MYTH & ROIDが考える、アニメオープニングとグルーヴの融合「わざと金物を極端に少なくした」

ミスドが考えるアニメOPとグルーヴの融合

「ドメスティックなフィールドを突き詰めたい」(Tom) 

ーー歌詞では“食欲”をテーマにしたとのことですが、前作の「HYDRA」はリザードマンの物語を題材にしたものでした。今回は9巻の物語(アインズが帝国に攻撃を仕掛ける、"大虐殺”のパート)が歌詞のベースになってるのかな、と思いました。

Tom:そうですね。そこが3期の一番大きなエピソードになると聞いたので、“虐殺”をどう描くかがポイントだなと。でも、そうなってくると「L.L.L.」も「JINGO JUNGLE」もそれに近いテーマだし、同じことを描くわけにもいかないですよね。今回は相当な数を相手にすることなので、作詞のhotaruともそれは”貪り食う”ことだよね、と話して、「なら七つの大罪にもある”暴食”なんてどうだろう?」ということで題材も決まり、ジャケットやMV、アーティスト写真のイメージも浮かんできました。

ーーミスドは“七つの大罪”のようなテーマがぴったりはまるアーティストですよね。その真逆とまでは言いませんが、カップリングの「Something w/o Sunrise」はオルゴールの音色から、ヨナ抜きのメロウでジャジーなサビへとつながり、2番メロ〜サビはエレクトロニカ調になる、という構成が面白いです。

Tom:マスタリングスタジオで聴いて思ったんですけど、こっちのほうがレンジは広いんですよ。良い意味で言いますけど、カップリングなんでもはや何をやってもいいわけですよ。何やっても正解。そのなかで表題曲が激しいから、その対比みたいな曲を作ろうということで、生まれた曲です。

ーーKIHOWさんのボーカルは、ウィスパーっぽいけど力強さが宿っているように聴こえます。こういう曲を歌うにあたって、やはり「HYDRA」で得た経験値は大きかったのかなと感じました。

KIHOW:歌い方は「HYDRA」よりは息の量は少ない感じですね。意外と囁いていないです(笑)。声を優しい印象にするために、空気は多めに使っているんですけど。

Tom:そういうやりとりをレコーディングのときにもしました。KIHOWが「どういう歌い方がいいですか?」ってワンコーラスを3つくらい歌い分けてくれて。めちゃくちゃ弱いのと、中くらいのと、強いのとで。めちゃくちゃ弱い声のバージョンは「HYDRA」に近かったけど、結果的に中くらいのものになったんですよ。

KIHOW:この曲は自由に歌えるということがあって、自分がこういう感じがいいなと思ったテイストを、Tomさんに「いいよ」っていってもらえたんです。あまり多くはないんですけど、曲を聴いてはっきりと歌い方の輪郭が見えた曲ですね。今までの曲は「こうですか?」と歌ってみても「そうじゃないんだよ」と言われることが多かったので(笑)。結果がどうであっても、それに意見をいただいてその課題に挑戦すること自体が楽しみになっていたんですけど、今回は正解だったみたいで、「やってやった!」と思いました(笑)。

ーーTomさんからすると「思ってたことをようやく言い当ててくれた」という気持ちでしたか。

Tom:それもありますが、この曲ってデモのアレンジがもっとロックバラードな、全然違う感じだったんですよ。そこに対するアプローチとしてもKIHOWの歌は正解だったんですけど、僕がその声に合わせてもう一回アレンジを練り直したので、よりベストなマッチングになっているんです。

ーー今回のシングルは、前回のインタビューで話していた「手のひらを返す」ことを想定して作った作品ということですが、実際の反応を見てどうですか?

