Darjeeling 佐橋佳幸とDr.kyOnが語る、制作への意気込み「“遊んでる”ように見えてたら嬉しい」

Darjeelingが語る制作への意気込み

 ミュージシャンとして、プロデューサーとして、ソングライターとして、アレンジャーとして、常に忙しく働き続け、多方面から絶大なる信頼を寄せられるDr.kyOnと佐橋佳幸。ふたりはインストユニット「Darjeeling」(ダージリン)としても活動を続けているが、昨年は日本クラウン内に新レーベルの<GEAEG RECORDS(ソミラミソ・レコーズ)>を設立。共同でプロデュースを手掛けるシンガーソングライターのアルバムとDarjeeling名義のアルバムの2タイトルを毎回リリースする運びとなり、この2月14日には第2弾として高野寛の新作『A-UN』とDarjeelingの2ndアルバム『8芯ニ葉~梅鶯Blend』を発表したばかりだ。

 本文中にもある通り、実はDarjeelingとしての活動が始まったのは2005年からと意外に長いのだが、“自分たちのアルバム作り”はまだ始めたばかり。果たしてどんな意気込み、どんな思いで、2ndアルバム『8芯ニ葉~梅鶯Blend』を作ったのか。ふたりに聞いた。(内本順一)

形にして残せることがすごく嬉しい(佐橋佳幸)

ーーまずはベーシックな質問から。Darjeelingというユニットがそもそもいつどのように始まり、どういった経緯で<GEAEG RECORDS(ソミラミソ・レコーズ)>が立ち上がったのか、というところを話していただけますか。

佐橋佳幸(以下、佐橋):kyOnさんとはもうだいぶ長いんですよ。僕はもともと(Dr.kyOnが在籍した)BO GUMBOSの大ファンで。僕がやってたUGUISSというバンドがBO GUMBOSと同じEPICソニーだったこともあって、共通の知り合いからkyOnさんのことをいろいろ聞いていたんです。いつかこの人と一緒に何かやる機会があるんじゃないかなと、ぼんやり思っていた。そしたら、たまたま喜納昌吉さんの「花~すべての人の心に花を~」のレコーディングに、僕がギター、kyOnさんがキーボードで呼ばれて。そこで遂にお会いしたわけです。90年代の頭ぐらいかな。それをきっかけに懇意にさせていただくようになりつつ、佐野元春さんがTHE HEARTLANDを解散してThe Hobo King Bandを結成したときにそこで一緒にやるようになった。それからお互いプロデュースだったりアレンジだったりをするプロジェクトに呼び合ったり、いろんなレコーディングやライブで一緒になることが頻繁になってきたところで、『共鳴野郎』というのが始まりまして。

Dr.kyOn(以下: kyOn):大阪のよみうりテレビで2005年に始まった番組ですね(2005年10月から2008年3月まで放映。佐橋とkyOnがホストを務めた音楽情報番組で、毎回ふたりが注目するアーティストを招いてトークとセッションを繰り広げた)。

佐橋:その番組内で初めて公にDarjeelingと名乗ったんですよ。

ーーつまり、Darjeelingとしてのスタートは2005年だったと。

佐橋:だから、出会ってからDarjeelingに至るまでもけっこう長かったってことですね。で、その番組のなかで必ずゲストアーティストの方と1曲セッションして、もう1曲、僕らのインストの曲を演奏するコーナーがあった。そのためにかわりばんこで1曲ずつ作っていたわけです。それを2年以上やったら、当然レパートリーもたまるじゃないですか。それで「番組は終わっちゃったけど、その番組と同じようなコンセプトでライブは続けていきましょう」ということになり。

kyOn:西麻布の新世界という小屋でライブをやるようになったんです。もともと「自由劇場」で芝居をやっていた小屋で。

ーー一昨年、閉店してしまいましたね。

kyOn:そう。僕らふたりともよく知ってるスタッフの方がやっていたんですけど、そこで年に4回くらい『Darjeelingの日』というのをやらせてもらうようになって。1部ではためていたインストの曲を演奏して、2部では歌ったりするゲストを呼んでセッション。番組のときは歌ものとインストを1回につき1曲ずつでしたけど、そのライブ版として5~6曲ずつやるようになったんです。それから徐々に新曲も増やしていって、それはそれでまたどんどんたまっていって。

佐橋:番組のときは、Darjeelingというユニット名だけに、紅茶にまつわるテーマで曲を作っていたんですよ。それが新世界に移ってからは、「もともとここは自由劇場だっただろ?」ってことで、お芝居に関するテーマの曲を作るようになった。そんな感じで曲はたまる一方だったんです。そしたら一昨年、新世界が一区切りってことになって。「ああ、残念だな。また小屋がなくなっちゃったか」なんて言ってたら、忠さんのレコーディングに揃って呼んでいただいて。

kyOn:小坂忠さんがソウルの名曲をカバーしたアルバム(『Chu Kosaka Covers』2016年)がクラウンから出たんですけど、それにふたりとも参加して。

