K-POPグループの中国進出の歩みと今後 JYPからは“全員中国人”BOY STORY登場も

 このようなK-POPアイドルの中国進出の歴史を顧みると、先述のBOY STORYは今までの進出方法とはまた違ったやり方だ。メンバーの選出はJYPの中華系メンバーであるジャクソンとフェイの2人が中国各地をスカウティングしてまわる番組『おかしなおじさんが来た』(百度贴吧)を通して行われた。メンバーは弘大でバスキングを行ったり、韓国の練習生とも交流がある。共同で事業を行なっているテンセントは中国トップ3の音楽配信サービス・Kugou Music、QQ Music、Kuwo Musicを全て所有しており、韓国のKakaoTalkやCJグループ傘下の大手ゲーム会社・ネットマーブルの大株主でもある。YUEHUAとは異なり芸能事務所ではないため、育成自体はほぼJYPが行ない、そのほかの広報はテンセントが担当するという役割分担ができているのではなかろうか。

 また、平均年齢13歳と韓国のアイドルに比べメンバーの年齢が非常に若いことも大きな特徴だ。他の中国の男子アイドルグループを見ても、現在トップ人気である2013年デビューのTF BOYSはデビュー時の平均年齢13.5才、昨年YUEHUAからデビューしたYH BOYSも平均12.5才、同じく昨年デビューした中国初の2.5次元アイドル(ウェブコミックとコラボ)易安音楽社もミドルティーンであり、10代前半のアイドルが一般的になっている。

 中国のアイドル市場はここ数年で急激に拡大しているが、そのきっかけのひとつがSNH48とされている。また、昨年放送された中国版『PRODUCE 101』と言われる男性アイドルサバイバル番組『偶像練習生』(愛奇藝)は中国内で高い人気を博した。以上の流れから今の中国では“成長を見守る系アイドル”が人気で、それが結果的にグループの低年齢化に繋がっているようだ。このように、今の中国アイドルが“育成スタイルは韓国のアイドルに近く、アイドルのスタンスは成長を見守る系の日本のアイドルに近い”と考えると、BOY STORYは中国特有のニーズに合わせて作られたグループであり、“韓国のアイドル事務所が全面的に育成する中国のアイドル”という新しいスタイルの海外進出方法と言えるかもしれない。

 他国への進出に比べて政治的問題などの難しさもある中国での芸能活動であるが、売上規模の大きさから見ると魅力的な市場であることは間違いなく、今後も韓国エンタメ業界が目指す場所になりそうだ。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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