Tom:「HYDRA」は絶対外しちゃいけないという気持ちで作って、その目的に合った曲ができたし、YouTubeの反応を見ていても「狙った通りだな」と思いました(笑)。

KIHOW:ネガティブに考えることはあまりしないんですけど、ボーカルが変わったり、「HYDRA」で曲のテイストが変わったりと立て続けに色んなことが変わったので、デビュー当時から楽曲を聴いている方が不安になったりもしたとは思うんです。でも「VORACITY」では、今までのMYTH & ROIDらしさを出しつつ、自分の歌も活かせるような形にできたのが嬉しいですし、これを聴いて安心してくれる人も増えるのかなと。

Tom:「HYDRA」の評判を見ていて思いましたけど、”ネット心理”なんですよね。誰かが「ボーカルが変わったから良くなくなった」とふと言ったことが勝手に広がって。でも、この言葉自体はあくまで誰かの個人的なつぶやきだし、作る側も売る側もそれに踊らされず、本当にやりたい音楽を見失わなければ大丈夫だというのは、KIHOWにも言いました。でも批判は嬉しいことで、注目を集めるコンテンツにはどうしてもアンチはつきものです。その中でもきちんとこちら側に気づきを与えてくれる意見も中にはありますし、前向きに捉えることが多いですからね。個人的にはアンチ的なものに対する防御力もかなり強いほうなので(笑)。

ーーそう考えるとOxTって防御力の高さがすごい2人が揃ってる稀有なユニットですね。

Tom:そうですかね?(笑)。

ーー最後に、今後の作品や展開に向けての動きなどを聞かせてください。

KIHOW:今回は前作で使っていない要素を使ったんです。毒のある可愛い感じの声とか、急な声の切り替えとか。「Something w/o Sunrise」だと、前に進もうとしているけど、成長していく中でいろんなことを知って自分の稚拙さが原因で大人にはなりきれない、そんな部分があるなと思ったので、少女の声〜大人の声ときちんとわけるんではなくて、途中で若くなったり大人っぽくなったりをぐちゃぐちゃに混ぜているんです。大人になるために気を張ったりするけど、ふとした瞬間に幼い感じが出たりとフラフラしているような感じです。私は自分でも声の種類が多い方だと思ってます。なので、まだまだ聴かせられる声があるということを、今回のシングルでもっといろんな人に知ってもらえたら嬉しいです。

Tom:僕は音楽的にこうしたいとか企画的にこうしたいというアイデアは尽きないんですよ。それは仕事でもあるし、人間的にもそういう性格だし。でも、もう7枚目ですから。7枚出したら、「次の展開どうしようかな」と思うことが多くなることも事実です。

ーーなるほど。

Tom:音楽的には行き詰まらないですけど、プロモーションとか、今から行きたいところとか、そういうものも含めての意見なんですけど、僕らの道筋は、あくまでアニメなどの映像コンテンツと共に歩んでいくことが多いわけです。そこを切り開く手法を本格的にやっていくべきだと思ったんです。最近だとLiSAちゃんが『ミュージックステーション』に出たり、一般層にアプローチして、それがちゃんと集客につながっているわけで。あとはfhánaが『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に出る。あれもすごいことだと思うんです。そういう道筋が少しずつできている中なので、活躍の場を本当のマスに向けていかなければ、と思っています。

ーー側から見ていて、ミスドの考えるマスって、海外にあるんじゃないかなと思っていたんですけど、今の発言を聞く限りでは国内での支持をさらに確固たるものにしたいと。

Tom:海外に関しては、ここ最近頻繁に行っているなかで「このまま活動を真摯にやっていけば道筋は見えてくるかもしれない」と思ったんですよ。ブラジルに行っても、ノンタイアップのアルバム曲をわかってくれたり、知らない間にどんどん広がっていくのを各国で実感して。だからこそ、ドメスティックなフィールドをちゃんと突き詰めたいというか。アーティストとしても、チームとしてもそうしていきたいと思うんです。

ーー制しているに越したことはないと。

Tom:そう。自社でやってる他のアーティストはJ-POP方面にアプローチできている事もあるので、ミスドも含めて全体として、もっと入り込めていないエンタメの領域に足を踏み入れて侵略していくというのは、一つ将来的なものとして見据えていきたいとは思っています。

(取材・文=中村拓海/撮影=林直幸)

■リリース情報
MYTH & ROID
『VORACITY』
7月25日(水)
¥1,296(税込)
<収録曲>
M1.VORACITY
M2.タイトル未定
他インスト含む全4曲収録

■関連リンク
『オーバーロードⅢ』公式サイト
MYTH & ROID公式サイト

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