May J.が語る、“映画主題歌”カバーで開いた新たな扉 「自分の殻がどんどん破けていっている」

May J.が語る、歌手としての変化

「自己満足なカバーはしたくない」

――DISC2収録の邦楽曲に関して印象的なものはありますか?

May J.:秦 基博さんの「ひまわりの約束」かな。私のベストキーは原曲の半音上げだったんですよ。でも、試しにそのキーで歌ってみたらちょっと暑苦しく聴こえちゃって。秦さんは決して暑苦しくなく、自然に歌っているじゃないですか。だから、私もその雰囲気に近づけるためにちょっとトーンダウンさせる意味も込めて、半音下げにしたんですよね。そうしたらすごく心地良く聴ける仕上がりになりました。

――歌い手としてのエゴは抑えて、あくまでも聴き手にどう響くかを重要視するということですね。

May J.:そうですね。自分としてはベストキーで歌ったほうが気持ちいいのは確かだけど、それが聴いてくれる人にとってトゥマッチになることもありますからね。自己満足なだけのカバーアルバムには絶対したくないので、そういう部分は今回もすごく大事にしたところではあります。

May J. / 深呼吸 [MUSIC VIDEO] (2018.7.25 ALBUM "Cinema Song Covers")

――だからこそMay J.さんのカバーは多くの人に求められ、愛されるんでしょうね。

May J.:そうだったらうれしいですね(笑)。今回、ハナレグミさんの「深呼吸」という曲もカバーさせてもらったんですけど、この曲はきっとみなさんが想像できないMay J.になってると思うんですよ。永積(タカシ)さんの歌は語り掛けるようで、ちょっと独り言みたいな感じでもあるんだけど、でもすごく心にストレートに響いてくるんですよ。聴いてると友達みたいな感覚になれるところもあって。そういう曲を私も歌ってみたかったので、今回はどうしても挑戦したかったんですよね。

――新しいMay J.さんの表情が堪能できる仕上がりだと思います。しっかりと距離感の近い歌になっていますし。

May J.:いつもの私だったらね、ビブラートで必ず終わるとか語尾はきれいに切るとか、そういうことを考えて歌ったと思うんですよ。でも、この曲ではあえてそういうことは一切やりませんでした。声のトーンも声量も下げて、でも感情はグーッとむき出しにするような……そんなバランスの歌を心掛けましたね。難しい挑戦ではありましたけど、慣れてくると何も考えずに自然と歌えるようになって。この曲もバンドと一緒に“せーの”で録ったんですけど、3テイク目でコツがつかめて、それが採用になりましたね。

――映画「宇宙戦艦ヤマト2199」で使われている川島和子さんの「無限に広がる大宇宙」のカバーが収録されているのも驚きでした。

May J.:どうでしたか?

――いや、すごくいい仕上がりなんですけど、どうしてこれを選んだのかなって。

May J.:そう思いますよね(笑)。今回のアルバムは幅広い世代の方々に聴いてもらえる作品にしたかったんですよ。なので、収録曲を決める際に年上のスタッフにオススメしてもらったのがこの曲で。私はこの曲を知らかったんですけど、みんなが「すごくいいよ!」って言ってくれたので、だったら挑戦してみようかなと。

――歌詞がない、全編スキャットの曲ですから。かなりの異色作ではありますね。

May J.:だいぶ難しかったです。自分なりのオペラを意識した歌い方をしたんですけど、途中でブレスを入れるとこの曲の持っている世界観、宇宙的な雰囲気が一瞬で現実に引き戻されてしまう感じがして。そうならないように歌うのにとにかく苦戦しましたね。

――とは言え息継ぎしないわけにはいかないですしね。

May J.:そうなんですよ(笑)。むしろ息継ぎを思いっきりしないと歌えない曲ですからね。なるべく聞こえないようにブレスをするのが大変で、かなりテイクは重ねましたね。プリプロの段階から「できない、どうしよう!」ってなってました(笑)。

「変な縛りみたいなものから解放された」

――この曲も含め、たくさんの挑戦が詰め込まれた本作からは最新のMay J.さんの姿を感じることができます。そういった部分にも単なるカバーアルバムではない、オリジナルアルバムに近いニュアンスがあるのかも。

May J.:そうですね。今の自分のベストを詰め込むことができたアルバムになっていると思います。また何年か後に1人反省会をしたときには、「あーもう!」って落ち込むんでしょうけどね(笑)。でも、そうやって新しいことができるようになっている自分を求め続けるからこそ、これからもきっと前に進めるんだろうなって。そういう気持ちは大事にしたいですね。

――DISC2にはSPECIAL TRACKSとしてオリジナルの新曲も収録されていますね。

May J.:はい。まず「ロンド」という曲は、『FLOWERS by NAKED 2018 輪舞曲』というイベントのテーマソングとして作ったもので。私は白いユリが好きで、よく部屋に飾っているんですけど、ある晩、そのユリが月の光に照らされてる光景を見た時に、神秘的で、凛とした美しさを感じたんです。で、その姿が私の憧れる女性像に重なったので、そういう私の思いをくみ取って作っていただきました。