佐橋:あのときは、豪ちゃん(屋敷豪太)と小原さん(小原礼)と鈴木茂さん、それからkyOnさんと僕が基本メンバーで。それをクラウンの篠田さんっていう偉い人が見に来てたんですよ。篠田さんは僕の古い知り合いでもあるんですけど、僕らの仕事っぷりを見て、なんか閃いちゃったらしくてね。レコーディングが終わってしばらくしたら電話がかかってきて、「佐橋、ちょっと話したいことがあるんだけど」と。行ってみたらいろいろ聞かれて、Darjeelingについて今説明したようなことを話したら、「うちでレーベルやらない?」と言われて。「もともとクラウンは<PANAM>レーベルというのがあって、細野(晴臣)さんや(鈴木)茂さんも出していた。そういう土壌があるから、今もパッケージで音楽を買って聴いている世代に向けたレーベルを始めないか」ってことでね。そこから話が発展して<GEAEG RECORDS>が始まった……と、そういう経緯なんです。

ーーなるほど。いろんな人や番組やライブハウスなんかの繋がりがあって、導かれるままに今に至っているという。

佐橋:本当にいろんなご縁があって。特にやっぱり(小坂)忠さんのレコーディングがなかったら、今のこの形はなかったですね。これまで長い間Darjeelingでいろいろ作品作りもしてきたけど、形にして残せているものが少なかったし、今それができるっていうのは、すごい嬉しいんですよ。

ーー実は2005年からDarjeelingと名乗って活動しているけど、Darjeeling名義のアルバムは今までなかった。だから最近始まったばかりのユニットだと思ってる人も少なくないでしょうし。

佐橋:うん。一応、自分たちでは「新人です」って言ってます(笑)。

ーーそうして昨年<GEAEG RECORDS>が立ち上がり、11月にDarjeelingの初アルバム『8芯ニ葉~Winter Blend』と、Darjeeling・プロデュースによる川村結花さんのアルバム『ハレルヤ』が発売されました。そしてそこからわずか3カ月で早くもDarjeelingの2ndアルバム『8芯ニ葉~梅鶯Blend』と、Darjeeling・プロデュース第2弾となる高野寛さんのアルバム『A-UN』が同時リリースとなる。まさに堰を切ったように。

佐橋:既に貯金がたくさんありますからね。貯金という言い方がいいのかわからないけど、引き出しがある。Darjeelingのアルバムに関しては1枚に8曲と決めて、半分はインスト。もう半分はインストとしてある曲にゲストに歌詞をつけてもらって、歌ってもらう。半分ずつのブレンド具合で毎回進めてます。「そういうのはどうでしょう?」っていう提案は僕らがしたんじゃなくて、スタッフのアイデアだったんですけど、「それも面白いかもね」ってことで始まって。アナログ盤みたいな体裁で全8曲。

kyOn:タイトルからして『8芯ニ葉』ですからね。8は8曲の8。

佐橋:“一芯ニ葉”という言葉が紅茶の世界にあるんですよ。一本のお茶の木から先端のいちばんいい葉っぱをふたつだけ摘むとフレッシュで極上のお茶が作れるっていう。それを文字ってkyOnさんがつけたタイトルなんです。で、そこは変えずに、毎回ホニャララ・ブレンドとして出していく。前回はWinter Blendでしたけど、今回はもうすぐ春なんで梅に鶯と書いて梅鶯Blend。

ーー漢字の弱い人にはなかなか難しいタイトルですが(笑)。

佐橋:「鶯って、読めても書いたことないし」って言ったら、「佐橋くんがやってたバンド、UGUISSだったよね」って言われて、「あ、すいません」って(苦笑)。

ーーははは。因みに『Winter Blend』から『梅鶯Blend』まで3カ月しかあいてませんが、同時に作っていたんですか?

佐橋:『Winter Blend』が終わるや否や作り始めました。

ーーアルバムごとにある程度コンセプトを決めてから作り始めるんですか?

佐橋:コンセプトというよりは、ゲストを誰にするかっていうところが一番大事で。そのほかの僕らふたりがやる分に関しては、ある意味何をやってもいいし、いつでもできるわけだから。

ーーじゃあ、誰を呼ぶかっていうところから始まっていくと。

佐橋:今のところはそうですね。ゲストが4組決まった段階で、じゃあほかの4曲はどういうものにしようかってことを、そのバリエーションから考える。さっき言ったように、引き出しはとりあえず大きいのがあるから。

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