Darjeelingが語る、音楽に四季の風情を込める醍醐味 佐橋佳幸「雑談のなかにヒントがある」

Darjeelingが語る、音楽に四季を込める醍醐味

Dr.kyOn「山崎(まさよし)くんが感じたままの歌詞」

――5曲目はインストの「Toy Train」。Toy Trainというのは……。

kyOn:Toy Trainという電車がインドのダージリン地方に走ってるんですよ。旅の番組でそれを見たら面白くて。普通の平地では考えられないような動きで走るんです。ノロノロ走って、そこに子供がポンと乗ったかと思うと、急にスピード出したりして。だからこういうふうにゆっくりになったり、早くなったりっていうのをやってみようと。

佐橋:kyOnさんが「ここでブレーキをかけるイメージで!」って、またちゃんに指導しながらベーシックを録りました。さらに「ブレーキかけるところで、ドブロをびよ~んって入れてくれない?」って言うんで、僕が演奏したりとか。あと、「アコースティックギターのリフも、なんか変なことしたいんだよね」ってkyOnさんから要望があって、僕が通して弾いたフレーズを編集でズタズタにして変な音にしたり。

kyOn:Toy Train感が出るようにして。

佐橋:このユニットはそうやって、いつも弾いてる楽器をいつもと同じようには使わない、っていうこともテーマのひとつとしてあるんです。

――なるほど。そして6曲目もインストで、「Full Moon Harvest」。

佐橋:これも月繋がりでね。仲良しの金原千恵子ストリングスを呼んでやりたいなと思って。kyOnさんは、ふたりで演奏していたときからストリングスの音が聴こえていたんですよね?

kyOn:うん。初めはE-BOWっていう電磁石の機械があって、それを使ってやってたんだけど。

佐橋:エレキギターのピックアップに寄せたり離したりすると音が伸びっぱなしになる装置です。80年代に流行ったものなんですけど、ふたりで演奏していたときはそれを使ってチェロとかバイオリンの音を出していたんです。でも今回のレコーディングでは金原千恵子ストリングスを呼んで、E-BOWで弾いた音と合わせて録音しました。だから本物の弦の音と、それを真似しているエレキギターが一緒に鳴っているんですよ。

――続いて山崎まさよしさんが歌詞を書いて歌っている「Picnic Tea Basket in the rain」。山崎さんとのおつきあいは長いんですか?

kyOn:僕は古いですね。『HOME』という2枚目のアルバムから参加してますから。

佐橋:僕は『Augusta Camp』で知り合ったんだったかな。でも一緒に演奏している時間より、確実にお酒を飲んでる時間のほうが多いですけどね(笑)。すぐ電話かかってくるから。で、「山ちゃんと一緒にやるんならこれしかないよね」という話にkyOnさんとなって。

kyOn:山崎くんの感じたままに歌詞を書いてもらったんです。

佐橋:山ちゃん、「ピクニックティーですけど、ピクニックというよりは散歩って感じにしようと思うんです」と言っていて。「まだ歌詞書いてないですけど、女がいてね、つきあってる年下の男がハッキリしないと。だから散歩に連れ出した勢いで区役所に連れて行ってハンコを押させようとしている女の歌にしようと思うんですけど、どう思います?」って聞かれて。そう言いながらもう「区役所の近くでお茶でも飲みましょ~」って鼻歌で歌ってたんですよ。だから「じゃあもう、そのまま進めてください」って言って。山ちゃん曰く、ハーモニカの部分が女役で、スライドギターの部分が男役なんですって。

――山崎さんらしいブルースっぽさがありつつも、ちょっとオペラっぽい雰囲気が入っているのが面白い。

kyOn:そうそう。

佐橋:「これ、僕が歌うんですか?」って山ちゃん、言ってましたよね。でも、ぴったりだった。

――締めはインストの「Gunpowder Green」。

kyOn:ローラ・チャイルズさんというアメリカのミステリー作家がいまして。

佐橋:その人の「お茶と探偵シリーズ」の中に『グリーン・ティーは裏切らない』という小説があって、そこからkyOnさんが思いついた曲なんです。これをアイリッシュ・ブズーキで演奏したことがあって、今回のレコーディングではそれも使いつつ、僕がマンドリンとエレキシタールを使って、kyOnさんがピアノ、マリンバ、アコーディオンを弾いて、またちゃんがダルブッカを使って……。いろんな音の要素が入った万博みたいな曲ですね。拍子もそうとう変わっている。

kyOn:途中でちょっとターキッシュになったりもして。

佐橋:ある瞬間はフランク・ザッパっぽくなったりね。で、そうやっていろんな楽器を使って、そのままにしていたんだけど、kyOnさんが「最後は途中にちょっとしか登場しなかった楽器が全員集合しているみたいにしよう」って言い出して、こういう形になった。kyOnさん、すごいこと考えるなって感動しましたよ。

kyOn:フフフフ。

――普通に聴いただけでもいろんな創意工夫が感じられてめちゃめちゃ面白かったんですが、こうして1曲1曲説明していただいた上で聴くと、楽しさが何倍にも膨らみそうです。

佐橋:あと、今回はkyOnさんが「月団扇Blend」ってタイトルを思いついたことが、本当に素晴らしいなと。録音の打ち合わせと言いながらふたりで飲みに行ったんですよ(笑)。そこで「タイトル、どうしましょうか」って言ったら、kyOnさんが紙を出してね。そこに「月団扇」って書いたんです。で、「知ってる? 団扇って、もともと月なんだよ」と。「どういうことですか?」って聞いたら、「団扇って丸いでしょ? あれはもともと、満月を模したものなんだよ。月見をしながら、お箸をそこにこうやってかざすと、団扇になる」って説明してくれて。このアルバムジャケットがまさにそう。

kyOn:「月が団扇になって粋でしょ?」っていうのがあるんですよ。で、今回は「月光浴」とか「Full Moon Harvest」とか月に因んだ曲も多いから外で満月を楽しんで一杯やりながら聴けるアルバムになるといいんじゃないかなと。それで今回は僕ら流にこういうブレンドをしたわけです。

佐橋:字にするといいんだよね。「8芯ニ葉」ときて、そのあとに「月団扇Blend」ってくる、そのジャパネスクな感じが。だんだんと幅が広がってきましたね。

kyOn:うん。このデザインで3枚並ぶと、またええんよねぇ。

(取材・文=内本順一)

Darjeeling『8芯二葉~月団扇Blend』

■リリース情報
Darjeeling『8芯二葉~月団扇Blend』
7月11日(水)発売
価格:¥2,315+税

<収録曲>
1、ユーラシア万歳 [曽我部恵一(作詞/Vocal))、金原千恵子(Violin)、三沢またろう(Percussion)]
2、Drop by Drop
3、ユビサッキ [浜崎貴司(作詞/Vocal))、小田原豊(Drums)、美久月千晴(Bass)、三沢またろう(Percussion)、藤井真由美(Vocal)、志村享子(Vocal)]
4、月光浴 [大貫妙子(作詞/Vocal)]、三沢またろう(Percussion)]
5、Toy Train [三沢またろう(Percussion)]
6、Full Moon Harvest [金原千恵子(Violin)、栄田嘉彦(Violin) 、古川原裕仁(Viola)、笠原あやの(Cello)]
7、Picnic Tea Basket in the rain [山崎まさよし(作詞/Vocal、Guitar、Harmonica]、三沢またろう(Percussion))
8、Gunpowder Green [三沢またろう(Percussion)]

作/編曲:Darjeeling

Darjeeling公式サイト
Dr.kyOn Official Information Blog
佐橋佳幸HP

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