――まさに美しいサウンドスケープを抱いた曲になっていると思います。

May J.:先日、『ファンタジー・オン・アイス』というイベントでこの曲を歌わせていただいたときには、私の歌に合わせて安藤美姫さんがパフォーマンスをしてくださったんですよ。その姿がまさにこの曲のイメージ通りでしたね。しかも曲の最後には、安藤さんから白いユリを渡してもらえて。すごくうれしかったです。

――そしてもう1曲は『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』の主題歌となっていた「絆∞Infinity」です。こちらは疾走感のある楽曲で、「ロンド」との振り幅がまたすごいという。

May J.:あははは(笑)。こちらはTHE特撮系といったイメージの曲になっていますからね。キモは最後に出てくるロングトーンかなって思います。低いところから高いところにワーッといく私の声に合わせてウルトラマンもバーッと出発する、みたいな。

――出発(笑)。

May J.:出発じゃないか(笑)。空に向かって飛んでいく感じですね。

――曲はもちろん、May J.さんの歌声もウルトラマンの世界に合わせて力強いものになっていますね。

May J.:はい。私、小さい頃にウルトラマンをよく観ていて、ちっちゃいフィギュアも持っていたんですよ。だから大人になった今、「ウルトラマンの曲を歌える!」と思ってすごくうれしかったんですよね。この曲をきっかけに劇場版も観たんですけど、アクションがめちゃめちゃかっこよくってハマっちゃいましたね(笑)。

――充実の内容となった本作がリリースされた3日後、7月28日からは全国ツアー『May J. Tour 2018-Harmony-』がスタートしますね。

May J.:今回はバンドに加えて、弦楽四重奏が入るんですよ。そういったスタイルのツアーは初めてなので、どんな雰囲気になるのか、お客さんはどんな反応をしてくれるのか、いろいろ楽しみですね。弦楽器と歌はすごく相性がいいと思っているので、そこで生まれる心地良いハーモニーをみなさんにも感じていただこうと思っています。今回はね、ダンスとかそういう見せ方はナシで。もうおばさんになったので(笑)。

――いやいや(笑)。May J.さんはどっちの見せ方もできるのが強みではありますよね。

May J.:そうですね。ただ、今の私はクラシックな要素を盛り込んだライブの楽しさにぞっこんなので(笑)、今回もそこを生かしながら私なりのライブを集中して作っていきたいですね。

――30代になって初のツアー。それを終えたときにはまた何か新たなビジョンが見えそうですかね。

May J.:絶対何か見えるとは思います。最近の私には、「May J.はこうしなきゃいけない」みたいな気持ちがなくなっているんですよ。自分の殻がどんどん破けていっているというか。変な縛りみたいなものから解放された実感もあるので、また何かしら変わっていくんだろうなって。だってね、10年以上活動をしていて、何も変わらなかったらつまんないじゃないですか。変わらない美学もあるとは思うけど、私はこれからもどんどん変わっていきたいんですよね。

(取材・文=もりひでゆき/写真=林直幸)

■リリース情報
『Cinema Song Covers』
発売中

[2CD+DVD] RZCD-86608~9/B  ¥7,020(税込)
[2CD] RZCD-86610~11  ¥3,780(税込)
[2CD+Blu-ray] Cinema Song Covers ~Premium BOX~(BOX仕様)【初回生産限定盤】 RZCD-86606~7/B  ¥12,960(税込)

<CD収録内容>
DISC 1
1.Another Day of Sun(with Miracle Vell Magic & Beverly)
2.Listen
3.Never Enough
4.My Heart Will Go On / 宮本笑里 feat. May J.
5.I Will Always Love You
6.Calling You
7.I Dreamed A Dream(new vocal)
8.Time To Say Goodbye

DISC 2
1.ひまわりの約束
2.深呼吸
3.瞳をとじて
4.月のしずく
5.君をのせて
6.無限に広がる大宇宙
<SPECIAL TRACKS>
ロンド
絆∞Infinity

<Blu-ray / DVD収録内容>
『billboard classics May J. Premium Concert 2017 ~Me, Myself & Orchestra~ at Tokyo Bunka Kaikan 2017.11.5』
1.Sparkle -輝きを信じて-
2.ふたりのまほう
3.I Will Always Love You
4.Time To Say Goodbye
5.母と娘の10,000日 ~未来の扉~
6.本当の恋
7.Have Dreams!
8.異邦人
9.Faith
10.I Dreamed A Dream
11.My Heart Will Go On
12.So Beautiful
13.Garden
14.RAINBOW
15.SIDE BY SIDE
16.My Star ~メッセージ~
17.Let It Go
※副音声収録「橋本さんと愉快な仲間たちによるオーディオコメンタリー」(Blu-rayのみ)

■ライブ情報
『May J. Tour 2018 -Harmony-』
7月28日(土)埼玉県 パストラルかぞ
8月12日(日)千葉県 八千代市市民会館
8月18日(土)長野県 大町市文化会館
8月25日(土)山形県 天童市市民文化会館
8月26日(日)福島県 とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)
9月1日(土)大阪府 Zepp Namba
9月9日(日)愛知県 Zepp Nagoya
9月16日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO

■関連リンク
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