EP『green』インタビュー
藤原さくらが語る、届けたい音楽の変化 「これまでとは違った角度で尖った作品にしたかった」
シンガーソングライターの藤原さくらが、2ndアルバム『PLAY』以来、フィジカルリリースとしては約1年ぶりとなる、EP『green』を発表。演じることをテーマに作られた『PLAY』を経て、新たに書き下ろされた6曲は、全曲、作詞・作曲を藤原本人が手がけ、ボーカルとアコースティックギターは藤原、その他の楽器はプロデューサーのmabanuaと、ほぼ全てを2人で作るというスタイルを初めてとった。今作では、自分自身と向き合い、パーソナルなできごとを綴った歌詞から、メロディやアレンジに至るまで、一面的なところで終わらない深みを見せている。これまでのオーガニックなイメージも超えた、新しい藤原さくら。“攻めた”今作『green』について、語ってもらった。(古城久美子)
これまでとは違った角度で尖った作品にしたくて
ーーフィジカルのリリースとしては、2ndアルバム『PLAY』以来、1年ぶりになりますね。
藤原さくら(以下、藤原):そうですね。「The Moon」という曲は、2月7日に先行配信されていたんですけど、この1年、シングルを含め、CDのリリースがなかったので。つい最近書き下ろした曲ばかりで、最新の私って感じのEPができました。
ーー『PLAY』とは全く違ったイメージの作品になっていますが、新しい作品作りへは、どう向かったんでしょうか。
藤原:前作の『PLAY』では福山雅治さんが作ってくださった曲やスピッツさんのカバーなど、シングルとして発表している曲が入るアルバムだったので、シングルとの兼ね合いを考えながら作っていったこともあって、「演じるとは何か」ということをコンセプトに曲を作りました。そのツアーも終えて、区切りが付いて、新しい作品を作るぞっていう時には、今までにやったことがないことや音楽的にも新しいことをしたいって、ずっと考えていました。1stアルバムの『good morning』も2ndアルバムの『PLAY』も、1枚のアルバムにいろんなサウンドプロデューサーさんに参加していただいているんですけど、今回は一人のプロデューサーさんで全曲やってみようって。
ーー藤原さんのライブでは、ドラマーとしてお馴染みのmabanuaさんですね。
藤原:はい。mabanuaさんと2人でやっていこうと決めてからは、今までのアルバムの作り方からガラっと変わりました。最初にアルバムに入れる曲を決めてレコーディングに入ったことは大きな変化で、自分の中でも作りやすかったですね。今までは、アルバムの全貌が見えていない状態でレコーディングを進めていくことも多かったんですが。
ーーアルバムを想定せずに作った曲を含め、1曲1曲足していくみたいなことですよね。
藤原:そうです。できていく曲に対して「アルバムの中に、こういう要素が足りないから、足していこう」って感じで進めていくんです。いろんなアレンジャーさんたちと作っているので、「今、こういう曲ができているので、こっちの曲はこういう感じにしたい」と、状況を伝えつつ進めていくんですね。でも今回は、最初にアルバムのコンセプトを固めた上で進めているので、全体のバランスをとりにいく必要もなくて。アレンジもmabanuaさん全てお一人でやってくださるので、伝えずとも伝わっているというのか。
ーーどういうことを共有して進めたんでしょうか。
藤原:これまでいろんなプロデューサーさんとやってきた中で、ワンプロデューサーでやるっていうことは、その方の色が作品全体に強く出てくることになると思うんです。だから、これまでとは、ちょっと違った角度で尖った作品にしたくて。mababuaさんが言っていたんですが「他のアルバムはそうでもないけど、『green』だけはすごく好き」とか、「他の作品は好きだけど『green』はちょっとな……」とか言われるくらい攻めた作品にしたいって。
ーー確かに。EPなのにアルバムほどの聴き応えがあるというか。mabanuaさんと組むことになったきっかけはなんだったんですか。
藤原:もう憧れ過ぎて! mabanuaさんって、あらゆる楽器ができて、ミックスまでできちゃう方で、憧れの存在なんです。自分のソロアルバムを発表していて、Ovall(オーバル)というバンドでも活躍されていたり、プロデュース業までやっているっていう。ずっと、こんな人になりたいって思っています。mabanuaさんには『good morning』で2曲プロデュースしてもらって、前作の『PLAY』でも本当は1曲やってもらうはずだったんですけど、どうしてもスケジュール的にレコーディングする時間がないっていうことになって、実現しなかったんです。その「どうしてもやりたい」という欲求が満たされぬまま、ずっと来ていて。お願いしたいなって。
ーー 一気にそのフラストレーションが。
藤原:はい(笑)。楽器もほとんど生では入れてなくて、mabanuaさんとガッツリ2人で作りました。他にはトランペットの類家心平さん(「Time Files」)とDJのMitsu the Beatsさん(「グルグル」)にお願いしました。参加ミュージシャンは、私とmabanuaさん含め4人だけっていう。mabanuaさんとは、まず「The Moon」という『コードギアス』(劇場版第2部『コードギアス 反逆のルルーシュII 叛道』)の主題歌を去年作って、そのアレンジが最高だったというのもあって、「もっとやろう!」って『green』につながっていきました。