SAとコムレイズは“それぞれの旗”を掲げて進み続けるーーマイナビBLITZ赤坂公演に広がった景色

SAとコムレイズが掲げた“それぞれの旗”

 リーゼントにスパイキーヘア、革ジャンにDr.マーチン、バッチリキメた男たちと粧し込んだ女たち。いい大人たちが全力で拳を上げ、なりふり構わず泣いて笑って大声で歌う。そんな“お父さん”、“お母さん”に抱きかかえられた子どもも嬉しそうに、楽しそうに、拳を上げているーー。SAとファンである“コムレイズ”の関係性、絆が作り出す、この景色が好きだ。2018年6月9日、マイナビBLITZ赤坂は、全国から集まったコムレイズによる“それぞれの旗”が掲げられ、『GRACE UNDER PRESSURE TOUR 2018』はツアーファイナルを迎えた。

 赤く染まったステージ。SEのトルコ軍楽隊が打ち鳴らす「ジェッディン・デデン」と割れんばかりの「オイ!オイ!オイ!」の歓声に迎えられ、NAOKI(Gt)、KEN(Ba)、SHOHEI(Dr)が登場する。毎度おなじみのこのオープニングだが、何回観てもゾクゾクする。まさに戦場へ向かう男たち、といった趣で、臨戦態勢待ったなしだ。

 3人がそれぞれの武器、いや、楽器を構えると己を確かめるかのように一斉に音を出す。その堰が切られたような合図に、真っ赤な大きな旗を抱えたTAISEI(Vo)が颯爽と現れた。まるで戦線に立った兵士の勇姿。シュマグのように口元に巻かれたバンダナを取ると、叫んだ。

「オマエだけの旗を上げろーーー!!」

 その野太い声を合図に、図太いリズムと「KEEP! THE FLAG!! FLYING!」の掛け声が会場を揺らす。「KEEP THE FLAG FLYING」で今宵の“戦い”は始まった。

 「男は?」「Oh Boy!」「女は?」「Hey Girl!!」、TAISEIの煽りに全身全霊で応える老若男女のコムレイズ。「参ったぜ、女のほうが強いぜ、これがSAコムレイズの実態です(笑)」、男も女も〈何度でもやったらんかい!〉と思いっきり叫んだ「MY ONLY LONELY WAR」、TAISEIがセクシーに赤いタンバリンを鳴らす「I SAW THE LIGHT」、と場内のボルテージは天井知らずに上がって行く。

 今月6月は、メンバーのうち3人が誕生日を迎えるSA。「Happy birthday to you」の歌声がフロアから起こるも、「どうせ、歌うなら合わせてくれねーかな(笑)」とTAISEIに諭され仕切り直し。翌日10日に42歳を迎えるSHOHEIヘ向けたものだ。

「SAは50代のバンドで、あと何年つづくか? なんて言ってますけど、オレ元気だから!」

 飄々としたSHOHEIの言葉に会場が和む。SAのロックに彼のビートは不可欠だ。暴れるような、弾けるような、抜群のキレと圧倒的な図太さを兼ね備えたドラミングは、SAのエッジの効いた強暴性を色濃くする。TAISEIが「これがジャパニーズパンクだぁぁぁ!!」と叫んだ「MORE MORE MORE」の獰猛にせめぎ合うフロントの3人を、煽動するのも押さえつけるのもSHOHEIのドラムなのだ。

 そして、KENだ。どっしりと堅実的にグルーヴを支えている。その堂々と構えた佇まいと、いつも穏やかな笑顔は、どこか危なっかしいTAISEIとNAOKIを見守る父親的なポジションに見える時がある。そんなKENが珍しく、「BABY SMILEY」のブレイクでフロアに向けて口を開いた。

「このメンバーに会って、17年経ちました。このメンバーに出会わなければどうなってたかわかんねぇ。こんな素敵なステージに立ててよ、幸せモンだよっ!!」

 オフマイクながらも場内いっぱいに響いたこの言葉に、コムレイズのあたたかくて優しい「KENさん!!」コールが巻き起こった。

 「17年前に、このメンバーでSAはじめたとき、ドカドカよ。まぁ、おっかない感じでやってたんだけど……」TAISEIが口にする。「『昔のSAはカッコよかったんだけど、今はさー』とかいうやついるじゃん。オマエらどう思う?」その問い掛けに目一杯のSAコールで応えるコムレイズ。「そのSAコールがあるから、オレらはまだできる。今のSAがいちばん、カッコいいんだよ!!」

 18日に53歳になるNAOKI、そして12日に51歳を迎えるTAISEIが、なんで50歳を過ぎてリーゼントをしているのか? それは「好きだから!」と言い放つ。10代の頃、バイトで貯めた5万円握りしめて東京に来て、憧れの上野の中田商店でショットの革ジャンを買ったこと。ポケットにはもう小銭しかなかったけど、もう片一方のポケットには、夢と希望と野望が詰まっていたこと。そしてその日、買った革ジャンを着たまま寝たこと……。「オレの青臭い魂はずーっと叫んでる」と言ったTAISEIは文句なしに最高にカッコいい“フォーエバーキッズ”だった。

