走感が欲しいんだよね」と言われたんです。「OP曲に疾走感が欲しい」っていうのは映像作品の楽曲を作る上で常套句のようなものなのですが、僕はその裏をかくことでヒット曲を作ってきたというのも経験として多くあったので、じゃあその両方を上手く融合させようということで作り直したのが今の原型です。
ーー所々に挟まる鍵盤も、今回の曲において“洗練された感じ”を付け加える重要なエッセンスのように聴こえました。
Tom:僕、そこは全然意識していないんですよね。でも、MVのコメントやTwitterでピアノについての言及が多かったので驚いたんです。
ーーボーカルは切り返しが多くて大変ということでしたが、とくにAメロの部分は難易度が高かったんじゃないですか?
KIHOW:Aのなかでも前半と後半でガラッと歌い方が変わるので、難しいんですよ。前半は可愛らしく歌う日本語で、後半はシャウトする英語詞なので。
ーーAメロ前半の部分を”可愛らしい”と表現することにも驚きました。人によっては「妖艶な」とか「粘り気のある」と言いそうな感じだったので。
KIHOW:最初に歌ったテイクでは、もっとサウンドに合ったカッコ良さを意識したんですけど、後から「もっと明るくて可愛い感じの声の方がいいんじゃないかな」とアドバイスしていただいて。
Tom:聴き返したらびっくりするくらい違いましたね。海外の黒人シンガーさんが歌っているような声になっていて。それはそれで正解だったのかもしれないんですけど、街角でスピーカーから聴こえたときに、カッコいいけど求心力がほんのちょっと足りないような気がしたんです。なので、その部分はAメロ後半でも残しつつ、サビでは1番、2番、大サビでどんどんカッコよく変化するようにしていて。でも、ワンコーラス目はアニメでも流れるし、そこでどれだけ人の心をつかめるかと考えると、明るく可愛く歌ったほうが、最終の仕上がりとしてはキャッチーになるかなと。
ーー頭サビで受けた印象とAメロの頭では確かに印象が真逆です。
KIHOW:個人的に不気味な要素を出したいという思いがあって。それってカッコよく歌うよりも、少女が歌っているような高い声のほうが怖く聴こえたりするじゃないですか。なのでここを可愛く歌うことで、全体のイメージが良い意味で変わったような気がします。
ーー今回のMVはホラーテイストで、監督は大河(臣)さんではないんですよね。
Tom:「JINGO JUNGLE」MV監督のマサオさんに、実写で求心力のあるMVをお願いしました。前のインタビューでも言ったように、手のひら返しをされる曲だと思っていたので(参考:MYTH & ROIDが“炎上覚悟”の新作をリリースした意図は?)、ここで加速が付くだろうとは考えていたからこそ、MYTH & ROIDの魅力が最大限に出るものを作らなければと。
ーーあらためて考えた「MYTH & ROIDの魅力」とは?
Tom:MYTH & ROIDの魅力は2つあると思っていて、ひとつは“神秘的”であること、もうひとつはどこか“恐怖”があること。「HYDRA」でも、MVに無表情のアンドロイドが出てくるんですけど、そこも恐怖を感じさせて、人の心を惹きつけるのかなと思っていて。なおかつ、アニソンでそういう恐怖を表現をしている人たちはいませんから、このタイミングで“恐怖”を感じさせるMVを作るのはぴったりだなと。そこに“神秘性”を合わせて考えた結果が、“ダークファンタジー”的な映像で。監督にも『パンズ・ラビリンス』をはじめとした映画のタイトルをいくつか共有して、こういうMVに仕上がりました。
ーーインパクトが強くて、頭から離れないです。
Tom:いままでのMVのなかでも、一番回転が早いかもしれないです。発売日までに50万回再生って初めてかもしれない。