「なんかこう、ずっとがむしゃらに、なんかこう、もがいてもがいて、なんかこう、来たんだよ……」

 幾度となく、感極まる場面もあった。

「光のほう、光のほうへ……たどり着いたら、お前らに出会えましたよ。これから何があるかわからない。だから1日1日を、本当に大事に行きたい。赤坂でお前らと出会えた今日を忘れない1日にしたい」

 そんな言葉の後に熱く歌われた「Starting Today」。自分の青臭さ、あの頃のまま変わらぬ信念を貫いてここまで来たけど、それが正しいのかどうかわからなくなるときもある。だけど、それをわかってついてきてくれるコムレイズ。いろんな感情がうごめく瞬間だった。肝心なところで弦が切れてしまったNAOKIの悔しそうな表情と、切れた弦を煩わしそうにしながら、最後のフレーズまで丁寧に弾く姿が、さらに感情を揺さぶる。歌い終えると、TAISEIは「SAのとっても大事なバラード、これからも可愛がってね」と照れ臭そうに口にした。本当に本当に、コムレイズにとっても大事な歌になったはずだ。

 「SAは、いいバラード歌うっしょ? どう?」

 バシッとキメた後、黙っておけばいいのに、ひとこと多いのは実にTASEIらしくて最高なところでもある。

「タンバリン叩かしてみ? オーライオーライでしょ? で、ロックンロールやったらもう、バチバチじゃん? 野郎ども、そう思わない? だけどよ、今日なんかちょっと足んなくない? やんちゃなSA見せてやるぜぇー!」

 ラストスパートはアッパーなナンバーの畳み掛け、「DON'T DENY,GIVE IT A TRY!!」「GET UP! WARRIORS」と続き、「あったけぇうるせぇ R&R バンド」ではフロアから上がった拳が右へ左へ大忙しに動く。ラストは「赤い光の中へ」。この曲が発表されたときから、コムレイズが高らかに歌う光景が漠然と頭に浮かんでいたが、実際目の当たりにすると、本当にみんな、キラキラとしたいい表情で歌っている。一つひとつ言葉を噛み締めるように。〈それでもよっしゃ行こう!〉の「よっしゃ」で、みんながっちり手応えを感じているのがわかる。そんな熱きシンガロングで本編は幕を閉じた。

 アンコールでは、『GRACE UNDER PRESSURE』が表す“気品”漂わせる漆黒のエドワードジャケットを纏ったTAISEIが、「これからもいい景色を見たい」と言った。そして、どこか遠くを見つめるような表情で「申し訳ないんだけど、この曲、歌いたくねぇんだよ……」と言いながらも熱くしっとりと歌い上げたのは、「吠えたい雨」。自分の気持ちを素直に書いた詞だからこそ、自分に返ってくる想いがある。SAにとって、コムレイズにとって、また大切な歌が増えた。

 最後の最後は「DELIGHT」の大合唱。岡山コムレイズ、上州コムレイズ……フロアから上がる多くの旗、そして掲げられた無数のタオル。そんなフロアの様子をしっかり見つめるTAISEI。一人ひとりの顔を確認するように指をさしていくと、最後に叫んだ。

「それが、お前たちの旗だぁーー!!」

 SAは、いい景色を見せてくれるのではない。その景色は彼らとコムレイズがともに作り上げて行くのだ。道は果てしない、それでも行く。「よっしゃ行こう!」と、声と気品を高らかに。

(撮影=関山 一也)

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

SA『GRACE UNDER PRESSURE』

■リリース情報
『GRACE UNDER PRESSURE』
発売中            
価格:【通常盤】3,000円+税
【初回限定盤】4,000円+税/CD+DVD

<CD収録曲>
01. KEEP THE FLAG FLYING
02. 攻めでゆけ!
03. MY ONLY LONELY WAR
04. I SAW THE LIGHT 
05. 赤い光の中へ
06. MORE MORE MORE
07. hi-lite BLUE
08. BABY SMILEY
09. フォーエバーキッズ
10. Starting Today
11. NEVER END
12. 吠えたい雨    

<DVD収録曲>※初回限定盤のみ
『SA presents GOSH YOU GIG!!2017-BACK TO 1984,DRIVE TO 2018-』 
01. CONFOUND IT
02. ONE TWO
03. ALL BOYS SAY
04. MERRY STAR
05. RAISE YOUR HANDS
06. CHAIN
07. GET UP! WARRIORS
08. KIDZ IGNITE
09. MY ONLY LONELY WAR
10. I GET POSITION
11. WORKING MAN
12. runnin' BUMPY WAY
13. さらば夜明けのSkyline
14. (GOOD BYE)SHINING FIELDS
15. サマーホリディズスカイ
16. NOTHINGNESS
17. 青春に捧ぐ part.2
18. SONG FOR THE LOSER
19. START ALL OVER AGAIN!
20. YOUTH ON YOUR FEET
21. SA(BAD TIME)
22. NAUGHTY BOYS
23. DON'T DENY,GIVE IT A TRY!!
24. DELIGHT

■関連リンク
SA オフィシャルサイト
SA レーベルサイト

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